知財エンタメドラマ「それパク」が視聴率的には爆死。もう、「知財のエンタメ化」は限界なのではないか?
それでも、僕は「知財がテーマのコンテンツ」を発信し続けたいと思っている。現在、「エンタメ化」以外のアプローチを検討している。その一部を紹介したい。
今日、7月1日は「弁理士の日」。
明治32(1899)年7月1日、弁理士法の前身である「特許代理業者登録規則」が施行されました。
弁理士の日について|日本弁理士会
日本弁理士会では、その施行日である7月1日を「弁理士の日」に制定しています。
そして、弁理士の日といえば、この企画。ドクガクさんのブログ「独学の弁理士講座」の「弁理士の日記念ブログ企画2023」です。弁理士や知財業界のブロガーたちが一堂に会し、共通のテーマで記事を作成するという企画です。
今年のお題は「知財がテーマのコンテンツ」。この記事もそのお題に沿って記載しています。
知財ドラマ「それパク」の爆死に、「知財エンタメ化」の限界を見た
今年4月に知財エンタメドラマ「それってパクリじゃないですか?」(毎週水曜よる10時。NTV系)がスタートした。
一般の人には馴染みがない「知的財産(知財)」がテーマとして取り上げられ、「弁理士」が活躍するドラマ。
主演は芳根京子、相手役はジャニーズWESTの重岡大毅。常盤貴子、ともさかりえ、赤井英和といった有名どころも脇を固める。一般の人には馴染みがない「知財」や「弁理士」を世間に知ってもらえるチャンス。そう期待した人も多かったのではないか。
知財業界の人達はブログやSNSでこのドラマをこぞって取り上げた。僕も一話ごとに、弁理士視点の解説記事を書いている。
ところが、だ…。
世帯平均視聴率(%) | |
---|---|
第1話 | 6.0(最高) |
第2話 | 4.5 |
第3話 | 4.3 |
第4話 | 3.4(最低) |
第5話 | 4.2 |
第6話 | 3.7 |
第7話 | 3.7 |
第8話 | 4.3 |
第9話 | 3.9 |
第10話 | 4.3 |
(ビデオリサーチ調べ)
このドラマ、第1話こそ6.0%を獲得したものの、その後は3-4%台をウロウロ。最終第10話を4.3%でフィニッシュ。結局、最高視聴率は初回第1話の6.0%。視聴率的には「爆死」と言っていい。
僕自身はこのドラマ、面白く視させてもらったんだよ。でも、それは僕が「弁理士」で、「知財業界の人」だからなんだろうね。テレビの影響力を使っても、世間の人に「知財」や「弁理士」に関心をもってもらうことはできなかった、ということだ。
これは私見だけれども、
知財をエンタメ化すれば、知財や弁理士の世間的な認知度が上がるんじゃないか?
みたいな妄想は捨てた方がいいんじゃないの?
だって、あのキュートな芳根京子ちゃんを投入してもうまくいかなかったんだぜ。何か他に方法ある?(苦笑)
思い返せば、知財のエンタメ化は、「下町ロケット」が頂点だったのかもしれない。
もう、無理に知財をエンタメ化しなくてもいいよ。
それでも、僕は「知財がテーマのコンテンツ」を届け続ける
僕は「知財がテーマのコンテンツ」が要らない、と言っているのではない。
むしろ、「知財がテーマのコンテンツ」は作り、届けなければいけないと思っている。知財を必要としている人は少なからずいるし、その人達に情報が十分に届いていないとも感じているから。
ただ、「知財がテーマのコンテンツ」を届けるのに、知財をエンタメ化する必要はないでしょ、少なくとも僕はやるつもりはないよ、ということが言いたいだけ。
弁理士会組織で知財メディアを作る
実は今まさに、「知財がテーマのコンテンツ」を作ることを検討しているんですよ。しかも公務だから逃げられない(苦笑)
日本弁理士会の地方組織「関東会」。そこに、「中小企業・スタートアップ支援委員会」という委員会があります。
ここの第6部会「(特命)オウンドメディア刷新部会」という、ちっぽけな部会で部会長を務めています。
この部会のタスクは「関東会」の、「中小企業・スタートアップ支援委員会」の情報発信拠点となるオウンドメディアを作ること。より具体的に言えば、現在、関東会ウェブサイトの中で公開されている「知的財産ナレッジ」の有益性を高めるため、サイトリニューアルをすることです。
昨年、委員長からこの仕事を仰せつかり、準備を進めてきました。
昨年はメンバー2.5人の小所帯、予算はゼロ。現サイト、特許庁や弁理士会関連のサイトの実態調査に留まっていて、今年からが本格稼働という感じです。
メディアづくりの仲間を集める
今年度、初めに取り組んだのがメンバーの拡充。
委員長も含めて2.5人の陣容ではとにかくアイデアが乏しい。ということで、メンバーを2.5人から5人に倍増した。
