10年は長すぎる!ブランドは定期的に見直すべし

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クロスリンク特許事務所(東京都中央区銀座)所長、中小企業専門の弁理士・山田龍也(@sweetsbenrishi)です。

目次

10年は長すぎる!ブランドは定期的に見直すべし|スモールブランディングのヒント

「スモールブランディング」とは、中小企業・個人事業主等のスモールビジネスに特化したブランドづくりの手法です。

「スモールブランディングのヒント」では、スモールブランディングのヒントとなる、

● ブランド戦略
● 商標登録・商標権
● ネーミング・キャッチフレーズ
● その他、ブランドづくりに役立つ情報

についてざっくり解説します。

人気子役・寺田心くん出演のブックオフのCMが話題になっている

少し前に人気子役の寺田心くんが出演するブックオフのCMが話題になりました。
今日はこのCMを題材にブランドの定期的な見直しの必要性とその手法について考えてみましょう。

 

このCMはこんな内容です。

ブックオフの売り場に一人の男性客がやってくる。
そこには洋服やギター等、本以外の商品しか並んでいない。

これを見るやその客は

「ブックオフなのに本ねぇーじゃん!」

 

と嘆く。

ここに登場したのが店員役の心君。

顔をクシャクシャにして泣きながら、

「イケナイの? 蕎麦屋がカレー売ってるのに、本屋が服とか売っちゃ。」

 

と、子役ならではのあざとい演技で客に対抗する。

結局、その客は買う気もなかった服を買わされる羽目に。
してやったりの心君が満面の笑みで客を見送ったところでこのCMは終わります。

ブランドは定期的に見直すべし

このCMはブックオフが本以外の商品を扱っていることをアピールするためのCMです。
心君が本以外の商品を置くことに否定的な客をやり込めることでそのアピールには成功しています。

しかし、普通に考えれば、

「ブックオフなのに本ねぇーじゃん!」

 

という客の言い分の方が的を得ていると思いませんか?

実際、今までブックオフは、

「本を売るならブックオフ♪」

 

というCMソングで、本屋、中古本の買取りをメインに打ち出してきたわけですからね。
「本」という商品に「『ブック』オフ」というブランド名が強固に紐付いているわけです。

しかし、最近では本以外の商品を多く扱うようになってきた。
そのために、「ブックオフ」という看板(ブランド名)と実際の業務内容とが乖離してきている。

そんな状況なんだと思います。

このCMでは「ブックオフは本以外の商品も扱っているんですよ」ということをアピールして、そのギャップを埋めようとしています。
ブランド名に実際の業務内容を無理やり紐付けようとしているわけです。

しかし、このやり方はどちらかというと難易度が高い方法です。
業務内容に合わせてブランド名の見直しをする方がオーソドックスな手法なのです。

事業内容は時代とともに変わっていきます。
そうであれば、ブランドの方を定期的に見直すべきなのです。

 

実際、「ブックオフ」のように商品名やサービス名が入ったブランド名は事業拡張の足かせとなるケースがあります。
その商品やサービスのブランドだと限定的に解釈されてしまうからです。

そうならないようにするためには、事業を拡張させる過程でブランドを徐々に変更していくことも一考です。
商品名やサービス名に縛られないブランドにシフトさせていくということです。

そのような手法を採った代表例がスターバックスです。

1971年のロゴには「COFFEE」、「TEA」、「SPICES」の文字がありました。
これが、1987年には「COFFEE」だけになり、2011年には「COFFEE」の文字すらなくなっています(*1)。

こうすることで、コーヒーに縛られない多様な事業展開を図ることが可能となります。

10年は長すぎる!だから登録料の分割納付制度を利用する

ブランド名を商標登録した場合、商標権の権利期間は10年です。

そして、商標登録は更新することができます。
そのため、10年の権利期間が切れるタイミングでブランドの見直しを考える人もいるでしょう。
ひどい人になると、商標登録が済んでしまうと安心してしまって、商標のことなどすっかり忘れてしまっています(苦笑)

しかし、昨今、事業を取り巻く環境変化が激しくなっています。
事業や商品・サービスのライフサイクルも短くなっています。
この状況の中で10年という期間はかなり長いと思いませんか?

 

こんなときに利用したいのが登録料の分割納付制度です。
通常は商標登録時に10年分の登録料を納付し、商標権を付与してもらいます。

しかし、前半5年分だけの登録料を納付することもできるのです。
こうすると、商標権の権利期間10年のうち、前半5年の段階でブランドの見直しをすることが可能です。

そのブランドを継続使用する場合は、後半5年分の登録料を納付することで商標権を維持することができます。
一方、そのブランドを使用しない、別のブランドにリブランドするという場合には、後半5年分の登録料を納付しなければいいのです。
後半5年分の登録料を納付しない場合には商標権は前半5年を経過した時に消滅します。

 

5年ごとの分割納付は10年分一括納付と比べて料金が若干割高になります。

例えば、商品・サービスの区分が1区分の場合、

商標権設定時の登録料(10年分一括納付)  28,000円
商標権設定時の登録料(5年分毎の分割納付) 16,400円×2=32,800円

です。

でも、前半5年分しか商標権を使わないケースであれば、逆に割安になりますよね。

登録料の分割納付制度を頭に入れておくと、柔軟なブランドの見直しができるのです。

まとめ

今日は、人気子役・寺田心くん出演のブックオフのCMを題材として、ブランドの見直しについて考えてみました。

ポイントは、

(1)事業内容の変化によってブランドと事業内容が乖離する場合がある
(2)ブランドは定期的な見直しが必要
(3)登録料の分割納付制度を利用して、5年ごとにブランドを見直すことも一考

 

の3つです。

ブランドは生き物です。
定期的にその要否をチェックしましょう。
時代や事業内容に合わなくなったら、リブランディング(ブランドの再構築)をすることも必要ですよ!

参考サイト

(*1)スターバックスのロゴの変遷について

スターバックスのロゴデザインの歴史や意味と都市伝説|ロゴデザ

 

山田 龍也
この記事を書いた人
弁理士/ネーミングプロデューサー/テキスト職人。中小製造業によくある「良い商品なのに売れない」のお悩みをローテク製品の特許取得、知的財産(特許・商標)を活用したブランドづくり、商品名のネーミングで解決している。
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