ドラマ「下町ロケット」に学ぶものづくりのヒント(7)|自前主義からの脱却

クロスリンク特許事務所(銀座・東銀座・新橋)・弁理士のヤマダです。

はじめに

ドラマ「下町ロケット」に学ぶものづくりのヒント。

各回のドラマのシーンを振り返り、ものづくりのヒントになりそうな事項を紹介していきます(ネタバレ防止のため、番組の進行より遅れて配信しています)。

今日は第7回の放送の中から、自前主義からの脱却について解説します。

ドラマ「下町ロケット」第7回プレイバック

佃(阿部寛)は財前(吉川晃司)からの依頼に基づき帝国重工の無人農業ロボットに搭載するエンジンとトランスミッションの開発を進めていた。財前は立花(竹内涼真)らの試作品に高評価を与えたものの、何故か取引の中止を申し出る。佃製作所をはじめとする下請け企業を卑下する次期社長候補・的場(神田正輝)がエンジンとトランスミッションを自社で内製化する方針を打ち出したからだ。

財前は的場や奥沢(福澤朗)に佃製作所の技術力の高さを訴え、翻意を促すものの一蹴され、ついには無人農業ロボット開発のプロジェクト担当から外されてしまう。

自前主義からの脱却

自前主義。技術、素材、部品を他社から調達せず、自分の会社の技術資産だけを使って一つの製品を開発する考え方です。

大企業はその資本力を活かし、社内に様々な技術部門を抱えています。機械、化学、電気はもちろん、AIやIoTのような最先端技術に至るまで全て社内で賄える企業もあります。

しかし、これらの全てがその会社の得意技術であるかというと、そうとも言えません。研究開発は行っているけれども、他社と比べて研究が進んでいない、技術的に劣るというものもあるはずです。

そうすると、一つの製品を開発する際に全てを自社技術で賄おうとした場合、それが製品開発の遅れに繋がるおそれがあるわけです。必要とする技術について自社よりも得意な会社があるなら、その会社の力を借りた方がスピーディーに製品を開発することができる可能性があるということです。

そのような観点から、従来は主流であった「自前主義」は見直されつつあります。

日本を代表する企業であるトヨタやパナソニックも自前主義の限界を感じ、そこからの脱却を公言しています。

「自前主義の限界感じた」トヨタがオープンイノベーション・プログラムを手がけるワケ|TechCrunch Japan

「敗戦」を経験し「自前主義」「完璧主義」を捨てたパナソニック|日経ビジネスオンライン

(1)帝国重工の前時代的な自前主義

「下町ロケット」の中で、帝国重工は昔ながらの重工業を扱う財閥系大企業で、プライドだけは高く、旧態依然とした体制を維持する、時代遅れの企業体として描かれています。

その帝国重工の社内でお題目のように唱えられているのが「完全内製化」です。帝国重工は時代の流れとは逆行する「自前主義」を推進しているわけです。

次期社長候補の的場は財前に対し、

「無人農業ロボットのエンジンとトランスミッションは我が帝国重工が製造する。佃製作所は切れ!」

と命じました。

経営を取り仕切る取締役としては若手の部類に入る的場ですら、こんなことを言っているのですから、帝国重工の未来は暗いものと言わざるを得ないでしょう。

(2)自前主義では技術の複雑化・高度化・専門化に対応できない

無人農業ロボットで必要とされるのは小型で高性能のエンジンとトランスミッションです。

機械製造部長の奥沢は、

「エンジンもトランスミッションも小さくすればいいだけの話でしょう?」

と高をくくり、自前の技術で十分対応可能だと考えています。

これに対し、自前主義の限界を感じている財前は、

「土を耕し、苗を植え、稲を刈り取る。そういった繊細な作業に必要なエンジンとトランスミッションは我が社のブルドーザーや船舶の巨大エンジンと全く異なるものです。」

と、奥沢の意見に異を唱えています。

奥沢がブルドーザーや船舶のエンジンやトランスミッションをダウンサイジングすれば事足りると考えているのに対し、財前は全く別の思想をもったエンジンやトランスミッションが必要だと考えているわけです。

 

近年、技術が複雑化・高度化・専門化しています。

同じ「エンジン」と名の付くものであっても、サイズ(小型と大型)や用途(建設工事用と農作業用)によって固有のノウハウがあります。いかに巨大企業の帝国重工とはいえ、全く技術的な蓄積がない小型エンジンを一から開発するのはそう容易いことではないのです。

(3)自前主義から脱却するための鍵はオープンイノベーション

自前主義の問題を解決するための方法として注目されているのが、「オープンイノベーション」です。

「オープンイノベーション」は自社技術だけに頼らず、他社の技術や知識を積極的に取り込んいこうという考え方です。

佃製作所は、小型エンジンを得意とし、農機具メーカー・ヤマタニに納品している実績があります。

「佃製作所の技術力を侮ってはなりません!」

そう訴え、佃製作所をパートナーに引き込もうとした財前の考え方はまさにオープンイノベーションの考え方を踏襲していると言えるでしょう。

市場変化のスピードはどんどん速くなっています。スピーディーに製品を開発し、ビジネスを展開していくためには、他社の強みを取り込むことが有利なわけです。

オープンイノベーションを推進するためには、他社がどんな技術を持っているのか、その強みは何なのかをリサーチすることも必要となってきます。

まとめ

以上説明したように、大企業は自前主義を脱却し、オープンイノベーションの考え方にシフトしつつあります。

これを中小企業の立場から見ると、

● 得意技術を持つこと
● その得意技術と他社の技術との差異点を明確にすること
● それらの情報を社外に向けて発信していくこと

が大事です。これらに取り組むことでビジネスが広がっていく可能性があるわけです。

メディア掲載

この下町ロケットシリーズの記事に関し、コラムニストの尾藤克之様から取材を受けました。

尾藤様の執筆記事は言論プラットフォーム「アゴラ」に掲載されました。また、ニュースアプリ「グノシー」にも転載されています。

尾藤様、ご紹介頂き、ありがとうございました。

 

弁理士が解説!『下町ロケット』に学ぶものづくりのヒント(アゴラ)

弁理士が解説!『下町ロケット』に学ぶものづくりのヒント(グノシー)

参考サイト

(*1)日曜劇場『下町ロケット』|TBSテレビ

(*2)あらすじ|TBSテレビ:日曜劇場『下町ロケット』

(*3)『下町ロケット』11/25(日) #7 親友が敵に!? 娘もライバルに!? 佃製作所打つ手なし!?【TBS】|TBS公式 YouTuboo

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プロフィール

山田 龍也(やまだ たつや)
山田 龍也(やまだ たつや)
ものづくりとブランドづくりの専門家/弁理士/ブロガー。
中小製造業のものづくり、個人事業主のブランドづくりを支援中。
特許・実用新案・意匠・商標の権利取得手続; 知財戦略・商品の差別化戦略の立案; 商品の企画・開発に関するアドバイス; 情報発信を用いたブランディング・マーケティング; が得意。