知財ニュースを弁理士が解説!(2018年8月第2週)

目次

はじめに

知的財産やものづくり、ブランドづくりに関するニュースの中からヤマダが独断と偏見でチョイスしたニュースをざっくり解説する「知財ニュースを弁理士が解説!」。

2018年8月第2週の話題は、「冷感スプレー」、「ブリヂストンのタイヤ」、「エジソン」、「カレー専用スプーン」、「男性の座りション用パンツ」、「セコムの偽ステッカー」、「英国戦艦が『ガンダム』を搭載?」、「『森伊蔵』『伊佐美』を奪還!」などです!

知財ニュースを弁理士が解説!(2018年8月第2週)

(1)ものづくりに関するニュース

ものづくりに関するニュース、例えば、技術<特許・実用新案>、デザイン<意匠>、著作物、商品企画等に関するニュースをまとめました。

① 熱中症対策グッズ・冷感スプレーの差別化戦略

【衣類冷感スプレーで熱中症対策】猛暑を乗り切る2018おすすめクールダウンスプレー比較|おためし新商品ナビ

今年は猛暑ですねぇ。熱中症対策グッズの冷感スプレーが大人気です。

冷感の強さ、携帯のし易さ、スプレーのし易さ、ボトルデザイン、消臭効果をプラス…。各社、工夫を凝らして、他社の製品との差別化にしのぎを削っています。

アピールポイントをどこにするかで売れ行きも変わってきます。

ターゲットを誰にするか、そのターゲットにどんなアピールをすれば響くのか。そこに知恵を絞ることが差別化に繋がります。

② ブリヂストンのタイヤは特許で勝つ!

ブリヂストン 中国での特許訴訟に勝訴|ゴムタイムス

ブリヂストン が中国での裁判で勝ちました。

今回の裁判は、タイヤの溝形状(トレッドパターン)の特許に関するものです。タイヤの技術はなかなか奥が深いです。タイヤの形状・構造、ゴムの材質、製造方法など、色々な技術が詰まっています。

タイヤの溝形状を美的な観点から捉えれば、そのデザインを意匠登録することもできます。

でも意匠権は形や模様、色などを具体的に特定して権利にするから、独占できる範囲が狭いんですよね。そのデザインと同じコンセプトでも形が似ていないと意匠権の範囲から外れてしまいます。

コンセプト、概念を広く権利として押さえたいなら特許がおすすめです。特許権は技術の「アイデア」を独占することができる権利です。概念を抽象的に特定することもできるので、独占できる範囲は意匠権より広くなります。

③ エジソンは発明家ではなく商人だった?

ものづくりで儲けたければ、エジソンの商人根性とファイナンス思考に学べ! <藤野英人さん×朝倉祐介さん 対談後編>|DIAMOND online

エジソンと言えば、白熱電球を生み出した発明家として知られています。

でも、白熱電球を発明したのはジョゼフ・スワンという人だそうです。エジソンの功績は、配電システムを構築し、電灯を事業化し、一般家庭でも電気を使えるようにしたことです。

エジソンが大金持ちになったのはすごい発明をしたからと言うよりは、その発明をいかに商品化し、どう売るかをしっかり考えたからと言えそうです。

ものづくりで稼ぐためには、ビジネスモデルを疎かにしてはいけないということです。

④ 金属加工の老舗が作ったカレー専用スプーン

山崎金属工業、カレー専用スプーン開発 新シリーズや海外展開視野|鉄鋼新聞

金属加工を専業とし、食器づくりに定評がある新潟県燕市の会社がカレー専用スプーン「カレー賢人」(キャリ、サクー)を作りました。

カレーマニアの声に耳を傾け、スプーンの皿部分の深さを左右非対称にしてご飯を掬いやすくする等、カレーを美味しく食べるための工夫を詰め込んだスプーンです。

製品や技術分野を極限まで絞らなければ、他社と差別化を図ることはできません。

食器が得意、金属加工が得意では対象が広すぎて特徴をアピールしにくいのです。

⑤ 男性の座りションに新提案。脱がすに用を足せる新型パンツ

座る男性、座ってほしい女性に贈る!脱がずに着座、トイレ楽々!休日パンツはこれ1枚|Makuake

「トイレが汚れるから座ってして!」

奥さんに怒られて座りション派に転ずる男性が急増しています(笑)

HOME.Pは前開きの位置を工夫して「脱がずに座りション」を実現したパンツです。

すごい! この発想はありませんでした!

