マッサージの方法は特許になるんですか? ~マッサージと知的財産(その1)~

目次

はじめに

仕事で疲れた身体にマッサージ。気持ちいいですよね。

最近、異業種交流会などで、マッサージや指圧のお仕事をしている方にちょくちょくお会いします。
昨日もマッサージ業界の方から「新しいマッサージの方法を考えたんですけど、こういうのって特許になるんですか?」とお問い合わせを頂きました。

今日はマッサージの方法について特許を取ることができるかどうかについてお話しします。

マッサージ方法については特許を取ることができない

結論から言ってしまうと、マッサージの方法については特許を取ることができません(残念!)。

特許庁では、人道的な観点から、「人間を手術、治療又は診断する方法の発明」(医療行為)については特許を与えないことにしています。

医療行為に特許を与えてしまうと、特許を持っている人に許可を得なければその医療行為を行うことができなくなります。
そうすると、お医者さんが緊急の治療を施すことが難しくなり、患者さんの生命に危険を及ぼすおそれもあるからです。

そして、マッサージの方法については医療行為として取り扱う、というのが現時点での特許庁の考え方です。

特許庁の特許・実用新案審査基準(*1)には、

人間を治療する方法には、以下のものが含まれる。

(中略)

(iii) 病気の予防方法(例:虫歯の予防方法、風邪の予防方法)
なお、健康状態を維持するために処置する方法(例:マッサージ方法、指圧方法)も、病気の予防方法として取り扱う。

と記載されていて、マッサージの方法も準医療行為であるという考えを明らかにしています。
この特許庁の考え方が変わらない限り、マッサージについて特許を取ることはできません。

ただ、医療行為に特許を認めるか否かについては議論になっています。
今後、この取扱いが変更される可能性もありそうです。

マッサージ業界では特許を取ることができないのか?

「そうか…。マッサージは特許に縁がないのか。」と思った方も多いかもしれません。

しかし、特許を取ることができないのは「医療行為」、即ち、方法に関するアイデアです

「マッサージ方法」や「指圧の方法」などは特許を取ることができませんが、「マッサージのための器具、機械、装置」など、物に関するアイデアであれば特許を取れる可能性があるのです。

例えば、今までにはなかった効果的な揉み方ができるマッサージチェアや、特殊なマッサージを施すことができるマッサージ器具などは、特許の対象になり得る、ということです

「医療行為」については特許を取ることができないけれども、「医薬品」や「医療機器」であれば特許を取ることができる、というのと同じですね。

「マッサージのための器具、機械、装置」を特許出願すると、

● 今までに公開されたアイデアではないこと(新規性)
● 今までにあったアイデアから簡単に思いつくものではないこと(進歩性)
● そのアイデアについて最も早く特許出願をしていること(先願)

など、特許を受けるための条件を満たすか否かの審査が行われます。

これらの条件を全て満たすと判断された場合には、晴れて特許を与えられることになります。

まとめ

(1)マッサージの方法については特許を取ることができない。
(2)マッサージのための器具・機械・装置などは特許を取ることができる可能性がある。

関連サイト

(*1)特許・実用新案審査基準 第III部 第1章 発明該当性及び産業上の利用可能性<P.7-8>|特許庁

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山田 龍也
この記事を書いた人
弁理士/ネーミングプロデューサー/テキスト職人。中小製造業によくある「良い商品なのに売れない」のお悩みをローテク製品の特許取得、知的財産(特許・商標)を活用したブランドづくり、商品名のネーミングで解決している。

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