はじめに
私の周りでも、自分の文章を発信する人が増えてきました。webサイト、ブログ、Facebook、Twitter…。様々な媒体に文章が発信されています。
でも、残念なことに殆どの文章は読んでもらえません。文章力やセンスがないから? 私はそうじゃないと思いますねぇ…。
今日は一瞬にして読みやすい文章を作る方法についてお話しします。
実は弁理士は文章のスペシャリスト
弁理士といえば特許。特許といえば技術。技術といえば理系。実際、理系の人が多い弁理士ですが、意外にも文章には縁が深いのです。
まずは弁理士試験。
弁理士試験には論文科目があります。特許・実用新案法2時間、意匠法1.5時間、商標法1.5時間。1日5時間、論文を書きまくって合格点をもらえた人。それが弁理士です。
そして特許実務。
複雑で高度な最先端技術の内容を正確に、そしてわかりやすく書面に起こす。それが弁理士の仕事です。
理系の人は文章が苦手なイメージがあります。でも、弁理士は日々、文章に触れている、文章のスペシャリストなんです。
読み手を意識しない文章は読まれない
そんな弁理士の端くれ、ヤマダが様々な文章を見ていて思うのは、「読み手を意識していない文章が多いなぁ。」ということ。自分の文章を発信するのに一杯一杯で、読み手がその文章をどう受け取るか、というところまで気を配れていないんでしょうね。
友達に読んでもらえば満足というなら、それでも全く問題はありません。でもね…。情報発信をするということは、自分の意見を表明して、沢山の人に読んでもらって、世の中に何某かの影響力を及ぼしたいからじゃないんですか?
そうであれば、「読み手を意識する」のは必要最低限の条件だと思います。
「ベタ文」は一瞬にして読み手の戦闘能力を奪う
読み手を意識していない文章の典型が「ベタ文」です。
文字がぎっしり詰まっていて、真っ黒いブロックが目の中にドカーンと飛び込んでくる。文字の絨毯爆撃。無差別に文字の爆弾を放り込んでくるテロ行為。これはもう「文字テロ」ですよ(苦笑)
「ベタ文」は読み手に強烈なストレスを与え、一瞬にして読み手の戦闘能力を奪います。内容云々ではなく、その見た目だけで読む気がしなくなってしまうんです。
沢山の人に読んで欲しいのであれば、今すぐ「ベタ文」をやめることをお勧めします。
文章に隙間を空けろ!
「ベタ文」を読みやすくするのは意外に簡単です。文章に隙間を作ればいいんです。
弁理士試験の受験生だった頃、予備校の講師の先生はこんな事を言っていました。
「試験委員の先生方は真夏の暑い時期に缶詰になって沢山の論文を採点している。文章に隙間を空けろ! 風通しのいい、爽やかな論文を書け!」
論文の読み手は試験委員の先生方です。「読み手を意識しろ」と言っているわけですね(笑)
「改行」と「ブロック化」で文章の隙間を増やす
文章の隙間を増やすのに、大した手間はかかりません。文章の中身はそのままで、形式だけ変えればいいからです。
方法としては、「改行」と「ブロック化」があります。
ちょっと実験してみましょう。
「文章の隙間」の目安として「空隙率」という物差しを考えてみました。簡単に言うと、文章の全文字中に占めるスペースの割合です。
● X:文章の最初の文字から最後の文字の間にあるスペース数
● Y:文章中の文字数+スペース数X
● 空隙率(%)=(X/Y)×100
先日、事務所のブログに、映画「この世界の片隅に」のクラウドファンディングに関する記事を書きました。そこから文章を抜き出して検証してみます。
ベタ文
まずはベタ文から。
214字中、スペースは0字。空隙率0%。かなり暑苦しい文章ですね。あまり読みたいとは思いません(苦笑)
改行
次に、改行を入れてみます。改行をすると、文章の末尾に隙間を作れます。
219字中、スペースは5字。空隙率2%。少し読みやすくなりました。それでも文章全体が文字の塊として目の中に飛び込んでくる感じが否めません。
ブロック化
更に、文章をブロック化してみます。ブロック化すると、ブロックとブロックの間に空行ができるので、一気に隙間が増えます。
259字中、スペースは45字。空隙率は17%です。大分、風通しが良くなって、読みやすくなりました。
ブロック化+改行
ダメ押しで、改行を入れてみます。
283字中、スペースは69字。空隙率は24%です。ブロックの中にも隙間ができました。一文一文が把握しやすくなった感じがします。但し、改行を増やしすぎると、却って読みにくくなる場合もあるので、使いすぎには要注意です。
200字程度の短い文章でも「改行」と「ブロック化」で読みやすさが格段に変わることがわかりました。特に「ブロック化」の効果が大きいですね。長い文章になれば、更に効果が発揮されるはずです。
このように、「改行」と「ブロック化」で文章に隙間を作ることができ、文章力やセンスがなくても読みやすい文章を作ることができるのです。
まとめ
● 読み手を意識しない「ベタ文」は読まれない
● 文章に隙間を空けることで、文章が読みやすくなる
● 「改行」と「ブロック化」で文章に隙間を空けることができる
参考サイト
「映画『この世界の片隅に』はクラウドファンディングで何を得たのか?」
(ブログ「知財ベイビーステップ」)
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