はじめに
先日のコラムで「7つの差別化戦略」を紹介しました。「7つの戦略のうち、どの戦略を採るか」は商品企画をする上で非常に重要です。2016年の大ヒット商品となった女性用ブラ、トリンプの「スロギー ZERO FEEL」はどんな差別化戦略を採ったのでしょうか?
今日は、女性用ブラジャーの差別化戦略についてお話しします。
女性用下着にあって、男性用下着にない機能?
女性用下着には男性用下着にない独自の機能があります。それは「補正機能」です。体型を美しく見せ、きれいに保つための機能ですね。
パッド、ワイヤー、ゴムなどを駆使して、
● 胸を豊かに見せる、胸の谷間を作る
● ウエストを細く見せる
● ヒップアップ
などの効果を得るわけです。
ただ、この補正機能。体を締め付けるので窮屈です。「着心地」はあまりよくありません。
● 体型をきちんと補正しようとすれば、着心地は悪くなる
● 着心地を良くしようとすれば、体型を補正する効果が低下する
あちらを立てればこちらが立たない関係。補正の効果と着心地の良さは反比例の関係にあるのです。
「スロギー」の差別化戦略
「スロギー ZERO FEEL」はトリンプが販売する女性用ブラジャーです。「2016年ヒット商品ベスト30」の11位に選ばれる程のヒット商品になりました。「きもちよすぎー!スロギー」のTVCMでもおなじみですよね。
引用元:https://jp.triumph.com/p/10172408198800M
「スロギー」の採った差別化戦略は「【戦略⑤】こだわり機能で差別化」です。「スロギー」のこだわり機能は「着心地の良さ」。伸縮性が高い(よく伸びる)生地を使って身体に対するフィット性を高め、着心地を阻害する「縫い目」、「ホック」、「ワイヤー」をなくしました。
「スロギー」は生地の柔軟性が高く、ノンワイヤーであるために通常のブラのような補正効果はありません。それでも、身体を締め付けず、楽で着心地が良い点のみに機能を絞ったことが功を奏しました。一つの機能(着心地の良さ)を極限まで高めたことが女性に支持されて成功に繋がったのです。「まるで『着けてる感ゼロ』のラクラク&ノーブラ感覚♪」のキャッチコピーにもそれが現れています。
見込み客(女性)の中にある潜在的な不満(着心地の悪さ、窮屈感)。これををうまく解決した商品を市場に置けば、放っておいても売れるのです。
「SUHADA」の差別化戦略
「スロギー」とともに「2016年ヒット商品ベスト30」の11位に選ばれたヒット商品が、ワコールの「SUHADA」です。
引用元:http://www.wacoal.jp/suhada/
この「SUHADA」は「スロギー」とは異なる差別化戦略を採っています。「SUHADA」が採った差別化戦略は「【戦略④】良いとこ取りで差別化」です。
「SUHADA」では、バストを引き上げる部材を金属ワイヤーからソフトな樹脂製の幅広バンドに変更しています。「スロギー」のように補正効果を捨ててしまうのではなく、従来のブラの延長線上で、補正効果と着心地の良さをうまくバランスさせようという意図が見えます。
まとめ
補正機能を捨てて着心地の良さに特化した「スロギー」。
補正機能と着心地の良さをうまくバランスさせた「SUHADA」。
同じカテゴリーの商品でも、どの戦略を選択するかによって全く異なる商品ができあがることがわかります。
● 自分の商品のターゲットは誰なのか
● そのターゲットは今までの商品にどんな不満をもっているのか
その辺りを考えながら、自分の商品に適した差別化戦略を選択することが大事です。