商品開発のヒント|はじめに
今日の事例は、ワタオカの「ねこじゃすり」です。
(引用元:ねことの暮らしに楽しい新習慣。ねこがうっとりとろける不思議な道具「ねこじゃすり」|Makuake(*1))
「ねこじゃすり」は、ヤスリの老舗・株式会社ワタオカが作った猫用のグルーミングブラシです。
猫の舌の表面は意外にザラザラしています。
このザラザラした舌で自分の身体や他の猫を舐めてグルーミング(毛づくろい)をするのです。
この猫の舌の表面構造を模して作られたのが「ねこじゃすり」です。
ある時、プラスチックヤスリをブラシに見立てて猫をなでたところ、猫が気持ち良さそうな反応を示したのだそうです。
この反応を見て、ヤスリのザラザラした表面構造が猫の舌の表面構造と似ているのではないかと仮説を立て、試作を重ねて開発されたのが猫用のグルーミングブラシ「ねこじゃすり」なのです。
「ねこじゃらし」+「やすり」で「ねこじゃすり」です。
「ねこじゃすり」には、ものづくり系中小企業が学ぶべき点がたくさんあります。
以下にまとめてみます。
商品開発のヒント①|自前の技術を使って新規事業を立ち上げている点
ワタオカは老舗のやすりメーカーです。
ペット用品のメーカーではありません。
ですから、「ねこじゃすり」は新規に開発された製品です。
しかし、「ねこじゃすり」の独特な表面構造は、やすりの表面構造を転用したものです(*1)。
ワタオカが今まで積み上げてきたやすりの製造技術を活かすことができるわけです。
やすりの製造技術を持たないペット用品メーカーが一から作るより、やすりの専門メーカーであるワタオカに一日の長、アドバンテージがあるということです。
即ち、ワタオカは今までの技術蓄積を活かして「ねこじゃすり」を開発しており、新規事業を立ち上げるリスクを最小限にしていると言えます。
商品開発のヒント②|知財ミックス戦略を使っている点
ワタオカは「ねこじゃすり」について、特許出願、意匠登録出願、商標登録出願を行っています(1,2)。
即ち、技術、デザイン、ブランドの3方向から「ねこじゃすり」に関する知的財産を保護しようとしているわけです。
このようなやり方を「知財ミックス戦略」と言います。
いろいろな方向から製品開発の成果を多面的に保護することによって、単独で保護した場合の弱みを補っているのです。
商品開発のヒント③|クラウドファンディングにより資金を調達している点
ワタオカはサイバーエージェントが運営するクラウドファンディングプラットフォーム「Makuake」から資金を調達しています。
当所の目標金額は30万円と控えめなものでした。
しかし、製品の良さも追い風となって、目標金額の7.6倍、230万円近くの資金を調達しています(*1)。
銀行などの金融機関からの資金調達と比較すると金額のスケールは小さいですが、自己資金を使わずに試作品を作ることができると考えれば悪くないと思います。
また、金融機関ではなく一般人から共感を得てこれだけの金額を集めたことにも意義があります。
単に資金を調達したというだけではなく、新たなファンを獲得したことになるからです。
商品開発のヒント|まとめ
以上説明したように、ワタオカによる「ねこじゃすり」の企画開発には、
- 自前の技術を使って新規事業を立ち上げている
- 知財ミックス戦略を使っている
- クラウドファンディングにより資金を調達している
という特徴があります。
ものづくり系中小企業が新規事業を立ち上げたり、新製品を企画開発する際に参考にすると良いと思います!
参考サイト
(*1)ねことの暮らしに楽しい新習慣。ねこがうっとりとろける不思議な道具「ねこじゃすり」|Makuake
(*2)商標公開2017-103820号公報(J-Platpat)
「ねこじゃすり」の(標準文字商標)に関する商標公開公報