差別化戦略の類型・そのメリットと事例(戦略③:形状+機能で差別化)

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はじめに

下記の記事の中で紹介したヤマダ式「7つの差別化戦略」。

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今日は、この「7つの差別化戦略」の中から「戦略③:形状+機能で差別化」のメリットと事例を紹介したいと思います。

「戦略③:形状+機能で差別化」の意義

「形状+機能で差別化」は、商品の新しい「機能」や優れた「機能」が商品の「形状(見た目、外観)」に現れるように商品を作り込むことで、商品を差別化する戦略です。

商品の「機能」が今までの商品とは違っていても、一見して「機能」の違いが明らかになる程の外見上の差異があるとは限りません。

「形状+機能で差別化」では、商品を

  • 今までの商品とは一線を画する形状
  • ターゲット(見込み客)に、商品の機能上のメリットを容易にイメージさせる形状

に作り込みます。

こうすることで、ターゲットが商品の「形状」を見ただけで

  • その商品の持つ新しい「機能」や優れた「機能」を直感的にイメージすることができる。
  • その商品の活用シーンをすぐにイメージすることができる。

というメリットが生まれます。

視覚に訴えるアピールは直接的で強力です。
理性に訴えるアピール(文章や口頭での説明等)を凌駕します。
商品を見ればその「機能」がわかる、わかりやすさはターゲットの感情を動かすのです。

昨日説明した「戦略②:デザインで差別化」の場合、商品の「形状」が商品の「デザイン(美観)」と結びついていました。

これに対し、「戦略③:形状+機能で差別化」の場合、商品の「形状」が商品の「機能」と強固に結びついている点が特徴的です。

商品の「機能」は商品の本質とも言える部分です。
「戦略③:形状+機能で差別化」は商品の本質を理解してもらう意味で最も効果的な戦略と言えるのです。

【事例6】「カドケシ」(コクヨ)

商品名「カドケシ」
キャッチフレーズ「細かい部分をいつでも快適に消すことができます」

引用元:http://www.kokuyo-st.co.jp/stationery/kadokeshi/products/index.html

最初の事例はコクヨの「カドケシ」です。

「カドケシ」は角が28個ある消しゴムです。
通常は直方体形状である消しゴムを立方体(キューブ)を組み合わせた形状に変更しました。

この消しゴムには角がたくさんあります。
しかも使っていくうちに次々と新しい角が現れ、角が丸まってなくなってしまうことがありません。

消しゴムの角が細かい部分を消すのに適していることは誰でも知っていますよね?

だから、「角がたくさんある」という商品の形状を見るだけで、ターゲットはこの消しゴムの優れた機能をイメージすることができるのです。

【事例7】「超立体マスク」(ユニ・チャーム)

商品名「超立体マスク」
キャッチフレーズ「『口元空間』で息ラクラク!」

引用元:http://www.d-unicharm.jp/item/586.html

2番目の事例はユニ・チャームの「超立体マスク」です。

このマスクは口を覆う部分が前方に突き出した立体的な形状をしています。
そのため、マスクを着けた時にマスクが口(唇)と直接接触しません。
口とマスクの間に空間(「口元空間」)が形成されるのです。

この立体的な形状を見れば、「口元空間」によって、

  • 呼吸が楽になる
  • しゃべりやすい
  • 口紅がマスクに付いて化粧が落ちることがない

等、様々な効果を生ずるであろうことを、ターゲットは極めて容易にイメージすることができるでしょう。

【事例8】「dyson cool」(ダイソン)

商品名「dyson cool」
キャッチフレーズ「空気を増幅させる羽根のない扇風機」

引用元:http://www.dyson.co.jp/fans-and-heaters.aspx

3番目の事例はダイソンの「dyson cool」です。

「dyson cool」は 羽根がない扇風機です。
羽根がないので羽根を覆う網状のカバーもありません。

この扇風機の内部にはファンが組み込まれています。
また、輪っか状のフレームには小さな孔(隙間)が形成されています。
ファンで発生させた風をフレームの孔から吹き出させる仕組みになっているのです。

ターゲット(見込み客)は、羽根がなく、羽根を覆う網状のカバーもない、この構造を見るだけで、

  • (回転する羽根が露出していないので)子供が指を突っ込んで怪我をすることはない
  • (羽根を覆う網状のカバーがなく)お手入れが楽そう

という効果を直感的にイメージすることができます。

まとめ

「形状+機能で差別化」には

  • 新しい「機能」や優れた「機能」を直感的にイメージすることができる。
  • その商品の活用シーンをすぐにイメージすることができる。

というメリットがあります。

「形状+機能で差別化」は、商品の本質である「機能」をアピールしやすいという点で、非常に有効な差別化戦略と言えます。

山田 龍也
この記事を書いた人
弁理士/ネーミングプロデューサー/テキスト職人。中小製造業によくある「良い商品なのに売れない」のお悩みをローテク製品の特許取得、知的財産(特許・商標)を活用したブランドづくり、商品名のネーミングで解決している。

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