実用新案権より意匠権を取った方が良いワケ|実用新案権と意匠権の違い

目次

はじめに

今日は「お金をかけたくないけど、知的財産権を取りたい!」
そんな欲張りなあなたにおススメの意匠制度についてお話しします。

実用新案権より意匠権を取った方が良いワケ|実用新案権と意匠権の違い

(1)安さが魅力の実用新案制度は使える制度なのか

「特許を出すほどお金がないから、実用新案でお願いします!」

そんな風に依頼をしてくるお客様がいらっしゃいます。
簡単なアイデアを特許より安く登録できるというイメージがあって、実用新案の出願を希望する方も少なくないのです。

でもそんな時、私はこう言うようにしています。

「実用新案はやめておきましょう」

主婦が洗濯機のゴミ取りネットに関する実用新案権を取って、3億円近い収入を得たと話題になったことがありました。
でも、それはかなり昔の話です。

今の実用新案制度は、アイデアの中身について審査をしない「無審査登録制度」になっています。
特許庁は出願書類の体裁をチェックする形式的な審査だけを行って、ある程度の体裁が整っていれば、片っ端から登録してしまいます。

こんな制度ですから、実用新案権が与えられているからといって、それが素晴らしいアイデアであるとは限らないし、特許庁からお墨付きをもらったことにもならないわけです。

また、内容を審査した上で与えられる特許権や意匠権とは違って、実用新案権には権利を行使する際に様々な制約があります。

このように実用新案制度は、あまり使い勝手のよい制度ではありません。
私は、実用新案法が抜本的に改正されない限り、お客様に実用新案を積極的にお勧めすることはないと思います。

(2)意匠制度をうまく使おう

「実用新案がダメなのはわかったけど、やっぱり特許は高いよ…。」

そんなあなたにおススメしたいのが意匠です。

意匠制度は物のデザインを登録する制度です。
ただ、デザインと言っても工業製品(量産する物)に関するデザインです。
例えば、洋服、腕時計、アクセサリーのような高いデザイン性を求められる物品ばかりが対象となるわけではありません。

意匠法施行規則の別表第一(第七条関係)(*1)には、意匠登録の対象となる物品が例示されています。

「一 製造食品及び嗜好品」という区分には「ソーセージ、アイスクリーム、かまぼこ…」、「三十八 配電又は制御機械器具、回転電気機械等」という区分には「自動電圧調整器、電力用変圧器、誘導電圧調整器…」など、一見、デザインとは無縁の物品が挙げられています。

実に様々な物品が意匠登録の対象になっているということです。

意匠制度は、実用新案制度のように技術的なアイデアを登録する制度ではありません。

しかし、意匠制度は実用新案制度と同じように、物の形状について登録することができる制度です。
考え方によっては、物の形状に関する技術的なアイデアを物の形状に関するデザインとして登録することができる場合もあるのです。

例えば、特殊な溝形状の自動車タイヤを新たに開発したとしましょう。

このタイヤの「スリップしにくい」という点(技術的効果)に着目すれば、実用新案登録の対象となり得ます。
でも、「溝のパターンが斬新でカッコイイ!」という点(デザイン性)に着目するならば、意匠登録の対象ともなり得るのです。

頭を柔らかくして、物を多面的に見ることが大事です。
そのような考え方が知財戦略の幅を広げることにつながります。

(3)特許、実用新案、意匠の違い

下の表に、特許、実用新案、意匠の違いをざっくりまとめてみました。

この表を見ると、意匠は実用新案と対象が似通っていることがわかりますね。
私は、意匠登録は実用新案登録の代わりになり得ると考えています。

また、意匠は、

(1)実用新案とは違い、きちんと内容を審査された上で知的財産権が与えられる
(2)実用新案より、権利期間が長い
(3)特許より、審査期間が短い(早く権利を取れる)
(4)特許や実用新案より、出願コストが安い

などのメリットがあります。

低コストで、きちん内容を審査された知的財産権を取りたいという方は意匠登録を考えてみてはいかがでしょうか。

但し、意匠制度は特許制度や実用新案制度と根本的に違う制度です。
出願の仕方にはコツが必要です。
意匠制度を使う際は、弁理士さんとよく相談をしてくださいね。

まとめ

1.実用新案制度は使い勝手が悪い制度だから使わない方がいい。
2.意匠登録は実用新案登録の代わりになり得る。
3.低コストで審査を経た知的財産権を取りたい人は意匠登録を考えてみるべし。

参考サイト

(*1)e-Gov法令検索 意匠法施行規則 別表第一(第七条関係)

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山田 龍也
この記事を書いた人
弁理士/ネーミングプロデューサー/テキスト職人。中小製造業によくある「良い商品なのに売れない」のお悩みをローテク製品の特許取得、知的財産(特許・商標)を活用したブランドづくり、商品名のネーミングで解決している。

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