MFクラウド パートナーサミット2017|税理士・会計士に見る士業の未来

目次

はじめに

中小企業専門・クロスリンク特許事務所(東京都中央区銀座)所長、弁理士の山田龍也(@sweetsbenrishi)です。

この記事は、「IT(情報技術)」のカテゴリーに属する記事です。
現代のビジネスとは切っても切れないIT(情報技術)やAI(人工知能)をテーマにしています。

今回は、経理・会計ソリューションでおなじみのマネーフォワードさんが主催する「MFクラウドパートナーサミット2017」というイベントを紹介します。

このイベントで、士業の未来像、これからの士業ビジネスが見えてきましたよ!

MFクラウド パートナーサミット2017|税理士・会計士に見る士業の未来

【1】MFクラウド パートナーサミット2017の意義

このイベントのテーマは「第四次産業革命が巻き起こす士業のイノベーション」。

「士業の」と銘打っていますが、経理・会計ソリューションの会社が主催するイベントです。
普通に考えれば、ここで言う「士業」は税理士さん、会計士さんでしょう。
実際、受付の方にお伺いしたところ、参加者の8割以上が税理士・会計士。
司法書士と行政書士が少々。
弁理士の参加者は他にはいないだろうというお話でした。

では、なぜヤマダが一見、場違いなこのイベントに参加したのか。
理由はこの2つです。

(1)税理士・会計士の声から士業ビジネスの未来を予測する

MFクラウドやFreee等クラウド会計の仕組みの一般化、フィンテック時代の到来。
士業の中で最も環境が激変しているのが、税理士・会計士業界ではないでしょうか。
この波はいずれ、弁理士をはじめ他士業にも波及してきます。

税理士さん、会計士さんの生の声を聴くことで、これからの士業ビジネスの未来を予測できるのではないかと考えました。

(2)IT・AIによる業務効率改善のヒントを探す

税理士さん、会計士さんはクラウド会計の導入等で、士業の中ではIT利用の先頭を走っているように見えます。

ITツールやAI、業務効率改善の考え方等、弁理士業務の効率改善に役立つヒントが得られるのではないかと考えました。

【2】大規模事務所、急成長事務所が重視している取り組み

このイベントでは、大規模事務所、急成長事務所の先生方が、事務所における様々な取り組み、事務所運営の考え方を披露していました。

目についた取り組みをいくつか紹介します。

(1)目先ではなく、未来を見る

従来のシステムを捨てて、新しいシステムを導入するのにはリスクが伴います。
導入当初は一時的に業務効率も落ちるでしょう。
それでも、未来を見据えた時にその流れが不可避ならば、トップが腹をくくり、他の事務所に先んじて導入するしかないということです。

ある先生は事務所でクラウド会計の仕組みを導入しようとしたら、所員全員の猛反対にあったそうです。全員です(笑)。
その時、その先生は所員全員をクラウド会計、フィンテックのイベントに参加させたと話していました。

自分独りの思いつきではない、そういう時代が近づいているのだ、ということを所員に肌で実感させたわけです。

(2)本業以外の業務で差別化する

クラウド会計の仕組みが導入されると、銀行やクレジットカードでの決済は自動的にシステムに同期されます。
だから、従来のような記帳代行の業務が減っていくのは必然です。
そこに顧客バリューはないのです。

ある先生は「税理士が税のことしかできないのでは仕事にならない」と言っていました。
経営に関するマネジメントやアドバイス、クラウド導入等、本業以外の部分で差別化を図っているという先生もいました。

本業以外の得意業務を持つことで、仮に本業が縮小していったとしてもビジネスはできるし、生き残っていけるわけです。

(3)社員教育・人材育成

社員教育・人材育成の重要性を訴える先生も多かったですね。

いくら広告を打っても(自分で良いサービスだと言っても)、それだけでは仕事は取れないし、生き残っていけない。
顧客に良いサービスだと言ってもらい、他の人を紹介してもらうことが大事なんだ、と。

それには、やはり「人」。
顧客から最終的に選ばれるのは良い人材を育てている事務所。

いかに自動化の技術が進んでも、最後の砦は「人」ということです。

【3】ITの導入は事務所に何をもたらすのか

マネーフォワードさんの「MFクラウド」シリーズのコンセプトは、「ITの導入により、中小企業に圧倒的な生産性の向上を提供すること」だそうです。このイベントでも当然に、ITやAIの導入に関するコメントが多数出されました。目についたコメントをいくつか紹介します。

