はじめに
知的財産やものづくり、ブランドづくりに関するニュースの中からヤマダが独断と偏見でチョイスしたニュースをざっくり解説する「知財ニュースを弁理士が解説!」。
今週の話題は、「意匠法改正案」、「桐ヘッドフォン」、「益子焼の機能性土鍋」、「安藤百福」、「かかと付き2wayスリッパ」、「弁理士認知向上プロジェクト」などです!
知財ニュースを弁理士が解説!(2018年8月第3週)
(1)ものづくりに関するニュース
ものづくりに関するニュース、例えば、技術<特許・実用新案>、デザイン<意匠>、著作物、商品企画等に関するニュースをまとめました。
① 意匠法改正。ウェブサイトのレイアウトや店舗の内装や外観も保護される?
意匠、保護期間を5年延長へ ブランドも守りやすく|日本経済新聞
特許庁が意匠法の改正を検討しています。
ポイントはいくつかありますが、意匠登録できる対象を広げるというのが一つの目玉でしょう。
今回、新たに意匠登録の対象として検討されているのは、ウェブサイトのレイアウト、店舗の内装や外観です。
ヤマダが弁理士試験の受験生の頃は、意匠は物品と一体不可分なデザイン、市場に流通する動産のデザインというのが常識でした。ウェブサイトのレイアウトはディスプレイに表示されるだけで物品と一体不可分ではないし、店舗の内装や外観は不動産。今までの常識とは全く変わってしまうということです。
コメダ珈琲の店舗デザインを丸パクリしたマサキ珈琲の事件もありましたから、そういう模倣への対応も考えているのでしょう。
法律は生き物。時代とともに変わっていきます。時代が保護を求めるものに対応できるよう変化していくのです。
② 特注品?オンキヨー「桐ヘッドホン」
オンキヨーの「桐ヘッドホン」がついに製品化! 価格は30万円から|価格.comマガジン
オンキヨーが変わり種のヘッドホンを作りました。
素材として高級木材の「会津桐」を使い、内部に伝統技法の「綾杉彫り」を施したヘッドホンです。お値段はなんと30万円!
でもこのヘッドホン、単なる高級志向、成金趣味のヘッドホンではありません。「会津桐」は高級和楽器にも使われる響きの良い素材であり、「綾杉彫り」も和楽器で用いられる彫り構造。
オンキヨーも
「演奏者が目の前にいるかのような、生々しい音のヘッドホンをめざして開発した。ただ作りたいものを作った」
とコメントしています。
音にこだわる職人の姿勢を突き詰めた結果、このヘッドホンができたのです。
この商品単独で収益を得ることは難しいかもしれません。でも、話題を作り、オンキヨーの技術力をアピールする戦略商品と言えそうです。
③ 伝統工芸を使って時代に合った新しい商品を作る
技あり飯炊き土鍋・和紙の靴…売れる新世代の伝統工芸|NIKKEI STYLE
「峠の釜めし」の容器で有名な「つかもと」が伝統工芸・益子焼の技術を生かして今の時代に合った機能性の土鍋を作りました。
一合炊きで蓋が二重蓋。吹きこぼれがなく、簡単に美味しいごはんを炊けるようになっています。二重蓋がお米の計量カップと茶碗にもなるという小技も効いています(笑)
伝統工芸は後継者問題もあって衰退する一方…。それでも、伝統技術の良さに、現代生活に合った新しいアイデアを加えた商品を提案できれば生き残れるのです。
④ チキンラーメンの発明者・安藤百福さんの事業に対する考え方
日清創業者・安藤百福氏が、「47歳無一文」から人生逆転できたワケ|ビジネス+IT
「何か人の役に立つことはないかと周辺を見渡すと事業のヒントはいくらでも見つかった」
チキンラーメンの発明者で日清食品の創業者・安藤百福さんの言葉です。
新規事業がうまくいかない方は「人の役に立つか」という観点が欠けていないか、早急に確認する必要がありそうです。
10月から始まるNHKの朝の連ドラ「まんぷく」は、安藤さんと奥様の仁子さんをモデルとした物語です。安藤さんの発明者としての考え方や経営者としての思想が再び脚光を浴びるかもしれません。
⑤ ビジネスシューズとしても使えるスリッパ
【新製品】かかとの変化で靴にもスリッパにもなる「かかと付き2wayスリッパ」|文具のとびら
オフィス通販のカウネットがビジネスシューズとしても使えるスリッパを作りました。
子供の頃、「靴の踵を踏むのはやめなさい!」なんて怒られませんでしたか? この商品は踵を踏んでもいいんです。
通常時は踵を踏んでスリッパ、来客時は踵を引き上げてビジネスシューズになるという「かかと付き2wayスリッパ」です。簡単に思いつきそうに見えて、今までにはなかった商品ですね。面白いアイデアだと思います。
人間は楽をしたいズボラな生き物。こういう発想は意外にニーズがあるかもしれませんよ!
(2)弁理士に関するニュース
弁理士に関するニュースをまとめました。
① 弁理士認知向上プロジェクト?!
「弁理士」の認知度不足が、ビジネストラブルの一因にも!弁理士の認知アップを目指し、日本弁理士会が「弁理士認知向上プロジェクト」を発足|ニコニコニュース
日本弁理士会が弁理士の認知度アップのための特設ページを開設しました!
弁理士は他の士業さんと比べて認知度が低いですからねぇ。ヤマダも名刺を渡しているのに「弁護士(or 税理士)さんなんですね!」と言われることもしばしばです。ひどい時には「便利屋」さんと間違われることも…(嘆)
そういう意味では、弁理士会が弁理士の認知度アップを進めてくれるのは大歓迎です。が、このページに首を傾げている弁理士も多いようです。
「なんでモデルが外人なの?」
「事例にしている発明がマニアックすぎない?」
「誰に向かって発信しているの?」
弁理士会では認知度アップの一環として、島耕作のヒロカネプロダクションに頼んで「閃きの番人 弁理士ジョージの事件簿」という漫画を作らせたりもしています。
でもどこかずれている感じがしてなりません…。明らかに迷走しています。
ターゲットは誰なのか。そのターゲットにしてのバリューが何なのか。
よくよく考えて施策を打たないと認知度はアップできません(苦笑)
まとめ
今週も、ものづくりに携わる人のヒントになりそうなニュースを多く取り上げています。
誰かが悪さをしたという暗いニュースより、新しい物を創り出す、技術の進歩等の明るい話題に目を向けていきたいと思います!