知財ニュースを弁理士が解説!(2018年10月第3週)

目次

はじめに

今週の話題は、

● LOHACO
● 下町ロケット
● 用途発明
● 日本の農業技術とロボット
● チョーヤの梅酒
● 消臭スプレーの差別化
● ネット通販の売れ筋商品

などです!

知財ニュースを弁理士が解説!(2018年10月第3週)

知的財産やものづくり、ブランドづくりに関するニュースの中からヤマダが独断と偏見でチョイスしたニュースをざっくり解説する「知財ニュースを弁理士が解説!」。

● 技術<特許・実用新案>、デザイン<意匠>、著作物、商品企画等、ものづくりに関するニュース
● ブランド<商標>、不正競争等;ブランドづくりに関するニュース
● その他の気になったニュース

をまとめています。今週も行ってみましょう!

(1)製品のデザインを見直す|ものづくり、商品企画、差別化

元記事:『暮らしになじむ LOHACO 展 2018』が開催中!あの生活用品が、インテリアに寄り添うデザインに|おためし新商品ナビ

ユーザーが商品を選ぶ基準は、機能や性能、品質だけではありません。いくらカタログ上のスペックが良くても、ユーザーがそれを望んでいなければ何の意味も持たないのです。

近年では技術のキャッチアップが速くなり、新しい技術を開発してもすぐに他社に追いつかれてしまいます。純粋な技術のアドバンテージのみでは他社と差別化することが難しくなってきているのです。

デザインはユーザーの心や感情に直接訴えかけることができる要素です。技術一辺倒ではなく、そこにデザイン性という要素を足すというアプローチが大事です。

最近、特許庁も「デザイン経営」という言葉を使い始めました。これからは、プロダクトデザイン(製品のデザイン)が注目の的となるはずです。

(2)強みを作り、環境の変化に対応する|ものづくり、新規事業

元記事:下町ロケット:池井戸潤×日曜劇場、初の続編 高まる期待…ロケットスタートなるか?|MANTAN WEB

ドラマ「下町ロケット」の新シリーズが始まりました。

このドラマの注目ポイントの一つが、佃製作所が環境の変化にどう対応していくか、という点です。前シリーズにも増して、佃製作所には数多くの試練が訪れます。その試練を技術者の知恵で乗り越えていくというところが見どころなのです。

今回は初回から大きな試練が訪れました。帝国重工・藤間社長の退任と、国産ロケット打ち上げ事業「スターダスト計画」の中止が進んでいるのです。帝国重工へのロケットエンジンバルブの供給は佃製作所の基幹事業。「ロケット品質」を標榜することで、他の取引先の信頼も勝ち取ってきました。

この試練を乗り越えるキーとなるのは、佃製作所の強みである「バルブ」。強みを持つことで、他事業への展開が容易になります。自分の強み、会社の軸となる技術を持つことで、環境の変化に対応していくことができるのです。

(3)用途発明|ものづくり、特許

元記事:糖質ゼロなら酒臭い息も… 月桂冠が特許|朝日新聞DIGITAL

「用途発明」というのは、昔からあった物を、今までとは違う特殊な使い方をすることで有用な技術的な効果を得るアイデアのことです。

通常、昔からあった物は新しさがないので特許を取れません。でも、使い方が斬新で、その使い方をすることで有用な技術的効果を得られる場合には特許を取れる可能性が出てきます。

この特許の明細書はまだ見れていないのですが、おそらくこういうことです。

● 月桂冠は糖質ゼロのお酒は酒臭い息になり難いという事実を見出した
● 糖質ゼロのお酒は今までにもあったけれど、糖質ゼロのお酒を酒臭い息を防止する用途に使うというアイデアは今までになかった
● だから、その部分について特許を取った

用途発明は化学や食品の分野で多く見られます。機械と比べて、技術的な効果を予測しにくいので、意外な用途が出てくることがあるんです。

月桂冠の「糖質ゼロ」については、以前もブログに書いています。そちらもどうぞ。

「W特許製法! 月桂冠「糖質ゼロ」に学ぶ、ちょっと変わった特許の使い方 ~技術ブランディング~」

[blogcard url=”https://yamadatatsuya.com/archives/1612″]

(4)日本の農業技術をロボットに落とし込む|ものづくり、ロボット

元記事:効率化で収穫量はふつうの畑の5倍。初の全自動農園から溢れる未来感|GIZMODO

日本の農業は技術があると思います。果物とかすごく美味しいですもんね。でも後継者問題であったり、収益性の問題で撤退する農家も多いと聞きます。これはもったいない!

