中小企業専門・クロスリンク特許事務所(東京都中央区銀座)所長、弁理士の山田龍也(@sweetsbenrishi)です。
この記事は、「IT(情報技術)」のカテゴリーに属する記事です。
現代のビジネスとは切っても切れないIT(情報技術)やAI(人工知能)をテーマにしています。
今回は、2019年11月8日に開催された「さむらい業パワーチーム交流会」からのリポートです。
ヤマダがミニセミナー「AI&リーガルテック時代の士業術」の中で話した内容を紹介します。
AI&リーガルテック時代の士業術
【1】AI&リーガルテックの現状
まずは「AI」と「リーガルテック」について。
「AI」は、皆さんおなじみ「人工知能(Artificial Intelligence)」のことです。
「リーガルテック」は、「法律(リーガル)」と「技術(テクノロジー)」を掛け合わせた言葉です。
ここでいう「テクノロジー」は、いわゆる「IT(Information Technology;情報技術)」をイメージするとよいでしょう。
「リーガルテック」は、ざっくり言えば、僕ら士業が携わる法律業務を支援するコンピュータソフトやシステムと言えます。
リーガルテックとしては、例えば以下のものが既にリリースされています。
● 税理士さんの分野: クラウド会計ソフト「freee」、「マネーフォワード クラウド会計・確定申告」等
● 弁護士さんの分野: ウェブ完結型のクラウド契約「クラウドサイン」等
● 社労士さんの分野: クラウド人事労務ソフト「Smart HR」等
▲ リーガルテックの例
そして、弁理士の分野でも、AIを実装した商標検索システム「Toreru」が登場しました。
▲ Toreru商標検索トップ画面
因みに、特許庁の検索システム「特許情報プラットフォーム(J-Platpat)」はこちら。
▲ 特許情報プラットフォーム(J-Platpat)トップ画面
比べてみると、「Toreru」のシンプルさ、スマートさが際立ちます。
勿論、J-Platpatと全く同じ機能を持っているわけではありません。
それでもシステムとしての思想の違いは歴然です。
「Yahoo検索」のごちゃごちゃした画面しか知らなかった時代に、
「Google」のあのシンプルなトップ画面が登場したような…。
そんな衝撃を感じます。
つい最近、この「Toreru」の実力の一端を垣間見れるイベントがありました。
2019年10月10日に開催された「AI vs 弁理士 ~ 商標調査対決」というイベントです。
生身の弁理士とAIが制限時間内に商標の調査を行い、その調査のクオリティを競い合うバトルイベントです。
このイベントに関しては、過去に記事を書いています。
詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
AI vs 弁理士 商標調査対決 観戦記|AIは弁理士の仕事を奪うのか?
[blogcard url=”https://yamadatatsuya.com/archives/7311″]
ヤマダがこのイベントを見て感じたことは、
● AIは現時点でも十分に実戦で使用可能なレベルにある
● AIは速い、ぶれない、疲れない
● AIの判断精度は今後、指数関数的に上がるだろう
ということでした。
ヤマダの記憶が正しければ、Toreruに導入されているデータ数は約5,000。
AIが扱うデータ数としてはかなり少ないですよね。
これからデータをどんどん蓄積されていきます。
検索精度が上がっていくことは容易に想像することができます。
● AIには伸び代しか感じない!
というのが正直な感想です。
【2】AI&リーガルテック時代の士業術
以上の事を踏まえると、今後、AI&リーガルテックは、
● 爆発的に進歩する
● 様々な士業の業務・ジャンルに入り込む
● 士業の業務の一部を代替する
と言えるでしょう。
これから更に進展する「AI&リーガルテック時代」。
士業はどう生き残っていけばいいんでしょうか?
ヤマダはこれからの士業の方向性はこの2つではないかと考えています。
「士業を極める」か、「士業からはみ出す」かの二者択一です。
「士業を極める」とは、誰もができない高難度業務・ニッチ分野の業務で専門性を発揮し、唯一無二の存在となること。
「〇〇専門〇〇士」のようなイメージ。
「士業をはみ出す」とは、士業のコア業務以外の分野に得意分野を持つこと。
コア業務との掛け合わせで独自性を発揮し、固有のファンを作っていく方向性。
専門性を活かしたコンサルタントへの道です。
最近、ヤマダはセミナーに参加し、成功者の方、お二人のお話を聞く機会がありました。
お二人ともかなりの収益を叩き出している方です!
別々のセミナーでしたが、いずれのセミナーも、これから如何に稼いでいくか、ということに焦点を当てたセミナーでした。
この中に、これからの士業像を考える上でヒントになる言葉があったので紹介します。
一人の方は、「チェックされる立場」から「チェックする立場」に回れ、と言っていました。
もう一人の方は、「書類を作るな。アドバイスだけしろ」と言っていました。
考えてみると、弁理士は特許や商標登録を申請するための「書類を作る」のが仕事です。
そして、その書類の案文を、お客様に「チェックをされて」います。
これ自体が悪いとは言えません。
ただ、このやり方だとなかなか稼ぐのが難しい。
これが2人の成功者の一致した見解だということです。
この話を聴く限り、士業をはみ出し、コンサルタントとして活躍するのが一つの解と言えるのではないでしょうか。
【3】弁理士の取り組み(ヤマダ編)
一例として、ヤマダの取り組みについても紹介しました。
ヤマダが取り組んでいることは申請業務の前後のニーズを開拓すること。
商標権を取るのは目的ではなく、手段の一つにすぎませんからね。
その周りに開拓する余地は残っているはずです。
今、徐々に仕事が増えてきているのが、中小企業や個人事業主のブランドづくりに関するコンサルティングです。
● ブランドコンセプトを作り込む
● ネーミングを考える
● ブランドを育てていくための情報発信
申請業務以外にもやることは色々とあるものです。
申請業務の周りに眠っているお客様のニーズを掘り起こし、収益化を図っていきたいと考えているところです。
まとめ
以前、「エストニアでは税理士・会計士が消滅した」なんてニュースがありましたね。
そんなニュースが耳に入ると、何となく不安になってしまいます。
でも、想像力を逞しくすれば、まだまだ士業はお客様のお役に立てる存在だと思いますよ!
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