はじめに
先日、下記の記事で、私が成功事例を分析して類型化した、ヤマダ式「7つの差別化戦略」を紹介しました。
今日は、この「7つの差別化戦略」の中から「戦略②:デザインで差別化」のメリットと事例を紹介したいと思います。
「戦略②:デザインで差別化」の意義
「デザインで差別化」は7つの戦略の中でも「ターゲットの感情を動かす」という点において最も効果的な戦略です。
美しいデザイン、洗練されたデザイン、キュートなデザイン。
デザインの良い商品は理屈抜きで見る人の感情を揺さぶります。デザインは心で感じることができるのです。技術のように頭で理解する必要がありません。
デザインは「ターゲット」の感情にダイレクトに訴えかけることができる点で非常に効果的なツールなのです。
現在は技術のキャッチアップが速く、技術で差別化を図ることが難しい時代です。
「デザインで差別化」によれば、たとえ商品の機能が同じであっても(もっと言えば機能が多少劣っていても)差別化を図ることができるというメリットがあります。
同じ機能であれば、デザインがよいものを選びたくなるのが人情だからです。
【事例4】「鼻セレブ」(王子ネピア)
商品名「鼻セレブ」
キャッチフレーズ「ダブル保湿のうるおいティシュ」
引用元:http://www.nepia.co.jp/product/homeuse/celebrity/
最初の事例は王子ネピアの「鼻セレブ」です。
「鼻セレブ」は天然由来スクワランなどの保湿剤が配合された、柔らかく肌触りのよい高級ティシュです。水(潤い、保湿)をイメージさせる薄い水色をベース色とし、動物の鼻をあしらった可愛らしいパッケージが印象的です。
この「鼻セレブ」のパッケージデザインについては幾多の試行錯誤がありました。
発売当初は水色一色のパッケージ(全くインパクトなし)。次は人間の鼻をあしらったパッケージ(一見するとグロテスク…)。
どちらもあまり売れませんでした。
これを
● 動物の鼻をあしらったデザインに変えたこと
● 商品名を「モイスチャーティシュ」から「鼻セレブ」に変更したこと
をきっかけにヒット商品となりました。
「鼻セレブ」の場合、保湿ティシュ自体は品質の良い優れた商品でした。でもその良さは世間にはあまり認知されていませんでした。
デザインがキッカケとなって優秀な技術が認知され、差別化に成功したのです。
【事例5】「iPhone」(アップル)
商品名「iPhone」
キャッチフレーズ「これが、7」(「iPhone 7」)
引用元:http://www.apple.com/jp/iphone/compare/
2番目の事例はアップルの「iPhone」です。
「iPhone」といえば、その洗練された美しいデザインが印象的です。形状は勿論、質感や色調などにもオリジナリティがあり、中身の技術的な内容はわからなくても思わず手に取ってみたくなる商品です。
故・スティーブ・ジョブズはPhoneのデザインに異常なこだわりを持っていたと言われています。
通常、工業製品は生産性が考慮され、工場で作りやすい形状、構造に設計されます。
しかし、「iPhone」は生産効率を完全に無視した作りになっているそうです。例えば4本のビスを同じ方向にねじ込む構造なら製造するのが楽ですが、デザインを優先させるために1本1本のビスを違う方向に打ち込んでいたりする。
妥協を許さない作り手泣かせの構造になっているのです。こうした「こだわりのデザイン」がターゲットに理解されているからこそ、アップル製品にはコアなファンが付いているのです。
「iPhone」のデザインはもはや1つの商品のデザインを越えて、アップル固有のデザインコンセプト(アップルらしさ)、アップルのブランドイメージを象徴するものとなっています。
ここまで行けば差別化戦略は大成功と言えるでしょう。
まとめ
「デザインで差別化」は
● 見るだけでその良さを伝えることができる
● ターゲットの感情に訴えかけることができる
● 技術的な優位性を必要としない
という意味で、非常に有効な差別化戦略です。
技術のキャッチアップが速い現代においては特に活用したい戦略の一つです。
オススメの記事
「鼻セレブ」と「iPhone」についてはこちらの記事もどうぞ。