クロスリンク特許事務所(東京都中央区銀座)所長、中小企業専門の弁理士・山田龍也(@sweetsbenrishi)です。
はじめに
新しい元号が「令和(れいわ)」に決まりました。
今日は、あとひと月で幕を閉じる、現元号「平成」からブランドづくりのコツを学んでみましょう!
新元号は「令和(れいわ)」。現元号「平成」から学ぶブランドづくりのコツ|中小企業のためのブランド戦略事例集
実際の事例の中から、中小企業のブランドづくり・ブランディングに役立つ事例を紹介・解説する不定期連載企画「中小企業のためのブランド戦略事例集」。
今日の事例は、あとひと月で幕を閉じる、現元号「平成」です。
本日(2019.4.1)、政府は「平成」に変わる新元号を「令和(れいわ)」と発表しました。
新元号は「令和」と決定 菅官房長官が発表https://t.co/5pITO4NwZa
→政府は1日午前、「平成」に代わる新元号を「令和(れいわ)」と決定した。菅義偉(すが・よしひで)官房長官が記者会見で発表した#新元号 pic.twitter.com/hDHXTtgdxH
— 産経ニュース (@Sankei_news) April 1, 2019
正直、まだピンと来ません。
違和感しか感じないと言ってもいいでしょう。
思えば、現元号「平成」が発表された時もそうでした。
「なんだか間が抜けた元号だな。『昭和』の方が断然カッコいい。」
そんな風に感じたことを記憶しています。
でも、「平成」も今年で31年目。
さすがに30年以上も経つと、「平成」に対する違和感はすっかり拭い去られました。
そして、いよいよこの時代も終わりとなると、「平成」に対する名残惜しさを感じたりもします。
そのような意味で、「平成」は確固たるブランドを確立することができたと言えるでしょう。
最初は違和感しか感じなかった「平成」が何故、ブランドを確立することができたのか?
その理由を検証することで、ブランドづくりのコツが見えてくるはずです。
では、早速、「平成」がブランドを確立することができた理由について検証していきましょう。
(理由その1)唯一無二の存在であった
理由の1つ目は、唯一無二の存在であったことです。
唯一無二の存在になれば、似たような言葉の中で埋没し、存在感を失うことがないからです。
幸いなことに、元号には競合相手がいません。
政府が元号を「平成」と決めたら、他の元号を勝手に使うことはできませんからね。
一方、皆さんのビジネスには必ず競合相手がいます。
この時に、会社名や商品名に、独自性のないありきたりの言葉を使っていれば、唯一無二の存在になることはできません。
あっという間に言葉の海の中に埋没し、存在感を失うわけです。
例えば、新元号が発表されると、必ずそれにあやかった名前を付けようとする人がいます。
何故、わざわざ皆が群がっているところに入っていくんですか?
どうみてもレッドオーシャンです。
多数の人がその商標を使っているわけですから、独自性を発揮しようがないのです。
仮に一時的な話題になったとしても、ブランドを作ることはできないでしょうね。
因みに、新元号が「平成」に決まったときにも、「平成」にあやかった商標が多数出願されました。
このため、特許庁は「元号に関する商標」について、審査上、以下のように取り扱うことを発表しています。
元号(現元号であるか否かを問わない。)として認識されるにすぎない商標は、識別力がない(自分の商品・役務と他人の商品・役務を区別するものにはならない)ため、商標登録を受けることはできません。
このブログの読者の皆さんは、真のブランドを作りたい人たちのはずです。
そうであれば、こんな取り決めがなくたって、元号にあやかった名前なんて付けませんよね?
ブランドを確立するためには、その商標(会社名・商品名・サービス名等)が唯一無二の存在であること、言い換えれば独自性のある商標を作ることが必要なのです。
(理由その2)長期間に渡って、沢山の人に数えきれない程、使われてきた
理由の2つ目は、長期間に渡って、沢山の人に数えきれない程、使われてきたことです。
言葉は使われる程に世の中に浸透し、認知度が上がり、その認知度が世間からの信頼となってブランドが築かれていくものだからです。
「平成」という言葉の使用頻度を考えてみてください。
尋常ではないレベルで使われていると思いませんか?