(1)ITの導入により専門家の負担を減らせる

ある先生は、事務所業務を始めて税理士・会計士等の専門家は意外に雑用が多い、ということに気づいたそうです。

専門家に雑用をやらせたくない。
専門家は本来の専門業務に注力させたい。

そのためには、ITの導入によりバックオフィス業務をはじめとする雑用をクラウドに移行させることが必須だという話でした。

ITやAIの導入によって、今まで専門家がこなしていた雑用をなくす、なくすことはできなくてもパートタイマーが処理可能なレベルに簡素化する。
実際に、ITやAIの導入で、従来なら税理士の先生がやっていた勘定項目の仕分けを自動でできるようになっていますからね。
ITやAIを導入することで、専門家の負担を減らし、本来の専門業務に注力させ、効率化・生産性のUPを図ることができるわけです。

(2)リアルタイムで顧客の状況を把握することができる

ある先生は、ITやAIの導入によって、リアルタイムで顧客データを見られるようになったメリットを強調していました。

今ではネットバンキングやクラウド会計の仕組みを利用して事務所と顧客の双方向からデータを見ることができます。
顧客から証憑類が送られてこなくても顧客の状況をリアルタイムで把握することが可能になったわけです。
これにより、経理データの作成がスピーディーに進み、滞留時間を大幅に削減できているそうです。

何ヶ月も前の経理データが漸く上がってくるというのでは、既に顧客の状況が変わっていて現状にマッチした対策を打てないですよね。
顧客の状況をその場で把握し、迅速に対策を打つことができれば、顧客の利益にも繋がるのです。

(3)但し、顧客へのIT導入は顧客の利益が優先

IT導入の有用性を認める一方で、ある先生からはこんなコメントがありました。

ITやAIの導入等の変化には、コストがかかるし、人もいる。
できればやりたくないという人もいる。
だから、最先端のものを取り入れることが顧客の利益になっているかどうかは十分に考えるべきだ。

自計化は顧客の負担を増やしているのではないか?
それは顧客の利益になっていない。
我々の本来の役割は顧客の困りごとを解決することだ。

自分が楽をするためにお客様に負担を強いるようなやり方ではダメだということです。
ヤマダもお客様にITの導入を勧めることがあるのですが、ちょっと気をつけないといけませんね(苦笑)

お客様にメリットを感じてもらえるような導入の仕方を考えたいと思います。

まとめ

税理士さん、会計士さん中心のイベントでしたが、ITやAIとの付き合い方という点で非常に参考になるイベントでした。
ヤマダがこのイベントで学んだことのポイントをまとめると以下の通りです。

● 目先ではなく、未来を見る。その流れが不可避ならば、トップが腹をくくり、他の事務所に先んじて新しいツールを導入する
● ITの導入によりバックオフィス業務をはじめとする雑用をクラウドに移行させる。専門家の負担を減らし、業務を効率化させる
● 顧客へのIT導入は顧客の利益を重視する。自分達の労力軽減を目的に顧客にITを導入しない

ITやAIを上手く付き合って事務所業務を効率化し、お客様にメリットを提供していきたいと思っています。

参考サイト

MFクラウドパートナーサミット2017

おまけ

このイベントでは女子アナ好きのヤマダに嬉しいサプライズがありました。

元・フジテレビアナウンサーの弁護士・菊間千乃さんがパネルディスカッションのモデレーターとして登場したのです。
すぐに脱線しそうになる大御所の先生を御しながら、時間内に収める技術はさすがでした!

このイベントは早稲田にある椿山荘で行われました。

道すがら、陸ガメのリクちゃんのお散歩に遭遇しました。
東京にもまだこんなのどかな場所があるんですね(笑)

山田 龍也
この記事を書いた人
弁理士/ネーミングプロデューサー/テキスト職人。中小製造業によくある「良い商品なのに売れない」のお悩みをローテク製品の特許取得、知的財産(特許・商標)を活用したブランドづくり、商品名のネーミングで解決している。

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