知財ニュースを弁理士が解説!(2018年8月第4週)

目次

はじめに

今週の話題は、

● 同じ自動採寸でも、「ZOZOSUIT」とはちょと違う
● ダイソン、電気自動車事業に参入?!
● 手術ロボット「ダ・ヴィンチ」の特許切れ
● クラウドファンディングサイトのニッチ商品に学べ
● 片手ですり切り1杯を計れる計量スプーン
● デサントが「マンシングウェア」の商標権を単独保有へ
● 「レインボーアイスクリーム」はどう保護する?

などです!

知財ニュースを弁理士が解説!(2018年8月第4週)

知的財産やものづくり、ブランドづくりに関するニュースの中からヤマダが独断と偏見でチョイスしたニュースをざっくり解説する「知財ニュースを弁理士が解説!」。

まずは、ものづくりに関するニュースから。

(1)ものづくりに関するニュース

ものづくりに関するニュース、例えば、技術<特許・実用新案>、デザイン<意匠>、著作物、商品企画等に関するニュースをまとめています。

① 同じ自動採寸でも、「ZOZOSUIT」とはちょと違う

洋服の写真から画像解析の技術でその洋服のサイズを自動採寸できるシステムが開発されました。

今、ZOZOTOWNの「ZOZOSUIT」が話題になっていますね。スーツを着た状態で写真を撮影すると、体型を自動採寸してくれる水玉模様のあのスーツです。

「ZOZOSUIT」は採寸した体型データに基づいて適切なサイズの服を提案してくれるもの。購入者側の手間を省き、ZOZOTOWNの服を買ってもらうための動線として機能しています。

それに対し、このシステムは購入者側ではなく販売者側の手間を省くものです。ネット通販では服のサイズ感が伝わり難い。だから、販売店は服の寸法を細かく採寸してサイトに公表しています(例えば首周り、肩幅、袖の長さ等)。その採寸の手間を省くのがこのシステムなのです。

同じ自動採寸に関する技術でも目線が真逆。

ものづくりに煮詰まったときは、人、時、場所などの観点で目線を切り替えてみると突破口が見いだせるかもしれません。

元記事:画像解析技術を応用した洋服の自動採寸に関する特許を出願|ニコニコニュース

② ダイソン、電気自動車事業に参入?!

ダイソンが電気自動車の分野に進出するというニュースです。

異分野に参入する、新規事業を立ち上げるというのは簡単なことではありません。その分野でずっと君臨してきた他の会社がいるわけですから。

まず、自分の中で培ってきた強みを棚卸しする。その強みが参入しようとしている分野でアドバンテージになりそうか、他の会社にない独自性のあるものかを検討する。

それまでに培ってきた固有の強みで勝負するというのができなければ、ではなかなか勝てません。

元記事:ダイソン「デジタルモーター」 自動車向けに商標登録 新たに300人雇用|AUTOCAR JAPAN

③ 手術ロボット「ダ・ヴィンチ」の特許切れ

手術ロボットの分野でトップシェアを誇る「ダ・ヴィンチ」。その基本特許が来年切れます。

インテュイティブ・サージカル社が「ダ・ヴィンチ」の独占権を失うことで、手術ロボットの勢力図ががらっと変わる可能性もあるでしょう。

ただ、イ社は特許の恩恵を受けてこの業界でトップランナーとして走り続けてきました。技術力・ブランド力の蓄積があります。基本特許が切れることは何年も前からわかっていたこと。当然、次への布石は打っているはずです。

