ネーミングセンスを言い訳にしない!

商標登録の相談を受けていて感じること。

それは、

「このネーミング、ちゃんと考えました?」

ということです。

折角、お金をかけて商標登録しようというのに、ホントにひどいネーミングが多いんですよ(苦笑)

商品名のネーミングというのはその商品の顔であり、名刺であり、自己紹介のプレゼンであり、商品の第一印象を決める大事な要素です。商品名次第で商品の売れ行きが変わったりもします。それなのに、あまり考えていないって、どういうことですか?!

それで、私がネーミングのまずさを指摘すると、返ってくる言葉は判で押したように、

「いやぁ。ネーミングセンスがなくて…(ぼそっ)」

違いますねぇ。センスがないのが問題なのではなくて、センスがないのに思いつきでネーミングをしているのが問題なんです。

もちろん、センスはあった方がいいですよ。でも、私が見る限り、こういう人たちはセンスを必要とするそのずーっと手前の段階で躓いているんですよ。ネーミングの勉強をしろとは言いません。ただ、ネーミングや商品の伝え方に関心は持って欲しいなと思います。

自称センスがない人は十中八九、独りよがりのネーミングをしています。他の人のネーミングに関心がないんです。まずは他の人がどんなネーミングをしているのか、商品をどんな言葉で伝えようとしているのか、それを観察してみることをおすすめします。

市場には自分たちの商品と用途や機能がかぶる競合商品がゴロゴロ転がっていますよね。それらの競合商品のネーミングを一覧表にしてみてください。そうすると、各社が何を売りにし、商品のどの部分を訴えているかが見えてくるはずです。

これらの商品名の中に、自分たちの商品のネーミングを置いてみたときに、きちんと差別化できていますか?これを観察・分析してみましょう。商品の特徴は自分の商品だけをじっと見つめていても見えてこないものです。競合商品と並べてみて、比較することで初めて見えてくるんです。

商品の伝え方という点に着目すると、身の周りには良いお手本が山ほどあります。例えば、電車の中吊り広告。プロのライターが練り上げたキャッチコピーには商品を伝えるコツが詰まっていますよね。こういうものからエッセンスを吸収するのもネーミング脳を鍛える方法として有効です。

写真はSUNTORYの「THE STRONG」の中吊り広告です。最近流行りの強炭酸水の広告ですね。

「強炭酸は泡で選ぶ」、「バキバキ強刺激」、「ノドに激泡!」

刺激の強さを前面に押し出しています。そして、その刺激の秘密は泡だぜ、と伝えているんですね。硬くて壊れにくい泡がガツガツと喉に当たっていくようなイメージ。刺激を欲している人は思わず買ってしまいそうです。

デザインもモノトーンをベースにして、その中に泡粒を表現。シャープなイメージに仕上がっています。

甘みなんか入れないぜ、炭酸の強さ一本で勝負しているんだぜ

という担当者の声が聞こえてきそうです。この中吊りのように、商品を伝えるときは商品の「イメージ」を読み手にどう届けるかがポイントです。

一方、ネーミングが下手な人は商品の機能や用途の「説明」に囚われてしまう傾向があります。でも、聞く方からすると、説明って退屈なんですよ。聞きたくない(笑)

だから、その商品の売りや特徴、他社との違いを「イメージ」で伝える、そのためにはどんな言葉を使ったらよいか?ということを意識してみると良いと思います。この広告でも、刺激の強さを「バキバキ」とか、「激泡」という言葉でイメージ化して伝えていますよね。単なる説明にはなっていないんです。

「ネーミングセンスがない」とお嘆きのあなた。センスの無さを言い訳にせず、他の人が作ったネーミングをたくさん見ましょう。「これ、いいな!」と思ったネーミングについては、そのネーミングのどこに惹かれたのかを考えてみましょう。こんな地道な取り組みがネーミング力を上げてくれると思っています。

山田 龍也
この記事を書いた人
弁理士/ネーミングプロデューサー/テキスト職人。中小製造業によくある「良い商品なのに売れない」のお悩みをローテク製品の特許取得、知的財産(特許・商標)を活用したブランドづくり、商品名のネーミングで解決している。

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