マルセイバターサンドの六花亭製菓が「そだねー」を商標登録出願。流行や他人の信用に便乗してもブランドは作れない

クロスリンク特許事務所(銀座・東銀座・新橋)・弁理士のヤマダ(@sweetsbenrishi)です。

目次

はじめに

マルセイバターサンドで有名な北海道の菓子メーカー・六花亭製菓が、あの「そだねー」を商標登録出願していることが判明しました。

今日は「そだねー」出願問題を題材に、商標とブランドづくりの関係性について書いてみようと思います。

出願人はマルセイバターサンドで有名な六花亭製菓

平昌五輪で、見事、銅メダルを獲得したカーリング日本女子代表・LS北見。

彼女たちの明るい笑顔、「そだねー」をはじめとする北海道弁丸出しの作戦会議、栄養補給の「モグモグタイム」が親近感を呼び、五輪期間中、LS北見はずっと話題の中心に居続けました。

これだけ話題になったので、便乗して誰かが商標を出願するんじゃないかなーと思って気にしてはいたんですが、やっぱり出願されていました。
出願人はマルセイバターサンドで有名な北海道の菓子メーカー・六花亭製菓です。

実はまだこの出願、特許庁のデータベースでは確認することができず詳細な内容は不明です。
ただ、六花亭製菓が自社のwebサイトに釈明文を掲載していますから、出願したことは事実のようです(*1)。

六花亭製菓は何のために「そだねー」を出願したのか?

六花亭製菓は北海道・帯広市を本拠とする菓子メーカーです。

六花亭製菓は、以前から「めんこい大平原」、「なんもなんも」などの北海道弁をモチーフにした名称のお菓子を製造販売しています。
だから、六花亭製菓が「そだねー」を出願していてもおかしくはありません。

しかし、今回、六花亭製菓が「そだねー」を出願したのは、2018年3月1日。
平昌五輪でLS北見が銅メダルを獲得した2月24日から5日後のことです。
このタイミングで出願しているとなると、LS北見の活躍や話題性に便乗して出願したと考えられても仕方ないでしょう。

実際、北海道の企業とは言え、LS北見に何のゆかりもない六花亭製菓が「そだねー」を出願していることに対してクレームが殺到しているそうです。

六花亭製菓は「そだねー」の出願で何を得たのか?

六花亭製菓は「独占する意思はない」と釈明し、火消しに躍起になっていますが、批判は免れないでしょうね。

北海道民からすれば北海道弁を名称に使ったお菓子を製造販売する六花亭製菓に対して「地元のお菓子屋さん」として親近感を持っていたはずです。
しかし、今回、こんな出願をしてしまったことで、味噌をつけてしまいました。
「なーんだ。六花亭は人の人気に便乗して商品を売るようなお店だったのか…。」とがっかりした人も多いはずです。

こういう悪いニュースが流れた後で、「そだねー」と言う名称の菓子を発売しても、さほどヒット商品にはなりませんよね。
そうすると、カーリング人気に便乗して商品の売上を上げることも難しくなってきます。
愛着を持ってもらえる商品になるか、長く親しまれるロングセラー商品に成長するか、と考えると、かなり微妙な感じがします…。

六花亭製菓は地元の企業として、地域密着のブランド戦略を展開してうまくいっていたように見えます。
それなのに、今回の出願をしたことによって何かを得るどころか、その地元からの信用を一気に失ってしまう可能性だってあるのです。

まとめ

商標は自分の会社の独自性、強み、コーポレートイメージを訴え、ブランドを形成していくための強力なツールです。

しかし、今回の事例のように出願戦略を誤ってしまうと、却って自分のブランドに傷をつける結果にもなってしまうのです。

元号が「平成」に変わったとき、それに便乗する商標が多数出願されました。
そんな商標で独自のブランドを作れますか?
ただ流行や話題性に便乗しただけの、安直で、取ってつけたような名称では、ブランドも重みのない、薄っぺらいものになってしまいませんか?

流行や他人の信用に便乗したところで、それは一過性のものに終わります。
長く親しまれる強固なブランドを作りたかったら、そんなものに頼らないことです。
自分の強力なブランドを形成するために、どんな商標を出願すればよいのか、今一度考えてみましょう!

おまけ

実は「もぐもぐタイム」も既に商標登録出願されています(*2)。

出願人はアミューズメント事業を営むバンプレストです。
こちらの出願日は、昨年(平成29年)の9月8日です。平昌五輪より前ですね。この出願は便乗ではなさそうです。

ただ、この出願。指定している商品がちょっと変わっています。

第8類: 電気アイロン,電気かみそり及び電気バリカン,洋食ナイフ…

第21類: 化粧用具,…台所用品(「ガス湯沸かし器・加熱器・調理台・流し台」を除く。),清掃用具及び洗濯用具…

第24類: …,かや,敷布,布団,布団カバー…

どんなビジネスに使う商標なんでしょうね(笑)

参考サイト

(*1)「そだねー」商標登録申請について|六花亭

(*2)商願2017-118980「もぐもぐタイム」|特許情報プラットフォーム(J-Platpat)

オススメの記事

六花亭製菓の「そだねー」についての商標登録出願。
その後、特許庁から商標登録をすることができない旨の通知が出されました。
補足記事を公開しました。こちらも併せてお読みください。

弁理士ヤマダのトピッククラスター
「そだねー」の商標登録出願が拒絶された理由|流行に便乗するな|中小企業のためのブランド戦略事例集 クロスリンク特許事務所(東京都中央区銀座)所長、中小企業専門の弁理士・山田龍也(@sweetsbenrishi)です。 はじめに 実際の事例の中から、中小企業のブランドづくり・...

実は北海道に行った時に六花亭を訪れています。六花亭のグルメリポートはこちら!

スイーツ弁理士の「実食!」
六花亭(函館)|緑の中の老舗菓子店で初物の栗を使った焼き立てマロンパイをパクつく 先週、仕事で函館に行ってきました。 いつもは昼頃に函館に入って午後打ち合わせ。終わったら最終の飛行機でとんぼ返り。そんなスケジュールなんですがね。今回は堪能して...

商標登録に興味が出てきた人へ

商標登録に興味が出てきた方はぜひ以下の記事も読んでみてください。きっと、気付きがあるはずです。

商標登録のやり方。商標登録とは何かについて簡単に説明します

他の商標登録の記事はこちらから。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

目次