時代のニーズに敏感になり、いち早くそのニーズに応えた斬新な商品を作る。他人より一歩先んずることが「売れる商品」を生み出す秘訣です。

(2)ブランドづくりに関するニュース

ブランドづくりに関するニュース、例えば、ブランド<商標>、不正競争等に関するニュースをまとめました。

① セコムの偽ステッカーを売るのは

セコムの偽ステッカーをネット販売、アルバイトの男を逮捕|産経ニュース

「セコムしてますか?」でお馴染み、警備サービスの「セコム」。

そのシンボルマークを描いた偽のステッカーを作り、無断でネット販売していた男が商標法違反の疑いで逮捕されました。

自分で使わなくても、他人に使わせるために登録商標を表示した物(ステッカー)を販売する行為は間接侵害に当たります。商標権侵害(直接侵害)の一歩手前の行為という意味です。

一歩手前とは言っても、間接侵害行為をすれば商標権を侵害したものとみなされます。「五年以下の懲役」か「五百万円以下の罰金」、又はその両方が科される犯罪行為です。

男は「法律に違反するとは思わなかった」と言い訳しているようですが、間接侵害のことを知らなくても、「他人の褌で相撲を取ることは悪いことだ」というイメージくらいは持って欲しいものです。

③ 英国大使館が「ガンダム」を話題づくりに利用する

「ガンダムは搭載していません」 英海軍揚陸艦「アルビオン」入港で大使館が粋なツイート|産経ニュース

最近、企業や政府機関等がTwitterにおもしろ投稿をするのが流行っています。自分達の活動に興味をもってもらい、認知度を上げる。これも一つのブランドづくりと言えます。

このニュースは、英国大使館が「アルビオン」という軍艦の入港に伴って、人気アニメ「ガンダム」に絡めた投稿をしたことを報じています。アニメ「機動戦士ガンダム0083」の中に、「ガンダム」を搭載する宇宙戦艦「アルビオン」はが登場します。これに引っ掛けたわけです。

このツイートでは、「ガンダム0083は搭載していません」とありますが、厳密に言うと、「ガンダム0083」はアニメのタイトルで、ガンダムの機体名ではありません。「アルビオン」に搭載されているのは「ガンダム試作1号機(ゼフィランサス)」です。

英国大使館、惜しい!

せっかくおもしろ投稿をするのであれば、正確さを期す、押さえるべきところは押さえてからにましょう。

ガンダムオタク(ガンオタ)はこういうところにシビアです。「ろくに知らないくせに!」と思われると炎上するおそれがあります。ご注意を(笑)

③ 「森伊蔵」「伊佐美」を奪還!

森伊蔵、伊佐美の商標無断登録 中国当局が取り消し決定|日本経済新聞

人気の焼酎「森伊蔵」「伊佐美」が第三者に商標登録されてしまう。いわゆる「悪意の商標出願」です。

商標は早いもの勝ちの世界です。

通常、日本全国で有名な焼酎の名前を第三者が出願しても商標登録はできないことになっています。でも、海外となると話は別。「有名」であることを証明するのが難しいのです。

商標を先取りされると面倒です。あの「森伊蔵」「伊佐美」ですら苦戦したわけですから。

たとえ相手が悪者だとしても、一旦、商標登録されてしまうと、その商標登録を取消すにはかなりの費用がかかります。取り消すまでは相手に商標権があるので、うかつにその商標を使えません。ビジネスにも遅れが生じます。

使い始める前(他の人に知られる前)に商標を出願しておくのが一番ですね。

まとめ

今週はものづくり系のニュースを多めにしてみました。

誰かが悪さをしたという暗いニュースより、新しい物を創り出す、技術の進歩等の明るい話題に目を向けていきたいと思います!

山田 龍也
この記事を書いた人
弁理士/ネーミングプロデューサー/テキスト職人。中小製造業によくある「良い商品なのに売れない」のお悩みをローテク製品の特許取得、知的財産(特許・商標)を活用したブランドづくり、商品名のネーミングで解決している。

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