クロスリンク特許事務所(銀座・東銀座・新橋)のヤマダです。
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はじめに
タイヤメーカーのブリヂストンが中国メーカーと争っていた裁判で勝訴しました(確定)。この裁判で問題になったのは、スタッドレスタイヤの溝形状です。そして、今回、ブリヂストンが使ったアイテムは特許権ではなく、意匠権でした。
今日は「意匠権と特許権の違い」についてお話しします。
問題になったのはタイヤ溝に関する意匠権
12/9付でブリジストンが中国のタイヤメーカーに対する意匠権侵害訴訟で勝訴が確定した旨のニュースが配信されました(*1,*2)。
ブリヂストンの意匠権はスタッドレスタイヤに関するもので、特定のトレッドパターン(溝形状)を有する点に特徴があります。この裁判では中国メーカーが製造販売するタイヤはブリヂストンの意匠権を侵害しているものと判断されました。
その結果、中国メーカーには
● そのタイヤの製造販売の中止
● 損害賠償の支払い
が命じられたのです。
意匠権と特許権の違い(権利の対象の違い)
今回、裁判の対象となっている権利は特許権ではなく、意匠権です。
意匠権は、簡単に言うと、意匠権は特定のデザインが施された工業製品(量産品)の製造・販売を独占することができる権利です。
意匠権を持っていることで、そのデザインを真似した模倣品や類似品が市場に出回ることを防止することができるわけです。
意匠権は工業製品の「見た目(外観)」が対象となります。デザインのアイデアやコンセプトではなく、「見た目」です。このため、意匠権の権利書となる出願書類(申請書類)は図面や写真などで表されています。
これに対し、特許権は一定の技術的効果を発揮するアイデアの実施(製品の製造・販売・使用などを含みます)を独占することができる権利です。
特許権は技術的なアイデア(発明)が対象となります。従って、「人間の目に見えないもの」でも構いません(例えば、化学物質の構造など)。このため、特許権の権利書となる出願書類(申請書類)は文章で記載されています。
まとめ
製品の形状は意匠権の対象にも特許権の対象にもなり得ます。今回のタイヤに関して言えば、
● 溝形状をデザインとして捉えるなら意匠権の対象(見た目がカッコイイ等)
● 溝形状を技術として捉えるなら特許権の対象(スリップしにくい、水はけがよい等)
となります。どちらで出願(申請)しても良いわけです。
意匠権は「見た目」であるために、特許権と比べると、
● 審査の期間が短くて済み、早く権利を取れる(半年から1年程度)
● 模倣品や類似品が出回った時に権利侵害かどうかの判断がし易い(市場に出回っている製品を見ればわかる。税関での輸入差止も比較的容易)
という特徴があります。
一方、「見た目」が対象であるために、少しデザインを変更されただけで意匠権の範囲から外れてしまう(意匠権侵害だと言えなくなる)ケースもあるので注意が必要です。
意匠の出願(申請)には色々な方法があり、方法を間違えると適切な効果を得られません。専門家である弁理士に相談することをお勧めします。
参考サイト
(*1)ブリヂストン、中国のタイヤメーカーの意匠権侵害訴訟で勝訴が確定|レスポンス
[blogcard url=”http://response.jp/article/2016/12/09/286776.html”]
(*2)三角社との意匠権侵害訴訟 中国最高人民法院で当社勝訴が確定|ブリヂストン公式HP ニュースリリース
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