電撃解任! それでもハリルホジッチを解任すべきではない3つの理由

クロスリンク特許事務所(銀座・東銀座・新橋)・弁理士のヤマダです。

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目次

はじめに

サッカー日本代表監督 ヴァヒド・ハリルホジッチが電撃解任された。

長らく燻っていた問題が、W杯まであと2箇月というこの時期になって噴出した形となった。

あえて世論に背を向けて、「ハリルホジッチを解任すべきでない」という立場で、この問題を論じてみたい。

それでもハリルホジッチを解任すべきではない3つの理由

色々な意見があるだろう。

でも、私はハリルホジッチの解任には反対である。

反対する理由は以下の3つだ。

(理由1)ハリルホジッチは結果を出していないわけではない
(理由2)ハリルホジッチの採る戦略こそが日本代表を勝利に導く
(理由3)日本に優秀な監督・指導者が来なくなる

一つずつ検証していこう。

(理由1)ハリルホジッチは結果を出していないわけではない

「ハリルホジッチは結果を出していない」という声をよく聞く。

しかし、これは明らかに間違いだ。

日本代表監督が出すべき結果、果たすべき使命は2つしかない。

1つはW杯アジア予選を勝ち上がり、本戦出場権を得ること。

もう1つはW杯本戦でグループリーグを勝ち上がり、決勝トーナメントに進出すること。

この2つだ。

前者については、完璧なまでの結果を出している。アジア予選をグループ首位で通過し、本戦出場権を獲得しているのだから。

後者については、まだ評価できる段階にない。W杯本戦は未だ始まっていないからだ。

ハリルホジッチは、結果を出していないわけではないのだ。

強化試合の結果をもって、「結果を出していない」という人がいる。

しかし、強化試合はあくまで強化試合であって、その戦績を「結果」として評価すべきではない。

かつてのジーコのように、目先の強化試合にしゃかりきになって勝ちにいき、本来の目的である「強化」が疎かになるのでは本末転倒ではないか。

「強化試合の結果を見る限り、本戦での決勝トーナメント進出に期待を持てないではないか」という意見もあるだろう。

しかし、ハリルホジッチは本番に強い勝負師タイプの監督だ。

前回、ブラジルW杯でアルジェリア代表を率いたときも、アフリカ予選では選手の大幅入れ替えを行って本戦出場権を獲得し、W杯本戦では大胆な戦術と傭兵で強豪とは言えないアルジェリアを決勝トーナメントに導き、優勝したドイツを延長戦にまで引きずり込む健闘を見せた。

いわば、W杯本番が迫った、この時期からがハリルホジッチの真骨頂なのだ。

本人も日本代表の状態がよくないことを承知しつつ、本番に向けて策を練り、着々と準備を進めていたに違いない。

協会はハリルホジッチの一番美味しいところを味わうことなく、捨ててしまったのだ。

(理由2)ハリルホジッチの採る戦略こそが日本代表を勝利に導く

ハリルホジッチを象徴する言葉として、「デュエル(決闘)」「縦に速いサッカー」がある。

彼の戦略を一言で言えば「堅守速攻」である。

前回ブラジルW杯でザッケローニ率いる日本代表はボールポゼッションを高め、自分たちからアクションを仕掛けていく「俺たちのサッカー」を標榜し惨敗した。

W杯のように対戦相手のレベルが圧倒的に高い状況では「俺たちのサッカー」は時期尚早だったのだ。

残念ながら、世界における日本代表の力量はまだまだその程度なのだ。

W杯本戦を想定すれば、選手個々の対人能力の向上と相手に能力に合わせた柔軟な戦術は必須。

このような考え方の下、協会が後任監督として、弱者の戦略である「堅守速攻」を得意とするハビエル・アギーレを招聘したのは、極めて合理的な判断であったと言える。

それを引き継いだハリルホジッチもまた、強固な守備(デュエル)と、素早いカウンター攻撃(縦に速いサッカー)を標榜している。だから、彼の考え方が特段間違っているわけではない。

この「堅守速攻」が見事にハマったのがW杯アジア最終予選のオーストラリア戦だった。「W杯でもこのような試合運びをできれば…」という、期待を抱かせるのには十分な素晴らしい試合を見せてくれた。