日本のような小国は、大量生産の大規模農業では外国に敵うわけがありません。ここは科学技術を駆使して効率化を図ってもらいたいところです。あとは農業の職人技をノウハウ化してロボットに移植する。

せっかく良い農業技術があるんです。ただ税金で赤字を補填するのではなく、農家の方を科学技術で支えていくような仕組みができないかなぁと思っています。

(5)日本独自の商品を開発し、将来的には海外で勝負する|ものづくり、商品企画

元記事:
チョーヤが目指す「オンリーワン戦略」の凄み
「梅酒という言葉を忘れさせたい」|東洋経済ONLINE

ワイン好きの人、多いですよね。

日本にもワインはありますが、ワインは元々、外国の文化です。世界の市場は既に外国のワインで埋め尽くされています。そこに割って入っていく、日本のワインを世界的なブランドにしていく、というのは至難の業です。

そうであれば、日本独自のものを世界に向けて発信していくことに、もっと目を向けても良いかもしれません。実際に、日本酒は「sake」として世界に受け入れられつつあるようです。

「梅酒」というのも、日本以外ではあまりなさそうですよね。日本の文化は世界でも注目されています。チョーヤの世界戦略にも注目ですね。

(6)差別化はデータではなく消費者の肌感で|ものづくり、差別化

元記事:消臭スプレー3種比較!『ファブリーズ』『ハイジア』『リセッシュ』使って調べたが、違いはあるか?|おためし新商品ナビ

差別化といっても数字上の区別がつけばよいというものではありません。その数値が消費者の指標に合っていなければ単なるデータです。消費者の選択の基準とマッチした基準を提示する必要があります。

特に「臭い」のような感覚に訴える製品の場合、個々の使用者による感覚の差も意識しないといけません。「臭いを消す」、「臭いを感じ難くさせる」、「良い香りをさせる」というのは全く別の基準です。

● 使用者が何を求めているのか
● それに表現するのに適した基準は何なのか
● それはどうしたら使用者に伝えることができるのか

差別化はこの辺りから考えてみる必要がありそうです。

(7)ネット通販ならではの商品を企画する|ものづくり、商品企画

元記事:新聞紙に無香料洗剤… アマゾンで人気の超ニッチ商品|日経トレンディ

ネットでは意外なものが売れるようです。店頭販売とは売れ筋商品が違います。ネットで買ってもらえるような商品を企画するというのも面白いアプローチです。

店頭ではよく売れる商品が棚に並びます。売れ行きが悪い商品は棚から消えていきます。要は大多数の人が好む商品しか、棚には置いてもらえないということです。

しかし、小規模事業の場合、大企業のように商品をたくさん売る必要はありません。生産設備だって大企業みたいに大きいわけじゃないんですから、自分たちが稼げるくらいの量が売れればいいわけです。ここの頭の切り替えができると、戦略の選択肢が増えてくるんです。

まとめ

今週は、「売れる商品を作るための戦略」「商品を売るための戦略」「事業を発展させていくための戦略」という戦略面に着目してニュースを解説してみました。

下町ロケットの佃製作所にしても、梅酒のチョーヤにしても、自分の強みを持ち、それを生かして事業を展開しています。まずは、自分の強みを見つけるというところから始めてみましょう!

山田 龍也
この記事を書いた人
弁理士/ネーミングプロデューサー/テキスト職人。中小製造業によくある「良い商品なのに売れない」のお悩みをローテク製品の特許取得、知的財産(特許・商標)を活用したブランドづくり、商品名のネーミングで解決している。

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