知財ニュースを弁理士が解説!(2018年9月第3週)

目次

はじめに

今週の話題は、

● サバ缶
● 3D2Face顔シャワー
● くみかえノート
● 高級カラビナ
● ゴルフボール
● 田端プリンスホテル
● 金魚電話ボックス

などです!

知財ニュースを弁理士が解説!(2018年9月第3週)

知的財産やものづくり、ブランドづくりに関するニュースの中からヤマダが独断と偏見でチョイスしたニュースをざっくり解説する「知財ニュースを弁理士が解説!」。

● 技術<特許・実用新案>、デザイン<意匠>、著作物、商品企画等、ものづくりに関するニュース
● ブランド<商標>、不正競争等;ブランドづくりに関するニュース
● その他の気になったニュース

をまとめています。今週も行ってみましょう!

(1)強みを打ち出せば商品は売れる|商標、ブランドづくり

元記事:バカ売れ「サバ缶」で男の健康がグングン蘇る(2)缶詰のほうが栄養価が高い|Asagei plus

良い商品なのに、残念ながら日の目を見ない。サバ缶もそんな商品でした。以前は、「他の缶詰より安いから買う」というユーザーが多かったように思います。

でも、その時代時代で商品に要求される特性というのは変わっていきます。時代背景を捉えて、潜在顧客に対して的確なアピールをしていくことで商品が売れるようになります。

健康志向、働く女性の増加という時代背景。「肉より魚を食べたい。でも魚料理は面倒。」という潜在的な不満。

これらをうまく捉えることで、「食材としてのサバ缶」にスポットが当たり、「サバ缶ブーム」が起きたと言えます。

(2)ターゲットを絞る|特許、ものづくり

元記事:『3D2Face顔シャワー』世界初の顔と体を使い分けられる画期的なシャワーヘッドで快適生活|おためし新商品ナビ

ターゲットを絞ると、そのターゲットが商品に求めている特性をより具体的にイメージすることができます。ターゲッティングは新商品のアイデアを思いつくきっかけとなるのです。

男性の場合、シャワーの水圧が高い方が心地良く感じる人が多いでしょう。その方が刺激もあるし、「洗い流している」という感覚を持ちやすいですから。

しかし、ターゲットを女性に絞ると、「あまりに水圧が強いと肌トラブルにつながる」「お顔は優しく洗いたい」という女性特有の要望が出てきます。

ターゲットを絞り込むことで、「これは私のための商品だ!」と思ってもらえます。ファンやリピーターがつき、人気商品になりやすいのです。

(3)商品の使用シーンを絞り込む|ブランドづくり

元記事:アイデア創発する9マスの付箋、スマート文具「くみかえノート」を新発売|PR TIMES

ターゲットを絞る以外にも新商品のアイデアを発想する方法はあります。その一つが商品の使用シーンを絞り込むことです。

今や付箋はビジネスに必須のアイテムとなりました。自分の備忘のためのメモとして使ったり、ちょっとしたお礼を書く等、同僚とのコミュニケーションのツールとして使ったり。

「くみかえノート」は会議やアイデア出しというシーンに特化して開発されました。3×3=9個のマスを利用したマンダラート発想法はアイデアを発想する手法として知られています。マンダラート発想法に使いやすいように、予め、3×3=9個の付箋を配置した付箋ノートを作ったわけです。紙に書くより、付箋に書いた方が個々のアイデアをまとめたり、整理したりしやすいというメリットもありますからね。

自分の商品をユーザーがどんな使い方をしているかをリサーチしてみましょう。新たな商品のアイデアが浮かんでくるかもしれません。

(4)職人×デザイナーのコラボが付加価値の高い商品を創る|ものづくり

元記事:日本の精密加工技術で生まれたアルミ削り出しの高級カラビナ『CARABINER』はため息が出そうな美しさ|おためし新商品ナビ

新進気鋭のデザイナーが作り出すモダンでアーティスティックなデザイン。

「他人とは違うものを持ちたい」。そんなこだわりの人に受ける商品を作れそうです。ただ、そのような凝ったデザインは製造するのが難しいこともしばしば。それが原因で、商品化を断念するということにもなりかねません。