ハリルホジッチの標榜するサッカーが間違っているわけではないのだ。

ハリルホジッチが結果を出したのは身体能力の高い選手が多いアフリカであることをもって、「ハリルホジッチのサッカーは日本に合わない」という声をよく聞く。

しかし、これにもまた誤解があるように思う。

北アフリカに属するアルジェリアのベースは日本と同様にパスサッカーであり、身体能力を全面に打ち出す、いわゆるアフリカ的なスタイルではない。

ハリルホジッチがタイトな守備とカウンター戦術を植え付けて、アルジェリアのサッカーを変容させたのだ。

そうであるならば、ハリルホジッチは日本のサッカーも変容させる可能性を秘めていると言える。

また、「ハリルホジッチは日本人の特徴を理解していない」とも言われる。

しかし、ハリルホジッチは、かなり丹念に試合を視察している。これほど視察に熱心な監督は見たことがない

Jリーグの試合もよく顔を出しているし、海外クラブに所属する代表選手を自ら視察し、或いはコーチに視察させている。時間があればサッカー協会に現れ、ビデオのチェックにも余念がないと言われている。

彼は分析好きのサッカーオタクだ。その彼が日本人選手の特徴を理解していないとは思えない。

彼は日本人選手を熟知した上で、その弱点であるフィジカルコンタクトの弱さ、展開の遅さを改善すれば、世界でも十分戦えると踏んでいる。

だからこそ、口を酸っぱくして「デュエル(決闘)」「縦に速いサッカー」を連呼しているのだ。

話は変わるが、後任監督に決まった西野朗は、どちらかと言うと、ガンバ監督時代に見せたポゼッション重視の攻撃的サッカーを得意としている。

アギーレやハリルホジッチより、ザッケローニに近いタイプだ。

残り時間が少ない中、日本代表では3年間封印されていた攻撃サッカーを再び持ち出して本番に臨むのか、或いは自分の不得手な守備的戦術で勝負するのか。

いずれにしても、ハリルホジッチの続投より確実に良い結果を残せる保証はない。

(理由3)日本に優秀な監督・指導者が来なくなる

世界基準で見た場合、残念ながら日本人選手のレベルは高い方とは言えない。

しかし、もっと低いのは指導者のレベルだ。

W杯で結果を残した日本人指導者は岡田武史ただ一人である。

その岡田は今回の騒動の中でS級ライセンスを返上してしまった。これで日本には世界の舞台で戦える指導者は不在となった。

日本代表がW杯のような世界の舞台で戦うためには、まだまだ実績のある外国人監督に頼る必要がある。

W杯で結果を残したいなら、代表チームを率いて決勝トーナメントに進出した実績のある指導者に代表チームを委ねるのが最も合理的だからだ。

しかし、ただでさえ極東の弱小国だ。そうそう良い人は来てくれない。アギーレやハリルホジッチクラスの指導者が来てもらえるだけでありがたいのだ。

それが今回の騒動で、「日本は最後まで仕事を全うさせてくれない国」というイメージが付いてしまうおそれがある。交渉の際にそれを理由にゴネられて、報酬を釣り上げられたりすることもあるかもしれない。

まだまだ発展途上の日本に優秀な監督・指導者が来てくれなくなれば、日本代表の未来はお先真っ暗である。

まとめ

ハリルホジッチ解任派の意見も全てが間違っているとは思わない。

ただ、続投と解任を天秤にかけた際に、解任のメリットがかなり大きくなければ、この時期に事を起こすべきではないのではないか。

今回の場合、そのメリットが殆ど見えてこない。

そうであれば、ハリルホジッチ体制のまま、W杯に臨むべきではなかったか?

いずれにしてもハリルホジッチは解任されてしまった。

西野新監督が日本代表を良い方向に導いてくれるのを願うばかりだ。

山田 龍也
この記事を書いた人
弁理士/ネーミングプロデューサー/テキスト職人。中小製造業によくある「良い商品なのに売れない」のお悩みをローテク製品の特許取得、知的財産(特許・商標)を活用したブランドづくり、商品名のネーミングで解決している。

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