無料データベース「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」を利用しよう! ~中小企業も自分で特許検索をした方がよい~

目次

はじめに

特許検索(特許調査)は特許申請の直前に弁理士に頼んでやってもらうもの、というイメージを持っていませんか?

今日は、自分で定期的に特許検索をすることのメリットと、無料の特許検索ツール「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」を使った、初心者にもできる簡単な特許検索の方法を紹介したいと思います。

自分で定期的に特許検索をするメリット

中小企業のお客様で、自分で特許検索(特許調査)をする方は、どちらかと言うと少数派です。特許を申請することを決めて特許事務所に相談に行き、そこで特許検索を依頼するという方も多いのではないでしょうか。

ただ、それはすごく勿体ないことなんです!

自分で定期的に(例えば、週に1回)特許検索をし、同業他社の特許の申請状況や特許の取得状況に目を光らせることで、以下のようなメリットがあるからです。

(1)特許権侵害のリスクを減らすことができる

定期的に特許検索をすれば、同業他社が自社技術と似た技術について特許を申請したことや、特許を取ったことを早い段階で知ることができます。その時点で弁理士に相談すれば、適切な対応策をとることができるため、特許権侵害のリスクを減らすことができるのです。

あなたの会社が特許を取る、取らないに拘らず、他社の特許権を侵害してしまう事態は避けなければいけません。

ものづくりをして製品を製造・販売をする以上、「うちは特許を申請しないから特許検索なんて関係ないよ!」とばかりも言っていられないのです。

(2)無駄な研究開発費を減らすことができる

また、定期的に特許検索をすれば、同業他社の技術開発の進捗状況やどの技術分野に関心を持っているかを知ることができます。

これらの情報を分析することで、完全に後手に回ってしまった技術については開発を断念する、他社がまだ着目していない技術の開発に注力するなど柔軟な戦略をとることができます。これにより、無駄な研究開発費を減らすことができるのです。

(3)研究開発が促進される

下の表は、発明者が研究の着想(発明のネタ)を思いつくときに、どんな情報源を重要だと思っているかをまとめたものです(*1)。

この表を見れば一目瞭然ですね。多くの発明者は特許文献を見ている時に、発明のネタを思いついているのです。

特許文献を見ることで、「自分だったらこうするのに!」、「ここを改良すればもっと良くなるぞ!」というようにイメージが喚起され、発明のネタを思いつきやすくなるのだと思います。

発明のネタを思いつく数が増えていけば、あなたの会社の研究開発は間違いなく促進されます。

特許検索のためのツール

私は特許検索のためのツールとして、「特許情報プラットフォーム<J-PlatPat>」をおススメしています。

J-PlatPatは、経産省管轄の独立行政法人が運営するデータベースです。特許、実用新案、意匠、商標の公報が蓄積されていて、同業他社が何を申請し、どんな権利を取っているのかを検索することができます。

少し前までは「特許電子図書館<IPDL>」という名前でしたが、今年の3月にリニューアルされました。IPDLに比べると、インターフェースが改良され、使い勝手が向上しています。無料で使えるのも嬉しいところです。

J-PlatPatを使ってみる

(1)J-PlatPatのサイトを開く

まず、下のバナーをクリックして、J-PlatPatのサイトを開いてください。

下のイメージのような初期画面が表示されるはずです。

(2)メニュー選択

初期画面の「特許・実用新案」のタブにカーソルを合わせると、下のイメージのようなメニューが表示されます。

このメニューの中の「特許・実用新案テキスト検索」を選択してクリックしてください。

(3)検索項目の選択・入力

特許・実用新案テキスト検索」を選択してクリックすると、下のイメージのような検索画面が表示されます。

① 公報の種別の選択

公報には、「公開特許公報」と「特許公報」があります。「公開特許公報」は、特許が申請された技術の内容を公開する公報、「特許公報」は、特許を与えられた技術の内容を公開する公報です。

