金魚の町・奈良県大和郡山市の金魚電話ボックス、著作権トラブルで撤去へ ~創作のアイデアが同じ=著作権侵害ではない~

クロスリンク特許事務所(銀座・東銀座・新橋)・弁理士のヤマダです。

はじめに

「金魚の町」として知られている奈良県大和郡山市。

この「金魚の町」で観光スポットとなっていた「金魚電話ボックス」が著作権トラブルで撤去されることになりました。

この事件を題材に、著作権侵害の問題について考えてみたいと思います。

事件の経緯

事件の経緯が毎日新聞に掲載されていました(*1)。

その記事を参考に、事件の経緯をまとめてみました。

 

今回、事件の対象となったのは、電話ボックスを水槽に見立てて、そこに金魚のデザインを施したオブジェ、通称「金魚電話ボックス」です。

「金魚電話ボックス」は、2011年に京都造形芸術大学の学生グループが「テレ金」という名称で制作したものです。2013年から奈良県大和郡山市の柳町商店街に設置されていました。

「金魚電話ボックス」は、金魚の産地として知られる大和郡山市を象徴するオブジェとして街の人から親しまれており、最近では、いわゆるインスタ映えスポットとして観光客も多数訪れていました。

 

ところが、福島県在住の現代美術家・山本信樹さんから著作権侵害の指摘を受け、「金魚電話ボックス」の著作権問題が発生しました。

「金魚電話ボックス」が、1998年に制作した山本さんのアート作品「メッセージ」によく似ており、著作権を侵害しているという指摘でした。

山本さん側も「自分の創作と差し替えれば著作権使用料を請求しない」等の提案を行って、歩み寄る姿勢を見せたのですが、柳町商店街側は「著作権は侵害していない」と訴えて交渉は平行線に。

 

柳町商店街側は最後まで、自分たちは著作権を侵害していないというスタンスでしたが、トラブルを早期に終結させるため、「金魚電話ボックス」を自主的に撤去することを決めたのです。

創作のアイデアが同じ=著作権侵害ではない

産経フォトに、山本さんの「メッセージ」と、柳町商店街の「テレ金」の写真が掲載されています(*2)。

どちらも電話ボックスを水槽に見立て、金魚のデザインを施したもので、創作のコンセプトは似ているようにも思えます。

このような場合に、著作権侵害が成立するか否かはどのように判断されるのでしょうか?

以下にまとめてみます。

(1)著作権侵害の条件

著作権侵害の条件は以下の5つです。

① 訴える側の創作物が、著作物であること(「著作物性」と言われます)
② 訴える側の創作物に、著作権が存在すること
③ 訴えられる側の創作物が、訴える側の創作物を拠り所として創作されたものであること(「依拠性」と言われます)
④ 訴えられる側の創作物が、訴える側の創作物と似ていること(「類似性」と言われます)
⑤ 訴えられる側が、訴える側の著作物を利用する権原を持っていないこと

 

今回のケースでは、以下の理由から、①、②、⑤の条件については問題なく満たしていると考えられます。

① 山本さんの「メッセージ」は著作権法に言う「美術の著作物」と考えられる。
② 山本さんはご存命であり、著作権が存在する(著作権の保護期間は創作者の死後50年までです)。
⑤ 京都造形芸術大学の学生グループは、山本さんから著作物の利用について許可を得ていない。

 

従って、今回のケースで問題となりそうなのは、③の「依拠性」の条件と、④の「類似性」の条件です。

(2)依拠性の条件

訴えられる側の創作物が訴える側の創作物(著作物)を拠り所として創作されたものである場合には、「依拠性」の条件を満たしていることになります。

ざっくり言えば、著作権侵害が成立するためには、訴える側(山本さん)の創作物(「メッセージ」)を知った上で、訴えられる側(京都造形芸術大学の学生グループ)がその創作物を真似して自分の創作物(「テレ金」)を創作したことが条件となるわけです。

言い方を変えれば、訴える側の創作物を知らずに創作したものが偶然似ていたという場合は、著作権侵害は成立しません。

 

この点について、京都造形芸術大学は、

「学生は他社の作品を一切参考にしていない」

とコメントしています(*1)。

このコメントが正しいとすると、「テレ金」は依拠性の条件を満たさず、著作権侵害は成立しないことになります。

(3)類似性の条件

訴えられる側の創作物が、訴える側の創作物と似ている場合には、「類似性」の条件を満たしていることになります。

この「似ている」について、過去の著作権侵害に関する裁判では、以下のような解釈をしています。

(訴えられる側の創作物に、訴える側の創作物の)本質的な特徴自体を直接感得することができること。

 

著作物の本質はその表現にあります。創作者の個性を表す独自の表現があるからこそ、その創作性を著作権で保護してくれるわけです。

「本質的な特徴自体を直接感得することができる」とは、ざっくり言えば、訴えられる側の著作物から、訴える側の著作物の特徴(即ち、創作物の個性を表す独自の表現)を感じ取ることができる、ということです。

訴えられる側の創作物が訴える側の創作物と違う部分があって、デッドコピー(丸パクリ)でなかったとしても、訴えられる側の創作物から、訴える側の創作物の独自の表現を感じ取れるのであれば「似ている」と言っていいよね、その場合は類似性の条件を満たしますよ、ということです。

 

このように、類似性は創作物の独自の表現が共通するかどうかを問題とします。

逆に言えば、創作のアイデアの部分が同じでも具体的な表現が違っていれば、類似性の条件を満たさず、著作権侵害は成立しないわけです。

 

今回のケースにおいて、山本さんの「メッセージ」と京都造形芸術大学の「テレ金」は、電話ボックスを水槽に見立てて、そこに金魚のデザインを配置するという創作のアイデア、コンセプトの部分では共通しています。

しかし、両者をよくよく見比べてみると、金魚の数や大きさ、金魚が描かれている位置、水面の高さ等、具体的な表現の部分で差異があります。

この具体的な表現の部分が、山本さんの「メッセージ」の本質的な特徴であるとするならば、京都造形芸術大学の「テレ金」からは、山本さんの「メッセージ」の本質的な特徴を感じ取ることができず、類似性の条件を満たさない(=似ていない)、著作権侵害は成立しない、ということになります。

まとめ

以上説明しように、創作のアイデアやコンセプトが同じであっても、直ちに著作権侵害となるわけではありません。

一見、自分の創作物に似ているように見える他人の創作物を見つけたときでも、カッとなって著作権を振り回すようなことは控えた方が賢明です。

相手方の創作物が著作権侵害の5つの条件、特に、依拠性と類似性の条件を満たしているか否かを専門家である弁護士・弁理士と一緒に検証することをオススメします。

関連サイト

(*1)金魚電話ボックス撤去へ 著作権でトラブル 奈良|毎日新聞

(*2)金魚電話ボックス撤去へ 奈良、作品酷似の指摘で|産経フォト

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プロフィール

山田 龍也(やまだ たつや)
山田 龍也(やまだ たつや)
ものづくりとブランドづくりの専門家/弁理士/ブロガー。
中小製造業のものづくり、個人事業主のブランドづくりを支援中。
特許・実用新案・意匠・商標の権利取得手続; 知財戦略・商品の差別化戦略の立案; 商品の企画・開発に関するアドバイス; 情報発信を用いたブランディング・マーケティング; が得意。