知財ニュースを弁理士が解説!(2018年8月第5週)

目次

はじめに

今週の話題は、

● 電通、他社に知的財産を提供
● 大田区が車いすバスケットボール用車椅子を開発
● 特殊な金属加工「へらしぼり」を使った酒器
● 水厳禁の掃除機を使って汚物を吸い取る「switele」
● 徳島大学が「アムロ行きまーす!」のあの装置を作る
● Twitterの「中の人」
● 無農薬栽培の柚子「訪花の星」
● 「カメラを止めるな!」パクリ騒動

などです!

知財ニュースを弁理士が解説!(2018年8月第5週)

知的財産やものづくり、ブランドづくりに関するニュースの中からヤマダが独断と偏見でチョイスしたニュースをざっくり解説する「知財ニュースを弁理士が解説!」。

まずは、ものづくりに関するニュースから。

(1)ものづくりに関するニュース

ものづくりに関するニュース、例えば、技術<特許・実用新案>、デザイン<意匠>、著作物、商品企画等に関するニュースをまとめています。

① アイデアを買う

電通が自社の知的財産を提供し、中小企業等に商品開発させる試みを始めました。

資力・マンパワーに劣る中小企業が「全てを自前で」というのはなかなか難しいと思います。まずは、自分達が得意な「作る」という部分で勝負することも一つの考え方です。

アイデア出しや知的財産権の取得については他の会社にやってもらって、それをお金を出して買ってくる。不慣れなアイデア出しの部分に人や時間をかけるより効率的かもしれませんよ。

元記事:電通、知財を外部企業に提供 第1弾は段ボールのお札立て|日本経済新聞

② ターゲットを絞る

大田区が区内の中小企業と提携して、車いすバスケットボール用の車椅子の開発を進めています。

一昔前なら考えられなかった製品です。パラリンピックが注目されるようになって、こういう製品にも光が当たるようになってきました。

汎用の車椅子を作っている企業が特殊用途の車椅子を作るメリットを考えてみましょう。汎用の車椅子と比べれば、特殊用途の車椅子のパイの大きさ・利益は限られています。しかし、このジャンルはまだ競争相手が少なく、汎用の車椅子よりトップを取れる可能性があります。まずはそこでトップを取りに行く。トップを取って、このジャンルで注目されることで、今まで作ってきた汎用の車椅子の評価も上がっていきます。

まずは小さなお山の大将を目指す。そこで得た高い評価を利用して、他の製品も売っていく。急がば回れということです。

元記事:大田区と区内中小企業、バスケ用車椅子開発 ものづくりの技術をパラに|iZa 産経デジタル

③ 自社の得意技術を使い倒す

特殊な金属加工の技術「へらしぼり」について特許を取得した企業が、その技術を使って日本酒の酒器を開発しました。

一芸に秀でるものは多芸に通ず。

他社に真似できない得意技術は使い倒しましょう。その技術を活かせそうな製品や用途を探索しましょう。今までその技術を使ってきたジャンルとは全く別のジャンルに、もっと稼げる製品が埋もれているかもしれませんよ。

元記事:「へらしぼり」で二重構造の酒器 金属加工の高桑製作所が特許生かし開発 |SankeiBiz

④ ユーザーのお困りごとを徹底的にリサーチする

水厳禁の掃除機で汚物を吸い取ることができる器具「switle(スイトル)」が開発されました。

ものづくりをしていると、「良い商品」「優れた商品」を作りたいという方向に行きがちです。でも、「良い商品」「優れた商品」とは、誰にとってのものでしょうか?そこでユーザーの要望が置き去りになってしまうと、それは作り手側のエゴになりかねません。

まずはユーザーのお困りごとを徹底的にリサーチする。そのお困りごとを解決する。ここにフォーカスするとヒット商品が出る可能性があります。

元記事:介護の「臭い対策」クリーナー、開発の裏に義父のおむつ衝撃体験|NEWSポストセブン

⑤ まずはものづくりを楽しむ

徳島大学が「アムロ行きまーす!」のあの装置「カタパルト」を作っていたようです。ホワイトベースに搭載されている、ガンダムを射出するためのあの装置です。

現在、プロジェクトは中断しているようですが、ぜひ再開させてもらいたいものです。

ものづくりは純粋に楽しいものです。こういう試みから斬新なアイデアは生まれてきます。眉間に皺を寄せて、自社の商品だけをキリキリと考えていても良いものはできませんよ(笑)

元記事:【イノベの見どころ】|徳島大学KNOWCANプロジェクト Twitter

⑤ 情報発信は商品開発に繋がる

企業のTwitterアカウント担当者「中の人」に注目が集まっています。

最近、企業がFacebookやTwitter、Instagram等のSNSを使った情報発信に力を入れています。魅力的な情報は花の香りのようなもの。花の香りに虫が寄って来るように、情報にはその情報に興味がある人を呼び寄せてくる効果があるのです。

情報発信はインターネット上に自分の旗を立てること。魅力的な旗を立てることで、同志や仲間、未来のお客様を集めることができるのです。

元記事:ツイッター企業アカウント発 思わぬ交流でヒット商品|NIKKEI STYLE

続いては、ブランドづくりに関するニュースです!

(2)ブランドづくりに関するニュース

ブランドづくりに関するニュース、例えば、ブランド<商標>、不正競争等に関するニュースをまとめました。

① 名は体を表せ!

無農薬栽培の柚子の商品名「訪花の星」が商標登録されています。

商標の仕事をしていると、「なんでこの名前?」と思うような商標を登録したいと持ってくる人が少なくありません。商品の特徴やその人の独自性が現れていない。ただ流行りの言葉に乗っかっているだけ。そんな商標を登録しても、それがブランドとして光り輝くことはないでしょう。

名は体を表わせ。独自性や個性、特徴を端的に表現するのがネーミングのコツだと思います。

元記事:ユズのキズは「星」おいしさの証し 逆転の発想で商標化|朝日新聞デジタル

(3)その他のニュース

① 信頼できる情報源を持つ

映画「カメラを止めるな!」にパクリ騒動が起きています。

話題の作品に、ネガティブなインフォメーションが提供され、ネットで炎上する。最近、よく見る光景です。でも、それらの情報を鵜呑みにするのは危険です。法律的な妥当性を欠くような批判も多いからです。

そういうときに役に立つのが専門家の意見です。人気者が出てくれば、それを引きずり下ろしたい輩が出てきたりするものです。

ネットの情報に振り回されないよう、信頼できる情報源を持つのが大事です。

元記事:「カメ止め」パクリ騒動で相次いだ「検証記事」…福井弁護士が振り返る|弁護士ドットコムNEWS

まとめ

この「知財ニュースを弁理士が解説!」。発信を始めてから1ヶ月ほど経ちました。大分、こなれてきた感じがします(笑)

これからも面白いニュースソースを開拓して、皆様に有益な情報を提供できるようにしたいと思っていますのでお楽しみに。

山田 龍也
この記事を書いた人
弁理士/ネーミングプロデューサー/テキスト職人。中小製造業によくある「良い商品なのに売れない」のお悩みをローテク製品の特許取得、知的財産(特許・商標)を活用したブランドづくり、商品名のネーミングで解決している。

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