知財ニュースを弁理士が解説!(2018年7月第4週)

目次

はじめに

知的財産やものづくり、ブランドづくりに関するニュースの中からヤマダが独断と偏見でチョイスしたニュースをざっくり解説する「知財ニュースを弁理士が解説!」。

2018年7月第4週の話題は、白猫プロジェクト、エムバペ、キリンラーメン、ブート品、キットカット、体臭測定器、使い切りかつおパック、クールコアなどです!

知財ニュースを弁理士が解説!(2018年7月第4週)

(1)特許に関するニュース

① コロプラ「白猫プロジェクト」を任天堂「スイッチ」に提供

コロプラ、主力スマホゲームを「スイッチ」に|日本経済新聞

コロプラが主力ゲーム「白猫プロジェエクト」を任天堂のゲーム機「スイッチ」に提供する計画が進んでいるようです。

任天堂は「白猫プロジェクト」が自社の特許権を侵害しているとして、コロプラを提訴していて、今まさに係争中。

喧嘩相手のコロプラと、喧嘩の原因である「白猫プロジェクト」について、共同でビジネスを進めている、ということです。

裁判とビジネスは別。喧嘩はするけど、協力できるところは協力する。任天堂、クールな対応ですね。

ひょっとすると、裁判については両社の間で、既に落とし所が見えているのかもしれません。

(2)商標に関するニュース

① 中国で商標「エムバペ」が大量に出願される

中国で「エムバペ」の商標登録申請が急増|Record China

またか、という感じですね。

今度は、サッカーW杯で次世代のスタートして注目された、フランスのエムバペ選手の名前を勝手に出願しているようです…(嘆)

いい加減、こういうのやめたら?と思うんですが。

他人の褌で相撲をとったって、自分のブランドは作れません。

うちの事務所では、ブランドづくりの基本的な考え方から学べるセミナーを開催しています。ご興味がある方はぜひ!

② 小笠原製粉、「キリンラーメン」 の名称変更を余儀なくされる

“大人の事情”で名前が変わる「キリンラーメン」、新名称を「総選挙」で決定へ|ITmedia ビジネスオンライン

1965年から愛知県民に親しまれてきた「キリンラーメン」。その製造元の小笠原製粉が「キリンラーメン」の名称変更を余儀なくされています。

“大人の事情”とは商標権の問題です。大手ビールメーカー・キリンが将来の業務拡張を考えて小笠原製粉より先に、商品「穀物の加工品」について「KIRIN」を登録してしまったのです。

長年、その名称を使ってきた老舗が後発組にやられてしまうこともあるんです。こういう事があるから商標は怖いんです…。

③ ブート品は海賊版です

偽物?それともオマージュ?初の逮捕者を出したブート品とは|FASHIONSNAP.COM

「ブート品」。初めて聞きました。

ざっくり言えば、自分の商品の中に、有名ブランドのロゴを勝手に取り込んでいる商品のことです。

模倣品との違いは、有名ブランドの商品全体を模倣するのではなく、有名ブランドのロゴだけを使うこと。商品全体のデザインはオリジナルです。そこに、有名ブランドのロゴが使われていることで、ファッション性を感じたり、「クール」と捉える向きもあるようです。

ブート品業者は、そのブランドを「オマージュ」しているとか、「カスタマイズ」したデザインだとか、言い訳をしているようですが、そういう問題ではありません。

有名ブランドのロゴが商標登録されている場合、そのロゴを商品に付ければ当然に商標権の侵害となります。ただの海賊版です。おかしな詭弁に惑わされませぬよう…。

④ ネスレ「キットカット」の立体商標がEUで登録無効に

「キットカット」チョコ形状商標登録認めず、EU司法裁判所|サンスポ

皆さんおなじみのキットカット。パキっと割れば、4本のチョコバーに分けられるようになっていますね。あの形状を「4フィンガー」と呼ぶそうです。

ネスレは、この「4フィンガー」の立体形状を欧州連合知的財産庁(EUIPO)に商標登録申請し、一旦は登録を認められました。

しかし、今回の裁判でその商標登録が無効にされたということです。

商標登録を受けるためには、その商標が他の商品と区別できる標識として機能している必要があります。ところが、競合会社も4フィンガー形状のチョコレート菓子を販売している事実がありました。それで、あの形状だけでは「キットカット」と認識できないという判断に至ったわけです。

文字がない立体形状だけを商標登録するのは難しいんです。

(3)ものづくりに関するニュース

① タニタの「持ち歩ける体臭測定器」

タニタが「持ち歩ける体臭測定器」 女性もターゲット|日経トレンディネット

タニタが持ち歩ける体臭測定器を作ったそうです。

これで、出先でも体臭のレベルを測れるようになって安心!

って、おいおいタニタさん! その先は考えているのかい?

出先で自分が臭いと判っても、体臭を消す方法まで提供してくれないとどうにもならなりませんよ。あとの対策まできちんと考えてくれないと(笑)

まぁ、タニタは測定器の会社ですからね。「測るところまではやるけど、あとは他の会社さんお願い!」ということなのかもしれません。

② ヤマキの鰹節小分けパック「使い切りかつおパック」がヒット商品に

ちょっとだけでも大ヒット 18年上半期トレンド食品|日経トレンディネット

鰹節は細かく削られているので表面積が大きく、酸化されやすいんですよね。酸素に触れるとせっかくの風味が飛んでしまいます。

ヤマキの鰹節小分けパック「使い切りかつおパック」は1gごとにパック詰めされている使い切りタイプ。いつでもフレッシュな鰹節を使うことができます。

実はヤマダもだいぶ前から愛用していました。独り身には便利なんですよねぇ。自分が以前から愛用していた商品がヒット商品になるのは嬉しいものですね。

従来の商品を小分けしただけ。でも、ニーズがあれば売れるんです!

③ 冷却素材「クールコア」を使ったTシャツで熱中症対策に最適

ミドリ安全『ベルデクセル 男女共用 半袖クールコアTシャツ』インナーだけじゃもったいない! 動きやすく熱中症対策にも最適なワークウェアに注目せよ!|おためし 新商品ナビ

今年は暑い日が続いていますよね。こんなときは機能性衣料で涼やかに過ごしたいものです。

ミドリ安全のTシャツは、「Coolcore(クールコア)」という冷却素材を使っています。「Coolcore」は水分を吸収し、その水分を生地全体に拡散させ、水分を気化させる際に身体から気化熱を奪うという仕組みで冷却効果を得ています。

生地の構造自体に冷却効果があり、洗濯しても冷却効果が落ち難いという点で、競合品と差別化しています。

まとめ

今週は商標関係のネガティブなニュースが多かったですね。ネガティブだからこそニュースになるとも言えますが(苦笑)

来週は、もっと前向きの明るいニュースが増えてくれればいいなと思っています!

山田 龍也
この記事を書いた人
弁理士/ネーミングプロデューサー/テキスト職人。中小製造業によくある「良い商品なのに売れない」のお悩みをローテク製品の特許取得、知的財産(特許・商標)を活用したブランドづくり、商品名のネーミングで解決している。

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