朝の情報番組のオープニングで「平成●年●月●日。今日も元気に『モーニング××』、スタートです!」なんて、キャスターの声を聞かされるところから始まって、
会社に行けば、書類を作る度に何度も何度も「平成●年●月●日」という日付を書かかされ、
会社帰りに飲みに行って領収書をもらえば、そこに書かれている「平成●年●月●日」という文字を目にし…。
このように「平成」という言葉は、1日のうちに何度も何度も見たり、聞いたり、書いたりするわけです。
それを、1億2千万人以上の日本人が30年以上に渡って続けてきた。
「平成」という言葉が使われた延べ回数は気が遠くなる程の数になるはずです。
これだけ使えば、どう考えたって世の中に浸透していきますよね?
元号というのは特殊な言葉です。
わざわざ、政府が「使ってください」と言わなくても、使わざるを得ないものですから。
でも、皆さんの商標は違いますよね?
何もしなければ誰も使ってくれません。
だからこそ、まずは自分たちで使って、世の中に周知していく必要があるのです。
そういう意味で、商品やサービスとともに商標を発信していく広告宣伝活動は不可欠です。
名刺やカタログのようなアナログ的な手段だけでは不十分。
やはりネット上に積極的に情報発信をしていかないといけません。
そうすることで、初めて検索に引っかかり、多くの人の目に商標を触れさせることができます。
会社のホームページ、SNS、ブログ…。
こういったネット媒体に、商品やサービスとともに商標を露出させていく必要があるのです。
ブランドを確立するためには、その商標(会社名・商品名・サービス名等)の使用頻度を高めること、言い換えれば商標について情報発信をすることが必要なのです。
(3)アンタッチャブルな存在であった
理由の3つ目は、アンタッチャブルな存在であったことです。
誰にも侵されないアンタッチャブルな存在であれば、その存在感を失うことはないからです。
既に説明したように、「平成」は元号という特殊な使い方をする言葉です。
このため、競合相手にパクられたり、寄せられたりすることがありません。
でも、皆さんの商標(会社名・商品名・サービス名等)は競合他社に狙われているかもしれません。
スキあらばその名前を強奪し、強奪はしなくても紛らわしい名前を使って、皆さんのビジネスを侵食しようとしてきます。
だから、皆さんの商標をアンタッチャブルな存在にするには商標登録をすることを考えなければいけません。
指定した商品やサービスの範囲内で、その言葉を独占して他人の使用を排除する必要があるのです。
ブランドを確立するためには、その商標(会社名・商品名・サービス名等)をアンタッチャブルな存在にすること、言い換えれば商標を登録をして独占権で護ることが必要なのです。
まとめ
今日は、現元号の「平成」を例に、ブランドを確立するために取り組むべきことを検証してきました。
ポイントは、
(1)独自性のある商標を作ること(ブランド構築)
(2)商標について情報発信をすること(ブランド育成)
(3)商標を登録をして独占権で護ること(ブランド保護)
の3つです。
ブランドづくりには、ブランド構築、ブランド育成、ブランド保護の3つが全て必要だということですね。
どれが欠けてもブランドを作ることはできないのです。
「お金をかけて商標登録をしたのに、あまりその効果を感じられない」
そんなご相談を受けることがあります。
こういう方は、商標登録(ブランド保護)はしたけれども、他の2つ(ブランド構築、ブランド育成)の面が疎かになっています。
真のブランドを作りたければ、ブランド構築、ブランド育成、ブランド保護の3つにバランスよく取り組みましょう。
こういう取り組みは自分だけでやろうとするとなかなか難しいと思います。
ぜひ、商標とブランドの専門家・弁理士まで相談に来てください。
お待ちしています!
メディア掲載
この記事に関し、コラムニストの尾藤克之様から取材を受けました。
尾藤様の執筆記事はウェブメディア「オトナンサー」に掲載され、主要ニュースサイト「Yahoo!ニュース」、「ニコニコニュース」、「楽天WOMAN」等にも転載されています。
尾藤様、ご紹介頂き、ありがとうございました。
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— オトナンサー編集部 (@otonanswer) April 5, 2019