最初は、図のように「特許公報」の方にだけチェックを入れることをおススメします。「特許公報」には、既に特許を与えられた技術の内容が公開されているため、良質な特許情報を得られるからです。

「公開特許公報」には、審査が終わっておらず、特許を与えられるかどうかわからない技術も含まれています。技術の質的に玉石混淆で、公報の数も多いので、初心者が最初からこれを全て見るのは大変だと思います。

② 検索項目・検索キーワードの設定

図のように、検索項目として「出願人/権利者」を選択し、検索キーワードとして、同業他社の名前を入力することをおススメします。

J-PlatPatは、google検索のようなテキスト検索もできるのですが、初心者がテキスト検索をしてもなかなか欲しい特許情報に辿りつけません。特許の世界では「プリンタ」のことを「画像記録装置」、「画像形成装置」と書くなど、独特な用語を使う場合があるからです。その点、同業他社の会社名なら、わかりやすいですね。

ただし、以下の点には注意する必要があります。

特許公報には特許になった時点の会社名が記載されています。ですので、合併や名称変更で会社名が変わっている場合には、可能性のある会社名をいくつか入力した方がよいです。また、子会社や関連会社が特許を取っている可能性もあります。こちらについても調べた方がよいでしょう。

図のように、「OR検索」にしておけば、いくつかの会社名を同時に入力して検索することもできます。

今回は、あの「大塚家具」について検索してみます。

③ 検索結果の表示

項目とキーワードを設定できたら、検索画面下側にある「キーワードで検索」をクリックし、さらに表示された画面の「一覧表示」をクリックしてください。

下のイメージのような検索結果が表示されます。

4件ヒットしました。ただし、4件目の筆頭出願人である「大塚家具製造販売」は、あの「大塚家具」とは無関係の会社です。ですので、あの「大塚家具」に関する特許は1件目から3件目までの3件です。

3件目の「特許5572189」の文献番号をクリックしてください。下のイメージのように文献の内容が表示されます(一部抜粋)。

この特許は、家具の転倒防止用装置に関するものですね(発明者には、あの久美子社長も名を連ねています!)。

特許公報には特許を取った時点での情報しか記載されていません。ですので、この特許が今も有効かどうかについては、右上の「経過情報」のボタンをクリックして確認した方がよいでしょう。

特許公報の場合、デフォルトの設定では、「書誌」と「請求の範囲」が表示されます(公開特許公報の場合、それプラス「要約」)。

「書誌」には、出願日や発明者の名前などの、技術内容以外の形式的な事項が記載されています。

「請求の範囲」には、下のイメージに示すような文章が記載されています(一部抜粋)。

この「請求の範囲」の文章が特許の権利範囲を示していて、特許の申請書類の最も重要な部分なのです。

ですので、まずは、週に1回、同業他社の特許検索をし、特許公報の「請求項1」に、ざっと目を通すこと、そして、あなたの会社の技術と似ているかどうかを確認すること、から始めてみてください。

雑誌感覚でパラパラと特許情報を眺めてみるだけでもよいのです。この作業を欠かさず行うことが、あなたの会社の知財戦略の第一歩になるはずです。

まとめ

1.定期的に特許検索をすることで、特許権侵害のリスクを減らすことができる。
2.特許検索のツールとしては、「J-PlatPat」を使うべし。
3.週に1回、同業他社の特許検索をし、特許公報の「請求項1」を見るべし。

参考サイト

(*1)経済産業研究所編「発明者から見た日本のイノベーション過程:RIETI 発明者サーベイの結果概要」<著者:長岡 貞男、塚田 尚稔>、P33、「研究の着想と実施に非常に重要な知識源」<図22>より引用。

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山田 龍也
この記事を書いた人
弁理士/ネーミングプロデューサー/テキスト職人。中小製造業によくある「良い商品なのに売れない」のお悩みをローテク製品の特許取得、知的財産(特許・商標)を活用したブランドづくり、商品名のネーミングで解決している。

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