クロスリンク特許事務所(銀座・東銀座・新橋)・弁理士のヤマダ(@sweetsbenrishi)です。
はじめに
商標は「会社」や「商品・サービス」の名称を表すものばかりではありません。
例えば、ユニクロの「ヒートテック」。
「ヒートテック」はユニクロが販売する衣服の商品名ではなく、ユニクロと東レが共同開発した吸湿発熱繊維の名称です。言い換えれば、「技術」を表す商標、「技術ブランド」です。
さて、この「技術ブランド」。一体、どんなメリットがあるんでしょうか?
今日は、「技術」をブランド化する手法、「技術ブランディング」についてお話しします。
意外に身近な「技術ブランド」
「技術ブランド」は、「インブランド」、「成分ブランド」、「要素ブランド」とも言われます。あまり聞きなれない言葉ですが、意外にも皆さんの周りには「技術ブランド」が溢れています。
例えば、
●「ゴアテックス」(防水・透湿繊維)
●「プラズマクラスター」(プラズマクラスターイオン発生技術)
●「ナノイー」(ナノサイズ微粒子イオン発生技術)
●「intel inside(インテル、入ってる!)」(コンピュータプロセッサ<CPU>)
●「ブルートゥース」(近距離無線通信)
等も「技術ブランド」です。
技術に詳しくない人でも、よく耳にする「技術ブランド」がたくさんあるんです!
「技術ブランド」のメリットは、目に見えない技術を「見える化」すること
「技術ブランド」の対象は最終製品そのものではありません。最終製品に使われている材料や部品、プロセスなどの技術です。
でも、これらの技術は最終製品からは直接、目に見えません。いくら素晴らしい技術でも、その技術を使っていることを伝えなければ、お客様にはその技術の価値がわかりませんよね?
だから、技術に名前やキャッチフレーズを付けて、技術を「見える化」するのです。
例えば、服に「ヒートテック」のラベルを付ける(シンボルの知覚)。そして、「ヒートテック」がどんな技術で、どのような効果があるのかを説明する(メリットの訴求)。
こうすることによって、お客様は「ユニクロの服だから暖かい」のではなく、「ヒートテックだから暖かい」ということを初めて理解するわけです。
「技術ブランド」によって技術自体の価値を認めてもらえると、お客様は最終製品のメーカーがどこであるかよりも、その技術が使われているか否かを基準に製品を選び、買うようになります。
例えば、インテルのプロセッサ(CPU)がいい例です。お客様は「intel inside」の表示があれば、「このパソコンには高性能のCPUが使われている」と認識します。だから、どこのメーカーであっても、そのパソコンを信頼して買うわけです。
「技術ブランド」は技術の水平展開にも有効
「技術ブランド」は、その会社が固有技術・得意技術を持っていることの象徴です。
技術に対する信頼があるので、異業種・異分野の企業から提携を持ちかけられるケースも出てくるでしょう。そうすれば、今までその技術が使われていなかった分野に事業を水平展開し、ビジネスの規模を拡大するチャンスが増えてくるわけです。
ドラマ「下町ロケット」では、ロケットエンジンのバルブを作っていた佃製作所がロケットとは全く異なる医療分野に参入し、人工心臓弁「ガウディ」の開発に取り組むという印象的なシーンがありました。
その時の佃製作所のキャッチフレーズが「ロケット品質」でした。
ロケットエンジンにも使える程の精密な加工技術。それが佃製作所の「技術ブランド」となり、異業種への参入に繋がったのです。
「技術ブランディング」は中小企業にも有効な手法
「技術ブランディング」は個々の製品を束ねる、その会社の固有技術についてブランド化を図っていく手法です。
このような手法は、個々の製品について一つ一つブランド化を図るよりも、低コストで大きな効果を得ることができるというメリットがあります。資金力に乏しい中小企業にも有効な手法と言えるでしょう。
あなたの会社に「これをやらせたら世界一!」といった得意技術、職人的な技術はありませんか?
もしあるならば、その技術に名称やキャッチフレーズを付けて、技術を「見える化」しましょう。
その技術がお客様に与えるメリットをアピールしましょう。
そして、技術に対する信頼を築いていきましょう。
その結果として「技術ブランド」が確立されれば、同業他社との差別化を図ることができ、競争を優位に進めることができるはずです。
オススメの記事
技術ブランディングに関する記事はこちら。
[blogcard url=”https://yamadatatsuya.com/archives/1612″]