ここで、後発業者が「ダ・ヴィンチ」を凌駕する独自性のある製品を世に送り出すことができるか? それがこの業界の勢力図を塗り替えられるか否かのポイントになります。

元記事:手術ロボットの王者「ダ・ヴィンチ」の特許切れ迫る、日本勢が続々名乗り|ビジネス+IT

④ クラウドファンディングサイトのニッチ商品に学べ

スタートアップ企業が製品開発の資金を調達する方法として定着した感のあるクラウドファンディング。

実際、Makuake、CAMPFIRE、Ready forなどのクラウドファンディングサイトを眺めていると、面白いプロダクトが集まっています。

量産品としては商業ベースに乗らないけれど、これを欲しがる人はいるだろうなというニッチ商品、単機能商品、マニア向け商品が揃っています。

オリジナル商品の開発で煮詰まっている会社には参考になると思いますよ。

元記事:超軽量ドライヤー・パン専用包丁…ネット発の一芸ギア
クラウドファンディングはニッチ商品の宝庫|NIKKEI STYLE

⑤ 片手ですり切り1杯を計れる計量スプーン

「すりきり一杯」って結構面倒…。お料理好きの方でもそう思っている人は多いのではないでしょうか?

こういうほんのちょっとした悩みを解決してあげると、人は喜ぶものです。

「売れる商品」は、機能や性能に優れた商品に限りません。多くの人の悩みを解決することができる商品もまた売れるのです。

元記事:日本初!「片手ですり切れる計量スプーン」発売開始!!記念イベントを東京ガスStudio +G GINZA で行います!【一般社団法人栄養検定協会】|PR TTIMES

続いては、ブランドづくりに関するニュースです!

(2)ブランドづくりに関するニュース

ブランドづくりに関するニュース、例えば、ブランド<商標>、不正競争等に関するニュースをまとめました。

① デサントが「マンシングウェア」の商標権を単独保有へ

ペンギンマークでおなじみのスポーツウェア「マンシングウェア」。

今まで、「マンシングウェア」の商標権は、東洋紡、伊藤忠商事、デサントの三社が共同保有していました。今回、デサントが東洋紡、伊藤忠商事の権利の持ち分を買い取って商標権を単独保有することにしたようです。

権利を共同保有する場合、色々な制約が出てきます。一人が暴走して他の人達に迷惑をかけないように法律で縛りをかけているんです。

事業を始めた頃は仲良くやっていても、儲かってくると取り分でもめたりするものです。将来的なことも考えて、権利を共同保有するかどうかの戦略を立てないといけません。

元記事:デサント、「マンシングウェア」の商標権を単独で取得へ|FASHION NETWORK

② 「レインボーアイスクリーム」はどう保護する?

インスタ映えスイーツが流行っています。

7色のアイスクリ-ムをデコレーションした「レインボーアイスクリーム」は見た目も鮮やかでインスタ映えしそうです。

このニュースは「レインボーアイスクリーム」が商標登録されたというもの。これで、他社はアイスクリームを「レインボーアイスクリーム」という名前で売ることはできなくなります。

しかし、禁止されるのは名前の使用だけ。見た目をそっくりそのまま真似されても商標権の侵害にはなりません。

実はアイスクリームのような食品もプロダクトデザインとして意匠登録することができます。アイスクリームの色や形を独占したければ意匠登録も考えた方がいいです。また、ちょっと変化球ですが、レインボーアイスクリームの色や形を立体商標として登録するなんて方法も考えられます。

一つの商品を護るには色々な方法が考えられます。知財戦略ですね。この辺りは弁理士さんに相談してみましょう!

元記事:人気の6色「レインボーアイス」商標登録 類似品との差別化目指す さくらの江連商会|下野新聞「SOON」ニュース

まとめ

知財ニュースをざっと眺めるだけで、自分のビジネスに活かせそうなアイデアややり方を学ぶことができます。

他人の経験を自分のものとすることで、進歩のスピードを上げることができるんですよね。ぜひ参考にしてみてください!

山田 龍也
この記事を書いた人
弁理士/ネーミングプロデューサー/テキスト職人。中小製造業によくある「良い商品なのに売れない」のお悩みをローテク製品の特許取得、知的財産(特許・商標)を活用したブランドづくり、商品名のネーミングで解決している。

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