エステー鈴木喬会長に学ぶ 中小企業の生き残り戦略(1)|市場選びの鉄則

目次

はじめに

大企業と中小企業では経営資源(資本力やマンパワー)に圧倒的な差があります。
大企業と同じやり方をしていたら、中小企業は勝てないどころか、生き残ることすら難しいでしょう。

今日は「ショ~シュ~リキ~♪」でお馴染み、エステーの鈴木会長のお話からモノづくり系中小企業の生き残り戦略を探ってみたいと思います。

小さな中堅企業でも勝てる戦略。市場選びの鉄則。市場の「3ない」

とあるインタビュー記事で、鈴木会長が「小さな中堅企業でも勝てる戦略」について語っていました(*1)。この記事を読むと、鈴木会長の「市場に対する考え方」の鉄則が浮かび上がってきます。

  • マスプロダクト(大量生産品)に手を出さない
  • 成長市場に参入しない
  • 無闇に市場を拡大しない

いわば、市場の「3ない」です。

マスプロダクト(大量生産品)に手を出さない

鈴木会長は、

洗剤やシャンプーなどの市場には絶対に参入しない。
洗剤やシャンプーは、大量生産大量販売の商品だ。そういう商品は、巨大企業が絶対に勝つ。

と語っています。

大量生産品は大企業が最も得意とする分野です。
経営資源を活かして商品を大量生産をし、商品の価格を下げ、物量戦を仕掛けてきます。
これにまともに付き合ってしまったら、生産能力に劣る中小企業では太刀打ちできません。

エステーは日用品の中でも洗剤やシャンプーのような大量生産品に手を出していません。
例えば、消臭剤の「消臭力」、防虫剤の「ムシューダ」、脱臭剤の「脱臭炭」等、ニッチな市場で勝負しています。

また、鈴木会長は、

わが社がこの事業領域でやっているのは、成熟市場だからだ。
誰もが、「もうこれ以上パンパンになって発展しないよ」と思っているところが一番好きだし、実は美味しい。

とも語っています。

日用品のような成熟市場の中にある、ニッチな領域を見つけ、そこで勝負する。
これが、P&G、花王等、巨大企業が立ち並ぶ日用品分野で生き残ってきたエステーの戦略なのです。

成長市場に参入しない

鈴木会長は、例えばIT分野のような、新しく、成長中の分野・市場には参入しないと決めているようです。

プレイヤーが多く、技術革新のテンポも速いからいつ寝首を掻かれるか分かったものじゃない。

から、だそうです。

事業リスクが大きいんでしょうね。
注目されている市場だから、参入してくる企業も多い。
新しい分野だから、技術が進歩するスピードも速い。

せっかく市場を開拓しても、後から参入してきた企業にあっという間に市場を奪われたり。
苦労して開発した商品が技術の確信によって一気に陳腐化したり。

流動的な要素が大きい成長市場ではなく、自分たちがよく知った成熟市場の中に自分の居場所を作っていくというのがエステーの戦略と言えそうです。

無闇に市場を拡大しない

鈴木会長は、

大事なのは、強い競合が入ってくる前に寸止めで拡大を止めることだ。
マーケットのサイズが100億円を超えると、大手も注目するし、参入を検討するようになる。

と語っています。

大企業は投資に見合うだけの収益を挙げられない事業には参入しません。
大企業は小さな市場、ニッチな分野には参入するメリットがないのです。
だから、まだまだ市場の成長が望める段階でも「寸止め」して、小さな市場、ニッチな分野で勝負しろと言っているわけです。

大手が参入してこないように身を隠しながら、小さな市場、ニッチな分野でNo.1を取るというのがエステーの戦略なのです。

まとめ

小さな中堅企業でも勝てる戦略、市場選びの鉄則は、市場の「3ない」です。

  • マスプロダクト(大量生産品)に手を出さない
  • 成長市場に参入しない
  • 無闇に市場を拡大しない

この3つはモノづくり系中小企業の生き残り戦略として重要です。

参考記事

(*1)企業が生き残る必勝不敗の『弱くても勝てる方法』|ダイヤモンド・オンライン

ダイヤモンド・オンライン
企業が生き残る必勝不敗の「弱くても勝てる方法」 「消臭力」や「脱臭炭」「ムシューダ」などのユニークな商品を連発するエステー。その開発と販売をリードしてきたのが鈴木喬会長だ。P&Gや花王などの巨人たちが割拠する日...
山田 龍也
この記事を書いた人
弁理士/ネーミングプロデューサー/テキスト職人。中小製造業によくある「良い商品なのに売れない」のお悩みをローテク製品の特許取得、知的財産(特許・商標)を活用したブランドづくり、商品名のネーミングで解決している。

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