スターバックスのロゴ変遷に学ぶブランドロゴの作り方とそのコツ

クロスリンク特許事務所(東京都中央区銀座)所長、中小企業専門の弁理士・山田龍也(@sweetsbenrishi)です。

目次

スターバックスのロゴ変遷に学ぶブランドロゴの作り方とそのコツ|スモールブランディングのヒント

「スモールブランディング」とは、中小企業・個人事業主等のスモールビジネスに特化したブランドづくりの手法です。

「スモールブランディングのヒント」では、スモールブランディングのヒントとなる、

● ブランド戦略
● 商標登録・商標権
● ネーミング・キャッチフレーズ
● その他、ブランドづくりに役立つ情報

についてざっくり解説します。

スターバックスのブランドロゴの変遷

先日、「ブランドは定期的に見直すべし」という記事を書きました。

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実際の事例になぞらえて、もう少し具体的に説明してみましょう。

今回の事例は、前回も取り上げたスターバックスのブランドロゴ(ロゴマーク・シンボルマーク)です。
スターバックスのブランドロゴは何度か変更されています。

 

①1971年バージョン(オリジナル)
②1987年バージョン
③1992年バージョン
④2011年バージョン

の4つのバージョンを確認することができました。

 

スターバックスのブランドロゴは、時代とともに洗練され、シンプル化が進んでいます。
スターバックスは自らの知名度の上昇、企業規模の拡大を考慮し、ブランドロゴの見直しをしているわけです。

このロゴの変遷から、ブランドロゴの作り方とそのコツを探っていきます。

(コツその1)文字数を減らし、メッセージをシンプルにする

コツの1つ目は、文字数を減らし、メッセージをシンプルにすることです。

 

スタバのブランドロゴの変遷を見ると、ロゴが新しくなるごとに文字数が少なくなり、メッセージがシンプルになっています。

①1971年バージョンには、屋号の「STARBUCKS」の他、取扱商品である「COFFEE(コーヒー)」、「TEA(茶)」、「SPICES(スパイス)」の文字があります。

②1987年バージョンでは、取扱商品の表示から、「TEA(茶)」、「SPICES(スパイス)」の文字がなくなりました。
取扱商品の表示を「COFFEE(コーヒー)」だけにして、メッセージをシンプルにしたわけです。

知名度がまだ低いうちは、そのお店が何を取り扱っているかお客様もわかりませんよね?
だから、全ての商品を書いておくのも悪くはないでしょう。

ただ、

● お店の知名度が上がってきた
● コーヒーを求める人が大多数になった

となれば、「TEA(茶)」、「SPICES(スパイス)」の文字は余分な情報です。
メッセージを「COFFEE(コーヒー)」に絞った方が強いメッセージが伝わるのです。

 

④2011年バージョンでは、屋号の「STARBUCKS」、主力商品の「COFFEE(コーヒー)」の文字すらなくなりました。
もはや、屋号や商品の説明も要らないほど、スターバックスブランドは著名になったということです。
これなら、「コーヒー」に縛られず、多角的な事業展開も可能となります。

(コツその2)シンボルを抽象化する

コツの2つ目は、シンボルを抽象化することです。

 

スタバのブランドロゴのシンボルは、「セイレーン(尾の部分が二又に分かれた半人半魚の怪物)」です。

このセイレーン。
ロゴが新しくなるごとにデザインが抽象化され、シンプルになっています。

①1971年バージョンでは、セイレーンがかなり具体的に表現されています。
ちょっとおどろおどろしい感じもします(怪物なんだから、それが当たり前なのかもしれませんが)。

②1987年バージョンでは、セイレーンを抽象化し、シンボリックに表現しています。
セイレーンをシンプルなデザインとすることで、キャラクター化・アイコン化しているわけです。
怪物的な要素が減って、人魚的な要素が増えたことで、親しみやすいデザインになっています。

③1992年バージョンでは、セイレーンの姿を全身像からバストアップの画像に変更。
二又の尾はチラ見えしていますが、「長い髪の女性」、「王冠」のイメージの方が強くなっています。
前のバージョン(②1987年バージョン)より更にセイレーンの怪物的要素が削がれたわけです。

 

シンボルを具体的にしすぎると特定のイメージに紐付けられてしまいがちです。
イメージが固定化され、広がりがありません。

抽象的なシンボルの方が色々なイメージを持ってもらえます。
広い層に受け入れられる可能性を秘めているのです。

(コツその3)コーポレートカラーを決める

コツの3つ目は、コーポレートカラー(企業を象徴するカラー)を決めることです。

 

スタバのブランドロゴの変遷を見ると、ロゴが新しくなるごとにグリーンの占める割合が増えています。
今では、グリーンがスタバのコーポレートカラーとなっています。

①1971年バージョンでは、ロゴマークはブラウン単色で描かれていました。
シンボルマークのセイレーンのデザインがイケてないこともあって、一昔前の古びたイメージです。

②1987年バージョンでは、セイレーンを囲むドーナツ状の部分がグリーンで彩色されました。
セイレーンの背景色であるブラックとのコントラストが印象的なロゴに変貌しています。

④2011年バージョンでは、セイレーンを囲むドーナツ状の部分がなくなり、セイレーンの背景色がグリーンとなりました。
使われているカラーはグリーン一色。
スタバのコーポレートカラー、グリーンを鮮明に打ち出しています。

 

色の持つ訴求力は強烈です。

例えば、銀行で言えば、赤は「三菱UFJ」、青は「みずほ」、黄緑は「三井住友」、緑は「りそな」。
色のイメージが各々の銀行に完全に結びついています。

このような色の力を積極的に使っていくべきなのです。

まとめ

今日は、スタバのロゴの変遷から、ブランドロゴの作り方とそのコツを探ってきました。

ポイントは、

(1)文字数を減らし、メッセージをシンプルにする
(2)シンボルを抽象化する
(3)コーポレートカラーを決める

 

の3つです。

ロゴマークはその会社の象徴・シンボルです。
文字で説明しようとすると、どうしても野暮ったい感じになってしまいます。

シンプルで直感的にイメージを伝えられるロゴマークを考えましょう!

おまけ

スタバとエクセルシオールがロゴマークを巡って裁判で争ったことがあります。

エクセルシオールが、スタバの②1987年バージョンと似たロゴマークを使っていたために、スタバから不正競争防止法違反で訴えられたのです。
しかも、その時のエクセルシオールのロゴはドーナツ状部分のカラーもグリーン!

この時、エクセルシオール側がドーナツ状部分のカラーをブルーに変更することで、両社は和解しています。
似たようなロゴマークでも、カラーが違えば区別が付くということですね。

それだけ、色の印象は強烈だということです。

 

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