くまモンに学ぶ知財戦略 ~オープン戦略~

目次

はじめに

先日、熊本から上京してきた大学の後輩のH谷君から、くまモンとエヴァンゲリオンのコラボグッズをもらいました。

これ、かなりレアなグッズらしいですよ。

H谷君、ありがとう!

そんなわけで、今日は、くまモンから知財戦略を学んでみましょう!

くまモンのキャラクター利用料は、なんと無料!

くまモンはあれだけの人気者なのに、キャラクター利用料は、なんと無料だそうです。

くまモンは公募ではなく、プロのデザイナーに作らせたキャラクターです。

熊本県はデザイナーから、くまモンの著作権を買い取り、商標登録もしています。

それなりにお金がかかっているはずです。

普通なら、

「キャラクター利用料を取ろう!」

「そうすれば、今までかかった費用を回収できるし、うまくいけば利益も出ちゃうかも…(ムフフ)」

と、考えてしまいそうです。

それにもかかわらず、熊本県はなぜ利用料を取らないのでしょうか?

私が考えるところ、理由は以下の2つです。

利用料をタダにする理由(その1) ~市場を拡大する~

利用料を無料にして、くまモンのキャラクターをたくさん使ってもらい、くまモンの露出量を上げ、その広告宣伝効果によって市場を拡大する、という考え方なのだと思います。

利用料が無料であれば、くまモンのキャラクターを利用したい企業がたくさん出てきます。

たくさんの企業がくまモンのキャラクターを利用する

⇒ くまモンが人目に触れる機会が増え、ネット上にも拡散される
⇒ くまモンの露出量が上がる
⇒ 熊本県のPRにつながる
⇒ 市場の拡大につながる

という図式です。

くまモンは、熊本県のイメージアップ、産品販売や観光客誘致の面で、熊本県に莫大な利益をもたらしていると言えるでしょう。

もし熊本県がくまモンのキャラクター利用料を取っていたら、これほどまでに、くまモンの露出量は増えなかったかもしれませんね 。

利用料をタダにする理由(その2) ~利用目的を制限する~

熊本県は、くまモンのキャラクター利用料を取っていませんが、その利用目的については厳正な審査をしています。

例えば、食品であれば熊本県産の原材料を使っているなど、熊本県のPRに直接関係するものだけに利用を認めているのです。

熊本県とは何ら関係がなく、単に「くまモン人気」に便乗するような利用は認められないということですね。

厳正な審査を通過した企業だけに、くまモンの利用を認めることで、「くまモン=熊本県」の関係性を強烈に印象付け、熊本ブランドの構築に役立てているわけです。

くまモンに学ぶべきこと ~オープン戦略の使い方~

熊本県は企業などに、くまモンのキャラクター利用を認め、著作権や商標権などの知的財産権の一部を開放する戦略を採っています。このような戦略を「オープン戦略」といいます。

くまモンの場合は著作権と商標権が対象ですが、特許権についてオープン戦略を採用することもあります。

例えば、トヨタが燃料電池車の利用を促進するために、燃料電池車に関する特許を開放した例があります。

知的財産権は独占権なので、ともすると、自分の会社だけで独占的に使い、他社には使用させないという戦略(クローズ戦略)を採用しがちです。

仮に他社に使用させるとしても、使用料をもらいたいと考えてしまいます。

ただ、その度が過ぎると将来的な市場を狭めてしまい、自分の首を締めることにもなりかねません。

熊本県は目先の利益(利用料)に惑わされず、オープン戦略をうまく使って、キャラクターの利用を促進し、市場を拡大することに成功しています。

しかも、キャラクターの利用目的を熊本関連のものに限定することで、くまモン人気を単なるキャラクター人気に留まらせず、「熊本ブランドのPR」にきちんと結びつけたわけです。

オープン戦略を使えるか否かはケースバイケースです。

しかし、知的財産権がクローズ戦略だけではなく、オープン戦略のためのツールとしても使える、ということを頭の片隅にでも置いておいてください。

そうすれば、きっと知財戦略の幅が広がるはずです。

まとめ

● 知的財産権の一部を開放することで市場を拡大することができる。
● 知的財産権の開放に条件を付けることで、本来の目的を達成することができる。
● クローズ戦略だけでなく、オープン戦略も頭の片隅に置いておくべし。

おまけ

くまモンに関しては、たくさんの記事がありますね。

ヤマダは下の記事が一番参考になりました。

興味がある方は読んでみてください!

「くまモン」は私たちが育てました ゆるキャラを“売るキャラ”に変えた熊本県職員たち(日経ビジネスDIGITAL)

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山田 龍也
この記事を書いた人
弁理士/ネーミングプロデューサー/テキスト職人。中小製造業によくある「良い商品なのに売れない」のお悩みをローテク製品の特許取得、知的財産(特許・商標)を活用したブランドづくり、商品名のネーミングで解決している。

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