映画「この世界の片隅に」はクラウドファンディングで何を得たのか?

クロスリンク特許事務所(銀座・東銀座・新橋)のヤマダです。

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目次

はじめに

先日、インターネットTVで「無限会社西野企画」という番組を視聴しました(*1)。

この番組ではクラウドファンディングの話が出てきます。その中で、劇場版アニメ映画「この世界の片隅に」が話題となりました。

この映画は昨年、クラウドファンディングで約4,000万円の資金を調達したことが話題となった映画です。

しかし、この映画が成功したのは資金調達が成功したからではありません。クラウドファンディングによって、もっと大事なものを手にしたから成功したのです。

今日は「この世界の片隅に」はクラウドファンディングで何を得たのか、について検証していきたいと思います。

クラウドファンディングで得られるのは制作資金だけではない

「この世界の片隅に」は、公開から約3ヶ月で興行収入は20億円を超え、観客動員数は150万人を突破する大ヒット作となりました(*2)。

クラウドファンディングで調達した資金が劇場公開への原動力となったことは間違いありません。しかし、資金を調達することと、お客さんが観に来てくれること、は全く別の問題です。「この世界の片隅に」のヒットの理由は資金調達以外のところにあるのです。

その理由の一つは作品のクオリティ。そして、もう一つがクラウドファンディングを通じて得たファンです。

「この世界の片隅に」は配給会社も決まっていない状態で制作を開始しています。クラウドファンディングで約4,000万円の資金を調達したといっても、それは数億円とも言われる映画の制作費を賄うには遠く及ばず、パイロット版を作るので精一杯。

それでも、クラウドファンディングの成功が火付けとなって、いくつかの配給会社が手を挙げ、出資企業が徐々に集まり…。クラウドファンディングを通じたファンの後押しによって、ついに映画は完成したのです。

「この世界の片隅に」では、エンドロールにクラウドファンディングの支援者の名前をクレジットしています。支援者を「制作者」の一員と認めているわけです。

「ファン」を超えて「制作者」となった支援者は「自分たちの映画」のために、公開初日に大挙して映画館に駆けつけました。そんな彼らの行動もあって映画館は立ち見が続出! 初日の大入りが話題となって、ムーブメントが起き、映画の大ヒットに繋がりました。

「この世界の片隅に」がクラウドファンディングを通じて得たものは、「制作資金」ではなく「ファン」だったのです。

クラウドファンディングは「お金」ではなく「人」を集める

「無限会社西野企画」のメインキャスト、キングコング・西野亮廣さんは自らの絵本について何度もクラウドファンディングを仕掛けています。

その西野さんが、

「集まった支援金の額には意味がない。」

と言っています。

日本のクラウドファンディングの殆どは「投資型」ではなく「購入型」です。支援額に応じたリターンをする必要があります。

資金調達とは言っても、その中から

● リターン(お礼の品)
● リターンの送料
● プロジェクトの手数料

などを捻出する必要があり、支援額の全額を自由に使えるわけではありません。リターンの設計によっては赤字になるケースだってあるのです。

このため、西野さんは、

「(いくら集まったかではなく)何人集まったか。」

「クラウドファンディングは『作り手』を作る。」

「一度、プロジェクトに関わると、そのプロジェクトが気になる。最後まで面倒を見たくなる。」

と言っていて、「人」の重要性に言及しています。

「買い手」を増やすのではなく、「作り手」を増やす。「作り手」は自分の作品に愛着があるから、結果的に「買い手」になる、という理屈です。

潜在的な顧客に積極的な関与を求めることで、コアなファン、リピーターとして取り込んでいく。

実は、クラウドファンディングは資金を集めるツールではなく、人を集めるツールなのです。

まとめ

クラウドファンディングでは、

● 集まった支援金の全てを使えるわけじゃない
● お金ではなく、コアなファン、リピーターを集められる点に特徴がある

ということです。

クラウドファンディングは「資金調達」とは言っても、金融機関からの融資や補助金・助成金とは全く特性が違います。その違いを意識して使うことが大事です。

参考サイト

(*1)無限会社西野企画|FRESH!

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(*2)「この世界の片隅に」公式

[blogcard url=”http://konosekai.jp/”]

山田 龍也
この記事を書いた人
弁理士/ネーミングプロデューサー/テキスト職人。中小製造業によくある「良い商品なのに売れない」のお悩みをローテク製品の特許取得、知的財産(特許・商標)を活用したブランドづくり、商品名のネーミングで解決している。

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