長野五輪シンボルマークのデザイナー・篠塚正則さんに学ぶロゴマークの作り方

クロスリンク特許事務所(銀座・東銀座・新橋)・弁理士のヤマダ(@sweetsbenrishi)です。

目次

はじめに

弁理士会の継続研修で、長野五輪のシンボルマークをデザインしたグラフィックデザイナー・篠塚正則さんのお話を聴いてきました。

今日は一流デザイナーのお話からロゴマークの作り方を学んでみましょう!

長野五輪シンボルマークのデザイナー・篠塚正則さんに学ぶロゴマークの作り方

▲ ご講演中の篠塚正典さん(左)

グラフィックデザイナー・篠塚正典さん。

ロゴマークやパッケージデザインがご専門です。
企業のブランディングのためのデザインを得意としています。

代表作は長野五輪のエンブレム。
1000点以上の候補の中からコンペで選ばれたそうです。

他にも、東芝のPC「dynabook」のブランドロゴ、avexの25周年記念ロゴ、明治製菓のプロテインドリンク「ザバス」のパッケージ…。

実に様々な仕事を手がけていらっしゃいます。

以下、篠塚さんのお話の中から、ヤマダが印象に残った部分をピックアップします。

(1)リサーチを入念に行う

篠塚さんはロゴマークを作成する際、まずリサーチから始めるそうです。

貰える資料は全部貰い、企業ロゴであれば役員にインタビューをする。
その会社のポリシーや今後の方向性。
デザインを始める前に、ロゴの背景を入念にリサーチするわけです。

長野五輪の際は、

● 開催地の長野について、県の花から地元に伝わる伝承まで隈なく情報を集める。
● 今までの五輪シンボルマークのトレンドを追い、それらを分析する。

そんな綿密なリサーチを行っています。

こういう地道で入念なリサーチが説得力のあるロゴマークを作るわけです。

(2)右脳のイメージに左脳のロジックを加える

篠塚さんはロゴマークを作成する際、左脳(言語)と右脳(絵・イメージ)のバランスを重要視しているそうです。

ヤマダはデザイナーは右脳でデザインを創るというイメージを持っていました。
しかし、篠塚さんによれば、左右両方の脳で考えないとダメなんだそうです。

篠塚さんは「言語化」というプロセスを経てデザインを作っています。
「キーワードシステム」という手法です。

リサーチの結果を基に、思いつく言葉(絵ではない点に注意)を片っ端から書き出します。
そこで書き出す言葉の数は100以上にも及ぶそうです。
そこから、自分が一番言いたいこと(言葉)を選んでいきます。
そして、その言葉をベースにデザインのコンセプトを決めるわけです。

絵を描く際に、一旦、言語化するというプロセスを経る点が非常に興味深いですね。
意外にもイマジネーションに頼らず、ロジカルなプロセスを経てデザインが創られるんです。

篠塚さんは、

シンボルマークは究極のミニマリズム

と言っていました。

シンプルに力強いメッセージを伝えるためには、漠としたイメージだけでは不十分。
言語による裏付けが必要ということなのです。

因みに、長野五輪の際にチョイスしたワードは、雪、人の輪(和ではない)、花の3つ。
ここから、「雪の上に咲く花」というイメージを創り上げていったそうです。

(3)100%の共感を目指す

篠塚さんはロゴマークを作成する際、100%の共感を目指すそうです。

篠塚さんは、

良いデザインかどうかは見る人(ユーザー)が決める

と明言しています(ユーザーオリエンテッドデザイン)。

ユーザーは理由は分からなくても、良いデザインか悪いデザインかについては感じ取ることができるということです。
ユーザーのことを信頼し、その人達が腹に落ちるデザインを創ることに専念しているのです。

篠塚さんは、デザイナーと芸術家の違いについて、

芸術家は共感がゼロでも構わない。
しかし、デザイナーは少なくとも過半数の共感が必要だ。

と言っていました。

最後の最後まで妥協せず、デザインのブラッシュアップを続け、100%の共感を目指しているわけです。

セミナーの中で面白いものを見せてもらいました。

● 長野五輪シンボルマークの一次デザインと、ブラッシュアップ後の最終デザイン。
● とある一流企業の企業ロゴ(篠塚さんの創ったものではない)と、それを篠塚さんがリファインしたロゴ。

です。

これらを見比べて見ると、デザインのまとまり、インパクト、躍動感…。
印象が全く異なるのです。まるで別物。

使っているモチーフは全く同じものでもそれらの位置をmm単位で調整し、カーブの円弧の形状を微妙に変更し、フォントの太さやサイズを細やかにアジャストさせ…。

そういう地道な微調整を行っていくことで、万人が納得する素晴らしいデザインができあがるのです。

この対比は衝撃的でした。
まさに、「神は細部に宿る」ですね!

まとめ

● リサーチを入念に行う
● 右脳のイメージに左脳のロジックを加える
● 100%の共感を目指す

今日の記事でヤマダが皆さんに伝えたかったのは、ロゴマークを作るときにここまでのこだわりをもって作っていますか?ということです。

デザイナーに丸投げし、ちょっとかっこいいデザインができたからと、そこで満足してませんか?ということ。

自分たちが表現したいものは何なのかをデザイナーにしっかり伝える。
納品されたデザインでそれがきちんと表現できているかどうかを確認する。
デザイナーとしっかりディスカッションをする。

そんなことに気を使うだけでも、できあがるロゴマークのクオリティは格段に変わってくると思いますよ!

このセミナーについてはインスタグラムにも投稿しています。
こちらも覗いてみてくださいね!

https://www.instagram.com/p/BuXp7Rugcb8/
山田 龍也
この記事を書いた人
弁理士/ネーミングプロデューサー/テキスト職人。中小製造業によくある「良い商品なのに売れない」のお悩みをローテク製品の特許取得、知的財産(特許・商標)を活用したブランドづくり、商品名のネーミングで解決している。

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