新しい切り口のサイトを作るには自ら情報発信に取り組んでいる人、情報発信に精通していて、それに対するアイデアを出せる人材が必要と考えて、
YouTube「ゆるカワ♡商標ラジオ」でもおなじみの岡村先生や、
知財業界では知る人ぞ知る淡路町知財研究会・主宰者の一人、Moccoさんこと、芝田先生にもお手伝いいただいている。
やはり、昨年に比べるとディスカッションが活発になっていると感じる。僕もツッコまれることが増えた(笑)
「なるほど…。」と思う意見も多く、とても参考になる。いい傾向だよ。
メディアづくりの予算を確保する
ウェブサイトを作るのに予算ゼロではどうしようもない。委員長に頑張ってもらって、今年はなんとか予算を確保することができた。
とはいえ、うん十万のレベル。弁理士の公的機関だよ。普通の事務所だってウェブサイトを作ろうと思ったらもう少し予算を捻出すると思うけどね(苦笑)
まぁその程度の重要度の事業だと思われているんでしょう。実績もないから仕方ないか。この予算でサイトのトップページくらいはリデザインできると思う。
メディアのPV(ページビュー)を増やし、CV(コンバージョン)につなげる
僕はウェブサイトは「見られてなんぼ」だと思っている。
PVを増やすことはそれ自体が目的ではないのだけど、ある程度は増やす必要があると思っている。サイトを閲覧してくれる母数を増やす。そこができないと、もともと少ない、知財を必要としている人に届かないから。
今、弁理士会関係のサイトを調査しているけど、この点は致命的だね。うちの倍の予算をかけて作ったというサイトを調べてみたけど、PVが検出限界以下だよ。まるで見られてない。こういうことを言うと、「PV以外にも意義がある」と反論してくる人がいるんだけど、誰にも見られないウェブサイトの意義があるなら教えて欲しいね。
あと、大事なのは折角、サイトに訪れた人をロストしないこと。これも僕の私見だけれども、サイトを作る意義はサイトを見てくれた人に何某かの行動を起こしてもらうためだと思っている。
サイトを見にきて、「面白かった!」じゃ不十分なんだよ。弁理士に相談するでも、弁理士のセミナーに行ってみるでも何でもいい。そういう「行動」を喚起させること、そこをCVとして設定できるといいね。
そういう意味では弁理士会系のサイトは出口戦略がはっきりしないのが多いと感じる。
メディアのターゲットを明確に
知財コンテンツを届ける相手を誰にするのか。ここが現在、最大の検討ポイントになっている。
うちの委員会の成り立ちから考えれば、中小企業、スタートアップ企業にはなるんだろうね。ただ、一言に「中小企業」と言ってもめちゃくちゃ広い。職務階層で言えば、経営者、知財実務者、現場レベルの人…。企業サイズや業種も様々。狙い所を間違えると、誰にも刺さらなくなる。
現在の検討状況では、「ペルソナ」のような細かい設定は難しいし、不要だろうと。もう少し、(知財に関する)お悩みの属性で切り分けられないか、なんて話が出ている。知財知識としてはビギナーレベルの人が対象になるんだろうけど、ただ知財のことを知りたいというよりも、「事業に必要だから」という考えで情報を集めいている人を狙いたい。
知財コンテンツの問題点
専門家である我々、弁理士が下々の者たちに「知財」を教えてしんぜよう。
冗談ではなく、まだまだこういうコンテンツが散見される。自分では気づかないのかもしれないが、上から目線でビギナーにはハードルが高い、とっつきにくいコンテンツが多い。まぁ、その反動が「知財のエンタメ化」だったのかもしれない。でも、アプローチの仕方はそれだけじゃない(笑)
部会内で出ていたのは、
- 視点を発信者側から受信者(読者)側に切り替える
- 理論より事例を
- 総花的にせず、一部の狭い人でもいいから深く刺さるものを
など。発信側の都合だけでコンテンツを作っていれば、見てもらえないのは当たり前だと思う。
メディアづくりのスケジュール
このメディアは3年計画で考えている。初年度の今年は第一期工事。
- サイト構成の骨組みを作る
- トップページデザインのリニューアル
が中心になる。今年の末には新しいデザインが公開できる予定です。お楽しみに。
知財ドラマが爆死。もう知財のエンタメ化はいらないのまとめ
知財のエンタメ化はもういいんじゃないか。それでも、知財がテーマのコンテンツは必要だから、エンタメ化とは違うアプローチでメディアを作っていきますよ、というお話でした。
まぁ、公的な組織の中でやっていることなのでね。色々と異論・反論も出てくるでしょう。スムーズには進まないかもしれない。それでも、何か斬新なアプローチのメディアを作っていけたらいいなと思っています。
批判は甘んじて受ける(笑)
では、また次の投稿で。
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