はじめに
潰れかかった老舗の足袋業者「こはぜ屋」が新規事業としてマラソン足袋の開発に取り組み、悪戦苦闘しながら再生していく様子を描くドラマ「陸王」(*1)。
第3回の放送では、飯山(寺尾聰)と大地(山崎賢人)が特殊素材・シルクレイをマラソン足袋のソールに適した硬さの材料に改良するという課題に取り組み、寝る間も惜しんで試作を繰り返す様子が描かれました。
今日は第3回の放送内容から、画期的な新製品を開発するためのアイデアやネタはどこで見つければよいかについて考えてみましょう!(ネタバレあり)
ドラマ「陸王」第3回のあらすじ
シルクレイは、繭を高温で煮て溶液化し、その溶液を冷却圧縮することにより製造される特殊素材だ。
こはぜ屋の四代目・宮澤(役所広司)はマラソン足袋のソール用素材としてシルクレイを採用することを決め、シルクレイの特許権者・飯山(寺尾聰)を技術顧問として迎え入れる。
早速、開発に取り掛かった飯山だったが、シルクレイがソール素材としては硬すぎるという課題が発覚する。
飯山と助手を務める大地(山崎賢人)は寝る間も惜しんでシルクレイの改良に取り組むものの、硬さを制御する条件の糸口すら見つけることができない。
万策尽きたかに思ったその時、飯山はシルクレイの硬さを制御する条件が今まで着目していた冷却圧縮の条件ではなく、繭を煮る温度ではないかと閃く。
そして、遂にソールに適した硬さのシルクレイを得ることに成功する(*2)。
新製品開発のアイデアはここを探せ!
第3回の放送の見せ場は、なんといっても「改良シルクレイ」の完成です。
これで漸く、画期的な新製品であるマラソン足袋「陸王」の開発に目処が立ちましたからね。
飯山と大地は何度も試作を繰り返すものの失敗の連続。
ひょんなことからアイデアを閃き、改良シルクレイを完成させることに成功しました。
ものづくりの世界では一つのアイデアが技術的なブレイクスルーを起こし、画期的な新製品が産み出されるということがよく起こります。
そして、そのようなアイデアは意外なところに埋もれているものです。
第3回のシーンを振り返りながら、画期的な新製品を開発するためのアイデアやネタがどこに埋もれていたのか確認しておきましょう。
(1)誰かが途中で諦めた製品
マラソン足袋は、こはぜ屋の先代が開発に取り組んでいたものの資金的な問題から志半ばで開発を断念した製品です。
このような誰かが途中で諦めた製品には画期的な新製品を開発するためのアイデアが埋もれている場合があります。
誰かが開発を目指していたということは画期的な新製品を開発することができる可能性があったからです。
そして、その時、開発を諦めたからといって、製品として成功する可能性、技術として成立する可能性がない、というわけではありません。
- 検討が不十分だった、やり尽くしていなかった(きちんと最後まで検討すればできたかもしれない)
- 資金不足で断念した(資金を注入して継続すればできたかもしれない)
- 当時の技術レベルでは解決することができない問題があった(今の技術ならできるかもしれない)
あと少し開発を続けていれば成果が出る。
その直前の段階で開発が放棄されてしまった可能性もあるわけです。
コンセプトは素晴らしいけれど、たった一つの技術的課題を解決することができないために製品が未完成に終わる。
よく聞く話です。
だから、その人が見つけられなかった「何か」をあなたが足す。
その「何か」によって画期的な新製品が一気に完成するという可能性は十分あるのです。
(2)異なる分野の素材や技術
マラソン足袋は素肌感覚で履くことができ、怪我をし難いミッドフット着地を促すという今までのランニングシューズにはないメリットがあるものの、ソール素材の耐久性という技術的な課題を抱えていました。
この課題を解決したのが特殊素材シルクレイです。
しかし、シルクレイはソールのために開発された素材ではありません。
(第2回の放送で、全米No.1の化学メーカー・シカゴケミカルが船舶の構造材料として使用することを念頭に、飯山と特許使用契約を交渉するシーンがありました)
世の中にはシルクレイのような優れた素材や技術が山ほどあります。
しかし、それらは特定の用途でしか使われていないことが殆どで、他の分野の人はそのような素材があることすら知りません。
自分達が開発しようとしている新製品とは異なる分野の素材や技術が突破口となるケースはよくあります。
たとえ異分野であっても、新素材・新技術が出てきたら、自分たちの製品に使うことができないか。
そういう目で調査してみる姿勢は大事です。
もっと言えば、新素材・新技術でなくても構いません。
シルクレイは新素材のように見えますが、既に特許を取得しています。
特許を取得するとその技術内容は特許公報で一般に公開されます。
実はシルクレイは既に世の中でその存在を知られた既知の素材・従来技術なのです。
「既知の技術同士の今までにない組み合わせ」
これも立派な発明です。
その組み合わせが今までにない優れた技術的効果を発揮するのであれば、進歩的な発明であるとして特許を取得することができる可能性だってあるのです。
(3)他愛もない会話
飯山が改良シルクレイのアイデアを閃いたのは、コーヒーの温度が変わると味も変わるという他愛もない会話・世間話からでした。
このエピソードからもわかるように、新製品のアイデアが生まれるのは自分の会社の開発メンバーとのディスカッションからばかりではありません。
技術とは全く関係ない人との他愛もない会話から生まれる場合もあるのです。
新製品の開発は孤独な作業です。
ストイックに内に篭もることで、却って思考を狭めてしまう場合も出てきます。
ですから、新製品の開発が袋小路に入りこんでしまったら、外部の人と積極的に会話をしてみるというのは良い方法です。
そうすることでストレスの発散にもなりますし、何の気なしに話していた内容から袋小路を脱出するヒントをもらえるかもしれません。
まとめ
以上説明したように、新製品を開発するためのアイデアは、
- 誰かが途中で諦めた製品
- 異なる分野の素材や技術
- 他愛もない会話
の中に埋もれている可能性があります。
ものづくりは簡単ではありません。
新製品は一朝一夕には完成しないのです。
なかなか開発がうまくいかない。技術的課題を解決することができない。
そんな時にはこの辺りを掘り起こしてみるとブレイクスルーのヒントが見つかるかもしれませんよ!
参考サイト
(*1)日曜劇場『陸王』|TBSテレビ
(*2)あらすじ|TBSテレビ:日曜劇場『陸王』
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