熟練の職人や最新技術であればそのデザインを具現化できる可能性があります。仮に製造コストが上がっても、希少価値があれば欲しがる人はいます。高いお金を出してでも手に入れたいという人も出てくるでしょう。

収益を上げるためには、単に「たくさん売る」というだけではなく、「付加価値が高いもの、利益率の高いものを売る」という発想も必要です。

(5)ユーザーに刺さるワードでアピールする|商標、ブランドづくり

元記事:ゴルフボールの凸凹は実は特許の塊だった/身のまわりのすごい技術|News Walker

商品を買ってもらうためには、買い手の心をくすぐるようなキラーワードを考えましょう。

ダイエット商品なら「運動は不要。飲むだけで痩せる」とか、化粧品なら「塗るだけで美白」とか、ゴルフ用品なら「非力なあなたでも飛距離アップ」とか。

人は楽して効果を得たい生き物です。もちろん嘘はダメですよ。でも、商品の効果の見せ方、商品が魅力的には見える方法は考える必要があるのです。

(6)安易なネーミング は莫大な損失を被る|商標、ブランドづくり

元記事:
プリンスホテルvs田端プリンスホテル、全面抗争がついに田端プリ敗北で決着|Buisiness Journal

どう見ても、田端プリンスに勝ち目がないと思われていたこの問題。

田端プリンス側は、「私の姓が『王』だから」とか、「他にも『プリンス』を名乗っているホテルはあるじゃないか」とか、言い訳をしていましたが、結局認められませんでした。

残念なことに、会社の名前、商品名、サービス名、ブランド名。商売に使う名前に気を使っていない人が多すぎます。

トラブルに巻き込まれないための防御策としては勿論、ブランドを作り、自分のビジネスを発展させていくためのツールとしても商標登録は一度考えてみた方がよいでしょう。

(7)裁判は伝家の宝刀。冷静な判断を|著作権

元記事:「金魚電話ボックス」巡り提訴 金魚の街、奈良・大和郡山の商店街に「著作権侵害」と美術家|産経WEST

以前から話題となっていた金魚電話ボックス問題。

後発側は著作権侵害を否定しつつも、トラブルに配慮して問題となっている電話ボックを撤去したのですが、ついに裁判沙汰になってしまいました。

先に作った人の立場に立てば、似たようなものが出てくれば文句を言いたくなる。それはわからなくはありません。

しかし、「似ている、似ていない」「パクった、パクっていない」というのは、我々、弁理士のような専門家でも意見が割れるほど、難しい問題です。一般の方が判断するのは難しいでしょう。

さらに、裁判では訴えた側が、相手に非があることを証拠をもって証明しなければいけません。相手に非があることを法律の条件に照らして立証する、それを裏付ける証拠を提出する。これはかなり難しいことなのです。

裁判には、お金も時間もかかります。訴えた側も訴えられた側も精神的に疲弊します。その場の感情で裁判を起こしてしまったために、自らがダメージを受けてしまうケースもあります。

交通事故でもそうですが、どんなトラブルでも相手が100%悪いということはレアケースです。相手の事情も考えられるくらいの余裕をもった方が結果的に物事はうまく進むものですよ。

金魚電話ボックスに関しては、以前、ブログに記事を書いています。最近、またアクセス数が増えてきました。こちらもどうぞ。

[blogcard url=”https://yamadatatsuya.com/archives/5477″]

まとめ

今週は既存の商品をどう売るか、売れる商品をどう作ったらよいか、という点にフォーカスした記事を多めに取り上げました。

もちろん、良い商品を作るのは大事です。でも、商品を売る、売れる商品を作る、という別の目線を持つと、ものづくりに対するスタンスが変わってきて、ビジネスの発展に繋がる可能性があります。ぜひ参考にしてみてください!

山田 龍也
この記事を書いた人
弁理士/ネーミングプロデューサー/テキスト職人。中小製造業によくある「良い商品なのに売れない」のお悩みをローテク製品の特許取得、知的財産(特許・商標)を活用したブランドづくり、商品名のネーミングで解決している。

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