差別化戦略の類型・そのメリットと事例(戦略⑤:こだわり機能で差別化)

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はじめに

下記の記事の中で紹介したヤマダ式「7つの差別化戦略」。

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今日は、この「7つの差別化戦略」の中から「戦略⑤:こだわり機能で差別化」のメリットと事例を紹介したいと思います。 

「戦略⑤:こだわり機能で差別化」のメリット

「こだわり機能で差別化」は、商品の中の1つの機能を極限まで高めることによって、商品を差別化する戦略です。

「こだわり機能で差別化」では、

  • 単機能だけど 、その機能が極めて高い商品
  • ごく一部の人に熱狂的に支持される、優れた機能を持っている商品

を提供することで、商品を差別化します。

ターゲットは、こだわり人間、玄人、マニアです。

「こだわり機能で差別化」は、

  • 大企業がビジネスを展開しにくいような狭いターゲットを設定し、自分だけの市場を形成することができる(差別化集中戦略)
  • 固有の技術、得意技術を持っている企業であれば、その技術を横展開(用途展開)することによって、機能的に突出した商品を作ることができる可能性がある

というメリットがあり、中小企業にも向いている戦略であると言えます。

また、

  • コアなファン、リピーターを作ることができる

というメリットもあります。

その一方で、

  • 他の商品と比べてその機能が突き抜けていないとアピールできない
  • ターゲットにその機能を求められていなければ全く売れない

という点には注意が必要です。

【事例5-1】「ザ・トースター」(バルミューダ)

商品名「ザ・トースター」
キャッチフレーズ「最高の香りと食感を実現する感動のトースター」

引用元:https://www.balmuda.com/jp/toaster/

最初の事例は、バルミューダの「ザ・トースター」です。

「ザ・トースター」は、

  • スチーム加熱とヒーター加熱を組み合わせたこと
  • プログラムによる温度制御でヒーター加熱を行うこと

によって、「誰でも簡単に、驚くほどおいしいトーストを作ることができる」というのを売りにしています。

トースト、チーズトースト、フランスパン、クロワッサン…。
どんなパンでも最高の食感に焼き上げるのです。

Facebookのタイムラインを見ていると、一定の周期でこの「ザ・トースター」を絶賛する方が現れます(笑)
まさにパン好き、パンマニアのためのトースターです。

「ザ・トースター」は、

  • トースターの機能を「パンを焼く」という一つの機能に特化したこと
  • その機能をマニアが満足するレベルまで高めたこと

によって差別化に成功しています。

【事例5-2】「掃除機」(ダイソン)

キャッチフレーズ 「ダイソン。吸引力の変わらない、ただひとつの掃除機。」
(以前のキャッチフレーズ。今はキャッチフレーズが変わっています)

引用元:http://www.dyson.co.jp/dyson-vacuums.aspx

2番目の事例はダイソンの掃除機です。

ダイソンはサイクロン技術の本家本元です。

サイクロン技術で塵を分離しながら吸い取るため、掃除を続けても吸引力が落ちません。
従来の掃除機のようにフィルタが詰まって吸引力が落ちるということがないのです。

即ち、ダイソンの掃除機の「こだわり機能」はサイクロン技術、吸引力であり、これらによって商品を差別化しているということです。
キャッチフレーズを見ても「吸引力」という点にかけては絶対に他社には負けないというプライドが感じられますよね。

さらに、ダイソンの掃除機は近未来的で特徴的なデザインを採用しています。
掃除機売り場にたくさんの掃除機が並んでいても、ダイソンの掃除機はすぐに見つけることができるくらい特徴的です。

また、ダイソンの掃除機はケースの部分を透明にし(いわゆる「スケルトン」)、サイクロン機能の一部を見せる構造にしています。

そう。ダイソンの掃除機は、「戦略②:デザインで差別化」、「戦略③:形状+機能で差別化」も使っているということです。

ダイソンの掃除機は、あらゆる戦略を駆使して差別化を図った「差別化のお手本」ともいうべき商品なのです。

まとめ

「こだわり機能で差別化」は、

  • 狭いターゲットを設定し、自分だけの市場を形成することができる(差別化集中戦略)
  • 固有の技術、得意技術を持つ企業が取り組みやすい
  • コアなファン、リピーターを作ることができる

というメリットがあります。
ぜひ取り組んでみてください!

山田 龍也
この記事を書いた人
弁理士/ネーミングプロデューサー/テキスト職人。中小製造業によくある「良い商品なのに売れない」のお悩みをローテク製品の特許取得、知的財産(特許・商標)を活用したブランドづくり、商品名のネーミングで解決している。

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