はじめに
潰れかかった老舗の足袋業者「こはぜ屋」が新規事業としてマラソン足袋の開発に取り組み、悪戦苦闘しながら再生していく様子を描くドラマ「陸王」(*1)。
第4回の放送では、カリスマシューフィッター村野(市川右團次)が「陸王」の開発に合流。ついに「陸王」に足を通した茂木(竹内涼真)が復活への手応えを掴む様子が描かれました。
今日は第4回の放送内容を参考に、製品を継続的に売っていく方法、ロングセラー製品を作るための条件について考えてみました!(ネタバレあり)
ドラマ「陸王」第4回のあらすじ
村野(市川右團次)はアトランティス社に所属するカリスマシューフィッターだ。
選手のことを第一に考え、その選手に最適のシューズを提供することで、選手から絶大な信頼を受けている。
しかし、会社の利益を第一に考える営業部長・小原(ピエール瀧)と激しく対立し、アトランティスを退職してしまう。
スポーツショップ経営者・有村(光石研)は村野が「陸王」開発のキーパーソンになると考え、村野を宮澤(役所広司)に紹介する。
そこで、宮澤の「陸王」開発にかける熱い思いを聞き、村野はチーム「陸王」への参加を表明する。
村野の効果的なアドバイスもあって、遂に「陸王」茂木裕人モデルが完成する。
このシューズを履いた茂木(竹内涼真)はニューイヤー駅伝のメンバー選考レースで快走し、怪我からの復活に手応えを掴むのであった(*2)。
製品を継続的に売る! ロングセラー製品を作る条件
米国の一大スポーツメーカー・アトランティスは莫大な資金を投入して、ランニングシューズ「R2」を開発し、ヒット商品にしています。
しかし、第4回の放送では、アトランティスがこのヒット商品「R2」の売れ行きに悪影響を及ぼしてしまいそうな間違った行動をいくつもやらかしているんですよね(笑)
アトランティスを反面教師にして、製品を継続的に売る方法、ロングセラー製品を作る条件について考えてみましょう。
(1)製品を熟知したキーパーソンの存在
合理主義で米国本社の意向や会社の利益を第一に考える小原と、選手ファーストで人情味にあふれる職人肌の村野。
互いに相容れない存在だったのでしょう。
小原は「R2」の仕様に細かく口を挟む村野を他の社員の前で激しく叱責。
アトランティスの姿勢に失望した村野を退職に追い込んでしまいました。
村野は「R2」の開発担当者ではありません。
しかし、選手の身体と「R2」を熟知し、その開発を影で支えてきたキーパーソンと言えます。
アトランティスにとって、キーパーソン・村野の喪失は計り知れないダメージとなって、今後の「R2」に大きな影を落としていくことになるはずです。
製品を継続的に売り、ロングセラー製品を作るために、村野のようなキーパーソン、職人肌の人材は不可欠です。
第5話の中でも、村野が茂木のライバル・毛塚のソールの僅かな摩耗を敏感に察知し、改良を打診するシーンがありました。
製品に対する仔細な知見や製品に対する感覚・感性。職人ならではの気付きが製品の品質や性能を維持し、向上させるためには重要なのです。
特に中小企業の場合、数少ないキーパーソンが製品開発の中枢を担っています。
そして、製品に関する情報が資料ではなく、人に集積されていることが殆どです。
そのキーパーソンが離脱してしまえば、重大な製品情報を失うことになり、製品を継続的に供給することさえ難しくなるかもしれません。
そうなってしまうと、会社が受けるダメージは大企業・アトランティスの比ではありませんよね。
小原のように、ちょっと小うるさい職人を疎ましく思い、邪険に扱っていると、とんでもないしっぺ返しを食うことになるので注意が必要です。
キーパーソンの持っている情報をできる限り、資料として残す作業を行うとともに、キーパーソンに適切な報酬や待遇を与えるなど、離脱されてしまわないよう処遇しておくことも大事です。
(2)継続的な検討とマイナーチェンジ
製品が完成したとしてもそれが100%の出来で、どこも直す必要がないということはまずありません。
その時点でベストのものができたとしても、使っていくうちに不十分な部分や改良すべき点が見えてくるものです。
「R2」の場合であれば、茂木の怪我とソールの厚さの関係もしかり、毛塚のソールのかかとの減りもしかり。
製品を継続的に売り、ロングセラー製品を作るためには、製品の使用状態をつぶさに観察し、或いはユーザーの声をフィードバックし、製品を継続的に検討する謙虚な姿勢が大事ということです。
必要であれば、マイナーチェンジをし、製品を成長・進化させなければなりません。
製品開発に終わりはありません。
真摯な態度で製品と向き合い、常に性能・品質の向上を目指して努力することがロングセラー製品を作ることに繋がるのです。
(3)ユーザーに寄り添う姿勢
小原は開発のための資金、時間、手間を惜しんで、茂木のシューズのカスタマイズを拒否し、サポート契約を打ち切るという無慈悲な判断をしました。
ここには、大企業・アトランティスの看板やヒット商品「R2」の上にあぐらをかく小原の不遜な態度が垣間見えます。
ここで、「茂木の怪我はひょっとしたらシューズに原因があるかもしれない」という発想が少しでもあれば、こういう対応にはならなかったでしょう。
ユーザー、特にリピーターはメーカー側が小原のような態度をとることに対して敏感です。
そのような態度が大事なユーザーやリピーターを失い、製品の売上を落としていく原因になるので注意しなければなりません。
言い換えれば、メーカー側がユーザーに寄り添う姿勢を示すことで、製品を継続的に使ってもらうことができます。
これこそがロングセラー製品を産み出すことに繋がるのです。
まとめ
以上説明したように、製品を継続的に売り、ロングセラー製品を作るためには、
- 製品を熟知したキーパーソンの存在
- 継続的な検討とマイナーチェンジ
- ユーザーに寄り添う姿勢
が大事です。
職人の知恵、弛まぬ開発努力、ユーザーファーストの姿勢。これらがロングセラー製品を産み出すのです。
おまけ(第4話のツッコミどころ)
茂木裕人モデルの「陸王」は村野が持っていた茂木の足型から作られました。
本人の足型から作っているのでフィット性が高く、茂木の弱点を補う構造になっていたはずです。
ただ、この足型はおそらく、村野がアトランティス在籍中に収集したデータです。
そうすると、村野の行為はアトランティスの営業秘密を勝手に持ち出す行為であり、不正競争防止法に違反するおそれがあります。
安易に持ち出されたデータを使ってしまうと、元の所属先との間でトラブルになります。
会社の信用を落とすことにもなりかねませんので要注意です。
データ目当てのヘッドハンティングは以ての外ですが、ハンティングした人が自分の意思で持ち込んでしまうことも考えられます。
きちんとチェックしてくださいね!
参考サイト
(*1)日曜劇場『陸王』|TBSテレビ
(*2)あらすじ|TBSテレビ:日曜劇場『陸王』
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