中小企業専門・クロスリンク特許事務所(東京都中央区銀座)の代表弁理士・山田龍也(@sweetsbenrishi)です。
「ブランディングが大事」
それはわかっているけれど、
そんなお悩みをよく聞きます。
でも結論から言ってしまうと、ブランディングには高価な商品もマスメディアでの広告も不要です。
ブランディングはお客様からの信頼を集めるための活動。
その基となる考え方です。
まずは、「ブランディング」とは何かを知りましょう。
その「ブランディング」をあなたの会社、商品、サービスに当てはめていけば、「ブランディング」は徐々に形になってくるのです。
弁理士は商標登録の専門家です。
商標登録はブランディングの活動とは切っても切れない関係にあります。
商標登録の専門家である弁理士の視点から、皆さんのブランディングに役立つ情報をお伝えしていきます。

中小企業のためのブランド戦略|はじめに
最近、こんなニュースを見かけました。
鋳物の調理用具バーミキュラ、おいしさ分かる体験施設|NIKKEI STYLE

無水調理をすることができる鋳物ホーロー鍋「バーミキュラ」。
鋳造メーカー・愛知ドビーの商品です。

この記事には、「バーミキュラ」ブランドのフライパンを開発する際の話が出てきます。
この記事を読むと、
- 「バーミキュラ」のブランディングの考え方
- 「バーミキュラ」がファンから愛される理由
が見えてくるんですよね。
ということで、今回は、「バーミキュラ」を題材に、「中小企業のブランド戦略」を考えていきましょう。
「中小企業のブランド戦略」
今回のポイントは以下の3つです。
② その商品で届けたい世界観を言語化し、コンセプトを作る
③ 全ての商品を一貫したコンセプトで括る
中小企業のためのブランド戦略①|購入者に喜ばれる商品を作る
「中小企業のブランド戦略」
1つ目のポイントは、
ことです。
「ブランディング」という言葉は誤解を招きやすい言葉です。
こんな誤解をしている方も未だにいらっしゃるようです…。
ブランディングは商品の購入者との間に信頼関係を作っていく活動です。
「購入者に喜ばれる商品」を作るのは、ブランディングのための最低限の条件なのです。
と思う方もいるでしょうが、まぁ話を聞いてください(笑)
注意して欲しいのは、
とのニュアンスの違いです。
「購入者に喜ばれる商品」とは、単に
- 安い
- 品質が良い
- 機能が優れている
それだけの商品を意味しません。
「購入者に喜ばれる商品」
それは、購入者の悩みを解決し、購入者の暮らしに心地良さを与える商品です。
作り手が考える「良い商品」ではなく、
が大事なのです。
ブランド戦略の考え方|「バーミキュラ」の場合①
「バーミキュラ」と言えば、無水調理をすることができる鋳物ホーロー鍋が有名です。
この鍋には色々な技術が使われています。
- リブ底(食材との接地面積を最小限にし、熱が伝わりすぎるのを防ぐ)
- 3層ホーローコーティング(遠赤外線を発生させ、食材の組織を破壊せずに食材の内側から加熱)
- テーパーエアタイト構造(鍋の内部に蒸気を閉じ込め、食材の外側からも加熱)
でも、「バーミキュラ」のブランドサイトを覗いてみると、これらの技術の説明だけでなく、
- 息子がブロッコリーを食べた
- 調味料を使わなくても美味しくできた
- 誰かと一緒に食べたくなる
といった購入者の喜びの声が並んでいます。
技術だけでなく、購入者に喜ばれている理由をしっかりアピールすることでブランディングをしているわけです。
中小企業のためのブランド戦略②|その商品で届けたい世界観を言語化し、コンセプトを作る
「中小企業のブランド戦略」
2つ目のポイントは、
ことです。
注意して欲しいのは、
ではない点です。
先程、「購入者に喜ばれる商品を作る」という話をしました。
商品が喜ばれる理由は機能や性能そのものではありません。
その商品によって実現される世界観です。
それを言語化するのです。
例えば、働く女性に好評な乾燥機能付き洗濯機。
この商品のブランディングで大事なのは、洗濯機に乾燥機能が付いている点ではありません。
乾燥機能が付いていることによって、
- 洗濯物を干したり畳んだりする面倒から解放される
- 自分自身の時間を持てる
等、ちょっとゆとりのある暮らしができる、という世界観が大事なわけです。
例えば日立の洗濯乾燥機は、「ハロー!ハピネス」という形で言語化し、コンセプトを作っています。
コンセプトを作るときには、商品の内容(品質・機能・性能等)そのものではなく、
ことが大事なのです。
ブランド戦略の考え方|「バーミキュラ」の場合②
「バーミキュラ」の鍋の特徴は無水調理。
技術で言えば、
- テーパーエアタイト構造(鍋の内部に蒸気を閉じ込め、食材の外側からも加熱)
です。
でも、この技術ではなくて、
- 息子がブロッコリーを食べた
- 調味料を使わなくても美味しくできた
- 誰かと一緒に食べたくなる
といった購入者の喜びの声に着目します。
これらが購入者が求めている世界観だからです。
ここから導き出された「バーミキュラ」のブランドコンセプトが、
なのです。
中小企業のためのブランド戦略③|全ての商品を一貫したコンセプトで括る
「中小企業のブランド戦略」
3つ目のポイントは、
ことです。
取り扱っている商品が一つという会社はありませんよね?
大抵、複数の商品を取り扱っているはずです。
この場合、それら複数の商品を同じコンセプトで作っていくことが大事なのです。
最初に、
という話をしましたよね。
皆さんは言うことがコロコロ変わる人を信用できますか?
できませんよね(笑)
- 以前の商品Aではこういう事を言っていた
- でも、今度の商品Bでは違う事を言っている
そんなことになってしまうと、
- 商品Aが良かったから見に来たのに、商品Bは思っていたのと違う
- このブランドって、そもそもどんな商品を提供したいの?
- なんだか一貫性がないブランドだなぁ
というように、ブランドに対する信頼が失われてしまいます。
この約束が商品の購入者との間に信頼関係を作っていくわけです。
Appleがスタイリッシュでないスマホを作ったら、それを「iPhone」と名付けて売ったらダメなんですよ(笑)
「iPhone」には、ファンに期待されている世界観があるんですから。
このように、同じブランドで複数の商品を作るときには、
ことが大事なのです。
ブランド戦略の考え方|「バーミキュラ」の場合③
「バーミキュラ」=無水調理をすることができる鋳物ホーロー鍋。
しかし、「バーミキュラ」のフライパンは無水調理をすることができません。
理由はただ一つ。
フライパンに無水調理鍋の構造を採用することはできます。
でも、それでは美味しい料理ができないからです。
「バーミキュラ」のブランドコンセプトは、
でしたよね?
だから、「無水調理をできる」ことよりも、「素材本来の味を引き出せること」にこだわり、それに適した構造・材質のフライパンを作り上げたわけです。
中小企業のためのブランド戦略|まとめ
「中小企業のブランド戦略」のまとめです。
今回のポイントは以下の3つです。
② その商品で届けたい世界観を言語化し、コンセプトを作る
③ 全ての商品を一貫したコンセプトで括る
今回のキーワードは商品づくりの一貫性です。
- 購入者はその商品のどこに惹かれて商品を購入しているのか?
- その背景にある世界観はどういう世界観なのか?
- 他の商品でもその世界観を感じてもらうためにはどんな商品にすればよいか?
この辺りを考えていくと、良いと思います。
ぜひ、ブランド戦略に挑戦してみてください!