はじめに
ドラマ「下町ロケット」に学ぶものづくりのヒント。
各回のドラマのシーンを振り返り、ものづくりのヒントになりそうな事項を紹介していきます(ネタバレ防止のため、一週遅れで配信しています)。
今日は第6回の放送の中から、新規事業立ち上げを成功させる3つのポイントについて解説します。
ドラマ「下町ロケット」第6回プレイバック
財前(吉川晃司)は大型ロケットの打ち上げ事業からその周辺ビジネスを担当する部署に転属となる。
その第一弾として挑んだのが準天頂衛星「ヤタガラス」を用いた無人農業ビジネスであった。
財前はこのビジネスを進めるために、佃(阿部寛)に対し、農機具用のエンジンおよびトランスミッションの供給を申し出るとともに、佃の学友で、このビジネスのキーマンとなる野木(森崎博之)の説得を依頼する。
野木は北海道農業大学の教授で、無人農業ロボット研究の第一人者。
しかし、財前からの協力要請を頑なに拒否していたのだ。
佃は財前の要請を受けて北海道に飛び、野木の説得を試みる。
しかし、野木には、自分の開発した技術を共同研究先の企業に横取りされ、勝手に実用化されてしまった過去があり、民間企業と手を組むことに抵抗感を持っていた。
佃は野木の心中を察し、説得することができなくなってしまう。
新規事業立ち上げを成功させる3つのポイント
新規事業の立ち上げは企業にとっての必須の課題と言えるでしょう。
ビジネスにはライフサイクルがあります。
今、好調な事業もいつかは衰退するということです。
新たな事業を立ち上げ続けることが、企業を維持するために不可欠な条件なのです。
しかし、新しいことを始めるのはさほど容易ではありません。
以下、新規事業立ち上げを成功させるためのポイントについて考えてみます。
(1)技術的資産
新規事業立ち上げを成功させるための第1のポイントは「技術的資産」です。
新たな分野に参入するということは、その分野に関しては素人ということです。
先行して参入していた会社の方がその分野に固有のノウハウを蓄積していて一日の長があるわけです。
そのような状況の中で先行者に勝つためには、先行者が持っていない固有の強み、技術的なアドバンテージが必要となります。
財前が所属する帝国重工の技術的資産。
それは自社で打ち上げた準天頂衛星「ヤタガラス」と、その「ヤタガラス」から得られる高精度の測位情報です。
高精度の測位情報は無人農業ロボットを正確に動かすために必要不可欠な技術と言えます。
既に「ヤタガラス」の測位情報を利用して研究を行っている野木はこんなことを言っています。
無人農業ロボットの第一人者である野木にも認められる程、高精度の測位情報。
この情報自体は他の会社にも提供されるものなのかもしれません。
しかし、「ヤタガラス」を熟知し、最も上手に使いこなせるのが帝国重工なのです。
(2)人脈
新規事業立ち上げを成功させるための第2のポイントは「人脈」です。
新規事業を立ち上げる際に自社で賄えないものは他社から調達してこなければなりません。帝国重工が無人農業を展開する上で自社で賄えないのは、
- 農機具専用の小型エンジンとトランスミッション
- 農機具を無人制御するためのシステム
です。財前は佃にこんな依頼をしています。
佃製作所は大手農機具メーカー・ヤマタニに小型エンジン「ステラ」を納入している実績があります。
農機具用トランスミッションの開発も進めている真っ最中。
そして、野木は佃の学友で、無人農業ロボットの第一人者。
農機具の無人制御システムを長年の研究してきてノウハウを蓄積しています。
財前は盟友・佃との人脈、ホットラインを活かして、帝国重工には欠けているこの2つを調達しようとしたわけです。
未知の分野に参入するのであれば、その道の専門家と手を組んだ方が早く確実に成果を出せます。
キーマンにいち早く接触し、仲間として取り込むために、人脈が重要な要素の一つであることは間違いないのです。
(3)事業にかける思い
新規事業立ち上げを成功させるための第3のポイントは「事業にかける思い」です。
財前がこの新規事業を企画したのは、日本の農業の将来に対する強い危機感からでした。
財前は佃に対し、この事業にかける思いをこんなセリフで吐露しています。
財前は「日本の農業」という大局的な見地から、その未来を救いたいという強い思いをもってこの事業を企画立案しています。
そのような強い思いを持った事業であれば、企業にしっかりと根を張り、将来を担う大きな事業として育っていくのではないでしょうか。
新規事業には困難がつきものです。
事業に対する強い思いがなければ、その困難を乗り越え、大きな成果を上げることなど期待できないのです。
まとめ
以上説明したように、新規事業立ち上げを成功させる3つのポイントとしては、
- 技術的資産
- 人脈
- 事業にかける思い
の3つが大事であると考えます。
物、人、気持ちと言い換えても良いかもしれません。
財前から無人農業ビジネスを引き継いだ的場(神田正輝)は人脈や信頼関係など見向きもしない男です。
下請けを道具としてしか捉えず、容赦なく切り捨ててきました。
また、自分の出世にしか興味がなく、事業に対する思いなど、これっぽっちも持ち合わせていません。
さらに、的場のコバンザメ・機械事業部製造部長の奥沢(福澤朗)は自前主義に走り、佃製作所をはじめとする下請け企業の力を見下しています。
3つのポイントを思いっきり外しているこの二人。
新規事業の立ち上げに成功できると思えないのは私だけでしょうか(笑)
「アゴラ」、「グノシー」に掲載されました!
この記事に関し、コラムニストの尾藤克之様から取材を受けました。
尾藤様の執筆記事は言論プラットフォーム「アゴラ」に掲載されました。
また、ニュースアプリ「グノシー」にも転載されています。
尾藤様、ご紹介頂き、ありがとうございました。
弁理士が解説!『下町ロケット』に学ぶものづくりのヒント|アゴラ
弁理士が解説!『下町ロケット』に学ぶものづくりのヒント|グノシー
参考サイト
(*1)日曜劇場『下町ロケット』|TBSテレビ
(*2)あらすじ|TBSテレビ:日曜劇場『下町ロケット』
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