iPhoneと鼻セレブの知財戦略は似ている? ~技術、デザイン、ブランドを組み合わせる知財ミックス戦略~

目次

はじめに

今日は、ものづくり系の中小企業におススメしたい考え方、知財ミックスのお話です。

「中小企業の知財戦略は偏っている」

2013年、特許(技術)、意匠(デザイン)、商標(ブランド)のいずれかを出願した中小企業は約33,000社ありました。

そのうち、特許を出願した企業は約10,500社、意匠を出願した企業は約3,000社、商標を出願した企業は約22,000社だそうです。

注目すべきデータは「特許、意匠、商標の全てを出願した企業の比率」です。中小企業は「特許、意匠、商標の全てを出願した企業の比率」が、大企業と比較して著しく低いのです。

ざっくり言うと、中小企業の場合、特許を出願する企業は特許だけを出願し、意匠や商標を出願しない傾向にあるわけです。

技術だけでは差がつきにくい時代になっている

「ものづくりで勝負しているんだから、特許を取りたい!」という気持ちはわかります。

しかし、最近、技術の優位性だけでは、物が売れない時代になっているという現実があります。そういう時代には、デザイン、ネーミング、ブランド力などの技術以外の要素が大事になってきます。

例えば、Appleの「iPhone」。皆がこぞって「iPhone」を買うのは何故でしょうか。

軽快な操作性などの技術面を評価して買う人もいるでしょう。しかし、「iPhone」のデザインの美しさやAppleブランドのスマートなイメージに魅力を感じて「iPhone」を買う人の方が、圧倒的に多いのではないでしょうか。

別の例を挙げるなら、王子ネピアの「鼻セレブ」。

「鼻セレブ」は、保湿剤として天然スクワランを使用した高級ティシュです。ふんわりしっとりとした肌触りで、いくら鼻をかんでも鼻が赤くなりません。花粉症の方には、無くてはならない必需品ですね(笑)

ところが、この「鼻セレブ」。技術的には優れているはずなのに、発売当初はあまり売れなかったそうです。

当初の商品名は、なんと「モイスチャーティシュ」!

あまりにありふれたネーミングです(笑) パッケージも水色1色のシンプルすぎるデザインで、インパクトに欠けるものでした。

それが、「鼻セレブ」という、ちょっと変わったネーミングと、動物の鼻をモチーフにした可愛らしいパッケージを採用したことで、爆発的なヒット商品となったわけです。

特許だけにこだわってはいけない

「iPhone」も「鼻セレブ」も、元々の優れた技術にデザインやネーミング、ブランド力などをうまく組み合わせることで、商品の価値を引き上げることに成功しています。

このように特許、意匠、商標をバランスよく組み合わせて、相乗効果を得るのが「知財ミックス」の考え方です。

残念ながら、中小企業の場合、特許を出願する企業は特許だけというように、一つの法区分に出願が偏る傾向にあります。資金的な問題もあるとは思いますが、大企業と比べると、特許とともに意匠・商標を活用しようという意識自体が低いのです。

これからの時代、特許だけにこだわっていてはいけません。「知財ミックス」の考え方を積極的に取り入れてみてください。そうすれば、「鼻セレブ」のように、デザインやネーミングをきっかけに、技術の優秀性が再認識されることもあるのです。

まとめ

1.物が売れない時代には、デザインやネーミングが大事。
2.特許、意匠、商標を組み合わせて相乗効果を得るのが「知財ミックス」。
3.「知財ミックス」により、製品の価値を引き上げることができる。

おまけ

下の記事に「鼻セレブ」のパッケージデザインの変遷が書いてあります。デザイン案の中には、人間の鼻をモチーフにしたものも! これを採用していたら、あそこまでのヒット商品にはならなかったかもしれませんね(笑)

「見せる書類」のテクニック 大ヒットを生んだ“見せる改革”「鼻セレブ」に学ぶインパクトの法則|日経Bizアカデミー BizCOLLEGE

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山田 龍也
この記事を書いた人
弁理士/ネーミングプロデューサー/テキスト職人。中小製造業によくある「良い商品なのに売れない」のお悩みをローテク製品の特許取得、知的財産(特許・商標)を活用したブランドづくり、商品名のネーミングで解決している。

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